2021.07.07

有料老人ホーム選びの流れ|失敗しない選び方のコツ

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

居住の契約方式を確認する

お年寄り

有料老人ホームを選ぶときには、初めに契約方式を確認してください。契約方式には、利用権方式、建物賃貸借方式、終身建物賃貸借方式の3つがあります。契約方式によって得られる権利や支払いの方法も変わります。契約してからのトラブルを避けるためにも、権利の内容や特徴をしっかり理解しておくようにしてください。

利用権方式

利用権方式は有料老人ホームの多くが採用している方式です。有料老人ホームに居住する権利や生活支援などのサービスを受ける権利を得ることができます。これは専用の居室や共有スペースを利用できる権利と、介護などのサービス部分の契約が一体になった契約です。あくまで利用権であって所有権ではないため、相続の対象にはなりません。入居一時金は、それぞれの有料老人ホームごとに定められている償却期間償却率で償却されます。償却期間内に退去する場合は残存額が返還される仕組みになっています。

建物賃貸借方式

利用権方式が居住する権利とサービスの契約が一体となっている契約なのに対して、建物賃貸借方式は居住部分と介護等のサービスが別個になった契約方式です。一般の住宅を借りるときのように、有料老人ホームに住むために毎月家賃や管理費を支払います。終身建物賃貸借方式と違って入居者が死んだことによって、契約が終了するわけではありません。月々費用を支払うので、入居一時金は安価ですが月額利用料が高くなる傾向があります。

終身建物賃貸借方式

終身建物賃貸借方式は建物賃貸借方式の特別な契約方法です。終身建物賃貸借方式は入居者の死亡をもって契約が終了します。終身という名前からもわかるように、原則として居住者が生きている限り住むことができます。終身建物賃貸借方式を事業者が採用するためには、都道府県知事から高齢者の居住の安定確保に関する法律の規定に基づいた、終身建物賃貸借事業の認可を受けなくてはいけません。

生涯済み続けられるか確認する

老人ホーム

有料老人ホームは入居する前に退去の条件を知っておくことが重要です。終身介護とうたっている施設であっても、状況によって退去を求められるケースがあります。例えば体調急変で入居が難しくなった場合や契約書に虚偽の記載をした場合などのほか、他の入居者に迷惑行為をおこなったケースや各種費用が払えなくなったケースも退去になります。退去になる退去要件は契約書や重要事項説明書に記載されているので、契約前に必ず目を通しておいてください。契約時には今まで退去になった人の具体例やどういう状態になったら退去なのか確認してください。万が一老人ホームが倒産した場合の入居一時金の扱いなども質問しておくようにおすすめします。

認知症のケアについて確認する

高齢になると誰でも発症の恐れがある認知症。今は問題なくても施設に入ってから認知症を発症する可能性があります。認知症であっても特別養護老人ホームやグループホームといった選択肢はありますが、なかなか入居できなかったり、入居者や家族の希望と合わなかったりする可能性もあります。有料老人ホームを選ぶときには、必ず認知症ケアについても確認してください。有料老人ホームはそれぞれの施設によって入居条件が違うため、認知症を受け入れているかどうか確認する必要があります。施設によっては看護師や医療スタッフが手厚く、認知症でも入居できる場合もあります。認知症を発症していても入居できるかどうか、入居後に認知症を発症しても引き続き入居できるかどうかを確認してください。

医療ケア体制を確認する

介護

高齢になれば、健康体であって人も医療と介護両面でのケアが必要になります。介護職員が対応できるケアは限られているため、医療ケアを求めるのであれば、医師の配置や提携する医療施設があるかどうかをチェックしましょう。入院が必要になった時の対応も、老人ホームによって違います。最低限チェックしなければいけないのは、提携病院や協力病院があるかどうかです。またどのくらいコミュニケーションを取って施設連携しているか確認しましょう。必要な医療ケアは人によって違います。看護師が24時間常駐する施設であれば、緊急時の対応はもちろん、早朝や夜間の医療ケアまでカバーできるでしょう。入居者ができるだけ長く自立した生活を送るためには、リハビリプログラムの有無も重要になります。理学療法士や作業療法士などの資格を持つ、機能訓練指導員の配置も確認しておきましょう。

紹介センターの利用方法

夫婦

有料老人ホームの情報はインターネットや雑誌などでも集めることができます。また施設ごとに入居条件や料金体系、サービスなど多くの違いがあります。あまりに情報が多くて困っているという場合は、紹介センターの利用も検討してください。紹介センターでは幅広い老人ホームや介護施設の情報を扱って無料相談可能です。紹介センターごとに担当エリアが違うので、希望するエリアの紹介センターを利用します。ただし紹介センターの情報には偏りがある場合もあるので、紹介センターで契約するとしても情報は複数から集めるようにしましょう。紹介センターにはオンラインでサービスを提供しているところもあるので、外出が難しい場合は利用を検討してみましょう。より広いエリアの老人ホームを探す場合にも、オンラインの紹介センターが便利です。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。