2021.10.26

介護離職を防ぐ|突然の介護に備えるためのチェックリスト

最終更新日:2022.07.25

家族の介護と仕事の両立が難しく、仕事を辞めてしまう介護離職。介護は誰にとっても起こり得る可能性があるため、決して他人事とはいえない問題です。突然の介護に備えるために、今、何ができるのかをチェックリストで紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

突然の介護に備え介護離職を防ぐ

介護

親の介護は突然に必要になります。仕事と介護の両立が難しく、介護離職する方は少なくありません。実際に2007年と2017年を比べると介護離職者は約2倍に増え、毎年約9万人もの方が介護や看護を理由に仕事を辞めています。仕事を辞めて介護に専念することで、体力的あるいは時間的には少し負担が軽減するかもしれません。しかし、収入が減り、生活自体が厳しくなる可能性があります。できれば介護と仕事を両立したいと考える方も多いのではないでしょうか。「ワークライフケアバランス」とは介護と仕事を両立することです。とはいえ、仕事量は減らさずに介護をするならば、心身ともにつらい状況に追い込まれてしまうことは容易に想像できます。無理のない形でワークライフケアバランスを実践するために、介護が始まる前から備えておく必要があるでしょう。

自分の状況を確認する

介護士

ワークライフケアバランスを実現するためにも、介護が始まったときに準備ができているかどうか、また、介護に関して不安な部分はないかどうか自分の状況を確認しておきます。以下のチェックリストを確認し、チェックが付いた項目は具体的な対策を実施していきましょう。

介護に関する準備

介護を行うためには、介護に対して準備をしておくことが必要です。気持ちのうえで、あるいは親の介護をするという点においてどの程度準備ができているのか、ぜひチェックしてみてください。

自分が将来行う可能性のある介護を想定したことがない

親や義父母、あるいは親族などを介護する可能性について考えたことはあるでしょうか。正規社員として勤務をしながら介護をしている人の約7割が40代・50代であることからも、30代から介護をすることについて意識しておくことができるでしょう。政府の主導の下、各自治体では住み慣れた地域で医療や介護、生活支援などのサービスを受けられる「地域包括ケアシステム」の構築に取り組んでいます。仕事と介護を両立するためにも、まずは地域のサービスを活用できないかケアマネージャーに相談してみましょう。

親や兄弟と介護に関する話をしたことがない

介護は一人で行うものではありません。どのような介護をされたいか、家族に介護が必要になったときにどのように対応するかについて、元気なときから話し合っておく必要があります。親や兄弟と介護に関して話をしたことがない方は、一度、相談してみましょう。話し合わずに介護が始まると、最初に介護を請け負った人に負担が集中したり、家族内で不和が生じたりする可能性があります。家族会議を開いて、介護をどのように分担するか具体的に話し合っておきましょう。

最近、親と会話したのが1ヶ月以上前である

どんなに元気な方でも、怪我や病気などにより介護が必要になることがあります。介護の必