2022.11.30

地域包括支援センターとは?相談事例や利用方法を解説

最終更新日:2023.04.11
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

「介護のことで困ったら、まずは最寄りの地域包括支援センターへ」。これは高齢者の介護で悩む人なら、ほとんどの人が耳にする言葉です。しかし、地域包括支援センターではどのような相談ができ、どのように対応してくれるのかなど、分かりづらいのが実態です。そこで今回は、実際に寄せられた相談事例や利用方法などのご紹介を通じて、地域包括支援センターについて徹底解説していきます。この記事を読めば、地域包括支援センターに相談すると具体的にどのようなことをしてくれるのかが分かります。ぜひ、最後までご覧ください。

地域包括支援センターとは?

地域包括支援センターとは

地域包括支援センターとは、高齢者の暮らしをサポートするための施設です。高齢になると、体力の衰えや病気などにより、これまでと同様の暮らしを送りにくくなります。そのため、介護や医療、福祉の力で高齢者の暮らしをサポートしてあげなくてはならないのです。

地域包括支援センターの設立

地域包括支援センターは、2005年ごろから設置が始まりました。2005年といえば、介護保険制度の見直しが行われた年です。地域における包括ケアの中核機関として設置されたのが始まりです。地域包括支援センターの目的は、高齢者が住み慣れた土地で問題なく暮らせるよう、多角的なサポートを行うことです。地域が一体となり、生活支援や介護、予防などのサービスを提供して高齢者を支えます。なお、地域包括支援センターはNPOや民間企業、社会福祉協議会などが、自治体から委託される形で運営しているケースがほとんどです。

居宅介護支援事業所との違い

地域包括支援センターには、介護保険非該当の人や要支援認定の人のケアプランを作成する機能があります。一方で、民間の介護支援専門員(ケアマネジャー)が所属する「居宅介護支援事業所」と呼ばれる事務所でもケアプランを作成する役割を担っています。似て非なる地域包括支援センターと居宅介護支援事業所には、以下の違いがあります。

【地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い】

  地域包括支援センター 居宅介護支援事業所
設置主体

市区町村及び特別区(公的施設)

※直接市区町村等が運営する場合と、民間の法人に運営を委託する場合がある

社会福祉法人、医療法人、生活協同組合、農業協同組合、NPO法人など多種多様
主な職員体制 社会福祉士、保健師(看護師)、主任介護支援専門員 主任介護支援専門員、介護支援専門員
活動範囲

管轄する地域に限定

(主に中学校区単位)

主に所在する市区町村全域

(事業所の判断で広域活動も可能)

対象者 介護・医療・虐待・引きこもり・障害者を抱える世帯など地域生活において困りごとを抱えている人全般 主に要介護1~5の認定を受けた高齢者及び家族
主な業務内容
  • ・高齢者に関する相談全般
    ・虐待に関する相談
    ・要支援認定者等のケアプラン作成やサービス利用のコーディネート
    ・支援困難事例への対応
    ・介護予防に関する取組み
    ・各種啓発活動
    ・居宅介護支援事業所に対する助言や指導
    ・介護保険関係の申請窓口
  • ・要介護認定者のケアプラン作成やサービス利用のコーディネート(地域包括支援センターからの委託で要支援者等のプラン作成も行う)
    ・要介護認定更新時の認定調査
    ・各種申請代行業務

地域包括支援センターと居宅介護支援事業所は、高齢者支援に携わる介護保険関係の施設という点では同じです。地域包括支援センターは「高齢者介護に限らず業務範囲が多岐に渡っているが活動エリアが限定されている」ことが特徴です。一方で居宅介護支援事業所は、「主な支援対象が要介護1以上の者に限られているが、活動エリアに制限がない(一部例外あり)」という点が違います。

地域包括支援センターの役割

地域包括支援センターの役割

地域包括支援センターは市区町村が直接運営するか他の法人に委託するかどちらかの形で運営される公的な施設です。行政機関に近い位置づけのため、次のような地域を支えるための様々な役割が求められています。

・地域に住む高齢者の総合的な相談窓口
・権利擁護
・ケアマネジャーへの支援
・介護予防プランの作成支援

ここでは、地域包括支援センターの取り組みについて詳しくご紹介していきます。

地域に住む高齢者の総合的な相談窓口

地域包括支援センターは地域の高齢者のことで困ったときに駆け込む総合的な相談窓口として、概ね各中学校区ごとに設置されています。管轄しているエリアに住んでいる方であれば誰でも利用することができます。

例えば高齢者の介護に関する相談だけでなく、

「介護が必要なほどではないけど、なんとなく心配なことがある」

「隣のおばあちゃんの家から時々子供の怒鳴り声が聞こえるけど大丈夫かなぁ?」

「あそこの家のおじいちゃん、ここ一週間くらい姿を見てない」

と言った心配事も気軽に相談することができます。

また、地域包括支援センターは介護保険制度の申請だけでなく、オムツ助成券の発行や徘徊老人見守りサービスなどの市町村が実施する各種福祉サービスの相談窓口にもなっています。

地域の高齢者に関して困ったことや心配なことを何でも相談できる総合窓口が、地域包括支援センターなのです。

権利擁護する

地域包括支援センターは、地域の高齢者の権利を守るための各種取り組み(権利擁護)を実施することも大きな目的の一つです。体力的・精神的・経済的に不安がある高齢者が地域で過ごすためには、高齢者自身の様々な権利を守ることが非常に重要だからです。

権利擁護の活動としては、次のようなものがあります。

虐待防止・早期発見・解決への対応
「虐待」とは、高齢者を殴ったり閉じ込めたりすることだけではありません。介護放棄や性的な虐待、高齢者の年金や貯蓄を無断で使用する経済的な虐待もあります。中には虐待をしている本人も虐待の自覚なく行っている場合があります。地域包括支援センターは市区町村とも連携し、虐待被害者本人や家族・支援者・地域住民の相談窓口として、虐待の早期発見や被害防止・解決への対応にあたります。

悪徳商法や詐欺の被害防止
高齢者は悪徳な介護リフォームや強引な訪問販売、オレオレ詐欺などにより金銭的な被害に遭ってしまうことが多いです。このような消費者被害を予防するため、警察や銀行・地域の住民会などの関係機関と協力して被害防止の啓発活動や情報提供を行っています。

金銭管理や意思決定の支援
認知症になって記憶力やお金の計算能力に障害が出ると、自身の財産管理や介護保険サービス利用などの契約、定期預金や保険の解約時に正しい判断ができなくなってしまいます。地域包括支援センターでは財産管理や意思決定を支援するために「成年後見制度」や「日常生活自立支援事業」などの活用を支援しています。

【成年後見制度とは】
認知症などによって判断能力が不十分な方の代理人として、財産管理や契約締結などの意思決定を支援する制度です。

【日常生活支援事業】
社会福祉協議会が実施する事業で、認知症や知的障害・精神障害によって金銭管理やサービス利用契約に不安がある方の支援をする事業です。

ケアマネジャーへの支援

地域包括支援センターは、民間のケアマネジャーが対応に困るような困難事例への対応支援や研修を開催して専門性向上を図るなどの活動を通してケアマネジャーをサポートする役割も担っています。国が提唱する「地域包括ケアシステム」を実現するためには、介護保険制度の根幹であるケアマネジャーの資質向上が欠かせないからです。

ケアマネジャーの更に上位の資格である主任ケアマネジャーや社会福祉士、保健師などがそれぞれの専門性を活かして地域福祉の向上のためにケアマネジャーを陰から支えています。

【地域包括ケアシステムとは】
厚生労働省が提唱している地域において高齢者を支援するための仕組みのことです。重度の要介護状態となっても地域で自立した生活ができるよう、医療・介護・暮らしの場・重度化予防などの支援を一体的・総合的に提供するシステムのことを言います。団塊の世代が75歳以上となり急激に要介護者が増えるといわれている2025年(令和7年)を目途に仕組みを整えることを目標としています。

介護予防プランの作成支援

要介護1以上の方のケアプランは「居宅介護支援事業所」が作成するのに対し、要支援1~2・事業対象者と呼ばれる人が必要な「介護予防サービス・支援計画書」(通称:介護予防プラン)を作成するのは地域包括支援センターの仕事です。

介護予防プランとは、要介護状態には至っていないがこのまま放置すると状態が悪化するリスクがある方が介護予防に関する様々なサービスを利用する際に作成されるものです。本人と地域包括支援センターのスタッフが話し合いながら作り、利用可能なサービス提供事業所の紹介を受けることもできます。

また、要支援や事業対象者に当てはまらない方に対しても介護予防教室などの活動の場を紹介・時には主催し、地域全体の介護予防のための取り組みも行っています。

【事業対象者とは】
「基本チェックリスト」と呼ばれるアンケートによって日常生活に何らかのリスクや要介護状態になる可能性があると市区町村が判断した者

地域包括支援センターの相談事例

地域包括支援センターの職員に相談する親子

ここでは、実際に地域包括支援センターへ寄せられたいくつかの相談事例をご紹介します。

近所に住む高齢者が心配

ある男性は、近所に住む高齢男性と久しぶりに街中で会い声をかけたものの、認知症だと思われる症状が確認できました。着ている服もパジャマで、男性のことを誰だかわからない様子だったとのことです。そこで、この男性は地域包括支援センターへ連絡し、認知症の疑いがあると相談しました。その後、地域包括支援センターの相談員が自宅を訪問し、家族とも協議した結果介護サービスを利用する運びとなりました。

高齢者の友達作り

地方で独り暮らしをしていたBさん。約半年前、独居生活を心配していた長男夫婦がBさんを埼玉の自宅に呼び寄せ、一緒に生活することになりました。しかしBさんには慣れない土地での生活で友人もおらず、次第に引きこもりがちになってしまいました。

そこでBさんの長男は包括支援センターに相談。Bさんは地域で週1回開催されている「いきいき百歳体操」への参加を提案。初めは消極的だったBさんも毎週参加する中でたくさんの友人ができ、活き活きとした表情を見せてくれるようになりました。

介護が必要だと気付く

ある高齢女性は、玄関先で転倒してしまい骨折し、リハビリを経て退院したものの、日常生活を送ることが困難となりました。家族はいるものの離れた場所で暮らしているため、女性は地域包括支援センターへ相談しました。その後、相談員から介護保険でデイサービスの利用を提案してもらい、申請する流れになったそうです。

病気の早期発見

Dさんは同居していた息子に先立たれ、独り暮らしとなりました。最近、近所にある馴染みの商店で何度も同じものを購入したり、自宅への帰り道が分からなくなったりすることが見られるようになりました。心配した地域の民生委員が地域包括支援センターに相談。

地域包括支援センターは関係機関と連携して「認知症初期集中支援チーム」を立ち上げました。隣県に住む長女とも協力してDさんを専門医に紹介したところ、初期のアルツハイマー型認知症だったことが判明しました。認知症の治療を開始するとともに要介護認定を申請し、近隣の「小規模多機能型居宅介護」事業所の利用を開始。地域での見守り体制を整えることに成功しました。

虐待を受けた高齢者への支援

Eさんは孫との2人暮らし。心臓に疾患がありペースメーカーを入れ要介護状態でしたが、孫は「自分が色々面倒を見ている。介護サービスの利用は本人が拒否している」と日頃から近隣住民に説明していました。ある日法事の手伝いで訪れた親戚の方が動けなくなっているEさんと発見。孫には一切連絡が取れず、救急車を呼ぶとともに地域包括支援センターへ介入の依頼がありました。

後日、孫は発達障害の傾向があることが判明。体調が悪くなって動けなくなったEさんを見てパニックになり、誰に相談したらいいか分からず介護放棄の状態になってしまっていたことが分かりました。地域包括支援センターは虐待事案としてEさんの施設入所を調整するとともに、Eさんの孫に対しても障害者相談支援センターにフォローを依頼し生活の立て直しを行いました。

日に日に体力が減り、介護が必要になるという心配

80歳のある高齢女性は、体力や足腰の衰えを実感しているものの、それなりに日常生活は送れていました。あるとき、部屋の蛍光灯が切れてしまいました。以前は自分で取り換えることができたのですが、今回は自分で取り換え作業を行うことができず、地域包括支援センターに相談しました。相談員が女性の自宅を訪れ、訪問介護の生活援助を受けるよう提案しました。

地域包括支援センターの対象者

健康やお金、孤独に困っている男性

地域包括支援センターの対象となるのは、次のような方たちです。

・管轄する地域で暮らす高齢者
・管轄する地域で暮らす高齢者を支援する者

地域包括支援センターは市区町村ごとに少なくとも一か所以上あり、多くの地域では中学校区単位ごとに設置され、担当地域をエリア分けしています。もし自身が居住する地域を担当する地域包括支援センターがどこにあるのか分からない場合は、自治体に問い合わせると教えてもらうことができます。事前にどこにあるのかを調べておけば、困ったときにスムーズに相談することができるでしょう。

また、地域包括支援センターの対象となるのは高齢者本人だけではありません。高齢者を介護する方や近隣住民の方、管轄地域に所在するケアマネジャーの事務所や介護サービス事業所も対象になります。解決方法の提案や各種研修の実施などを通じ、縁の下の力持ちとして支援者をフォローすることも地域包括支援センターの大切な役割です。

地域包括支援センターに在籍する3職種の専門家

地域包括支援センターに在籍する3職種の専門家

地域包括支援センターでは、専門性の高い相談に対応しなければならないケースが多々あります。そのため、保健師や社会福祉士、主任ケアマネージャーが専門性を活かしながら業務を遂行しています。

保健師(看護師)

介護予防支援や介護予防マネジメントを主に担当しているのは保健師です。保健師は、看護師資格を有する専門職ですが、業務内容は看護師と大きく異なります。看護師は、ケガや病気をした人の治療をサポートすることが仕事ですが、保健師は生活指導やアドバイスを行うことが主な業務です。介護予防事業プランの作成、身体状況の悪化防止などにも務めます。

社会福祉士

総合相談や支援事業を担当するのは社会福祉士です。介護のプロフェッショナルであり、地域包括支援センターでも主に高齢者からの相談へ対応するのは社会福祉士です。高齢者の権利擁護、虐待の早期発見、防止にも務めます。

主任ケアマネジャー

主任ケアマネージャーは、高齢者に対する包括的、継続的マネジメントを行うことが業務です。ケアマネージャーから相談を受け、適時アドバイスをしたり、地域ケア会議の開催をしたりといった業務も受け持ちます。

このように、地域包括支援センターにはそれぞれの専門分野に特化したスペシャリストが在籍しています。それぞれの専門性を活かし、うまく連携をとりながら高齢者のサポートへつなげているのです。

地域包括支援センターのメリット

○マークをもつ男性

在宅介護の困りごとは、その方の心身状況や生活状況・周囲の環境により千差万別です。地域包括支援センターは、多岐に渡る介護の困りごとをワンストップで対応できることが最大のメリットです。

具体的には、次の2つのメリットがあります。

・無料で介護相談できる
・高齢者の虐待問題を早期発見できる

地域包括支援センターを利用することのメリットについて、詳しくご紹介します。

無料で介護相談できる

地域包括支援センターは無料で介護相談にのってくれることがメリットです。介護に関わることであれば誰でも料金を気にせずに相談することができるので、安心して相談に行くことができるでしょう。国が認め、市区町村が設置していることから、信頼性も申し分ありません。

通常の介護施設や居宅介護支援事業所に行っても無料で相談にのってくれますが、地域包括支援センターに在籍している人のような相談に特化した専門職ばかりではありません。専門的な知識や経験を活かし、無料・ワンストップで相談に対応してくれることが地域包括支援センターの魅力です。

高齢者の虐待問題を早期発見できる

地域包括支援センターに相談することで、高齢者を虐待や権利侵害から守ることができることもメリットのひとつです。

高齢者の支援をしていると、虐待を疑う事案や権利を侵害されていると感じる場面に遭遇することがあります。特に万が一家庭内や入所施設で虐待などが行われていた場合、閉ざされた環境の中での出来事なので周囲の人が気付くのが困難になります。虐待や権利侵害の問題は一般の方では解決が難しく、対応を誤ると頑なに心を閉ざしてしまい、事態が悪化してしまうリスクもあります。

地域包括支援センターに相談が寄せられると、社会福祉士を中心とした対応チームを組みます。高齢者支援の専門家が集まって適切な対応を行うことで、早期発見・早期対応で解決に導きます。地域包括支援センターでは、虐待に関わった人たちだけでなく、情報提供や通報した人の個人情報も徹底的に守っています。例えご自身に関りがある人のことでなくても、躊躇なく地域包括支援センターに通報するようにしましょう。

地域包括支援センターの利用方法

要支援と要介護

地域包括支援センターを利用できるのは、対象地域で暮らしている65歳以上の高齢者、またはその支援者や家族などです。親が離れた場所で暮らしているケースでは、親が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談しなければなりません。なお、地域包括支援センターは各エリアの中学校区域に設置されています。地域包括支援センターの窓口へ相談するのは無料です。相談すること自体には費用が発生しませんが、紹介されたサービスを利用するときは別であるため注意しましょう。また、地域包括支援センターは全国に5,000近く施設が設置されており、インターネットから簡単に検索できます。インターネット接続できるパソコンやスマホがあれば、最寄りの地域包括支援センターも見つけられます

地域包括支援センターは対応がひどい?

腕を組んで悩む女性

地域包括支援センターの口コミをインターネットで検索すると、様々な意見や感想がヒットします。中には「対応がひどい」「使えない」「偉そう」といった声があるのも事実です。実際に調査したところ、一例として次のようなネガティブな意見を確認できました。

・「自身を虐待していていた親が要介護状態となった。自分では介護する気持ちになれないが放ってもおけない。どうしたらいいか」と地域包括支援センターに相談したところ、「子供なら自分で面倒を見るべきだ」「介護放棄(ネグレクト)するのであれば虐待事案として取り扱うので、意志を明確にして欲しい」と無神経な対応をされた。

・利用しているデイサービスについて、市の介護保険課に苦情を言いにいったところ、たらい回しにされた。市から紹介された地域包括支援センターでも理由をつけて対応してもらえなかった。結局徒労に終わり、泣き寝入りするしかなかった。

・隣の家で高齢者虐待をしている疑いがあったので地域包括支援センターに問い合わせたら、警察に通報するように言われた。地域包括支援センターは虐待相談の窓口ではなかったのか。警察に通報したら大事になってしまい、通報者が自分だとバレるのも困る。このまま知らないふりをしていていいのだろうか。

確かに地域包括支援センターは、地域の課題にワンストップで取り組む施設です。しかし、全ての問題を完璧に解決できるわけではありません。地域包括支援センターだけの力で対応できない場合もあります。その際に他の機関に協力を依頼するため、次の対応まで時間がかかってしまうこともあるでしょう。

また、相談者が期待した成果を得られなければ、それが直接苦情や不満という形になって表れてしまう場合もあることを覚えておきましょう。

このような意見は確かに貴重です。しかし、全てを鵜呑みにしてはいけません。電話口では冷たい声に聞こえても、実際に地域包括支援センターの職員と会って話すと誤解だったことに気付くことも多いです。まずは、勇気を出して直接相談してみてはいかがでしょうか。

まずは専門家に相談してみよう

専門家に相談する女性

ここまで、地域包括支援センターの特徴についてご紹介してきました。地域包括支援センターは、地域の介護相談の窓口です。介護のことで困っている方であれば誰でも無料で相談できます。高齢者に関する課題解決のスペシャリストが揃っていることが特徴ですので、ささいな悩み事でも抱え込まず、気軽に相談してみましょう。

なお、なかなか直接近所の施設に相談に行くことは「気が引ける」「恥ずかしい」とお考えの方には、日常的な介護の困りごとをQ&A方式で質問できる「介護の広場(https://kaiteki-kaigo.jp/hiroba/)」がおすすめです。介護のお悩みを投稿するだけで、介護経験のあるかたや専門職から回答を得ることができます。ぜひ一度アクセスしてみてください。

介護の広場
池田正樹
介護福祉士、介護支援専門員、社会福祉士、福祉用具専門相談員、福祉住環境コーディネーター2級 等

大学卒業後、通所介護・訪問介護・福祉用具貸与・居宅介護支援・グループホーム(認知症対応型共同生活介護)・有料老人ホーム・障がい者施設などを運営するNPO法人にて様々な種別の事業所に所属。高齢者支援だけでなく、障害者総合支援法に基づく業務の経験や知識も併せ持っている。事業所の新規立ち上げや初任者研修・実務者研修の設立・運営にも携わる。その後は地域でも有数の社会福祉法人に転職し、特別養護老人ホーム・ショートステイの事業所に所属した。現在は在宅高齢者を支援するケアマネジャーとして約50件を受け持つ。3児の父で、自身の祖父と父を介護した経験もあり、サービス利用者側・提供者側双方の視点を持ち、読者に寄り添う記事の執筆をモットーとしている。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。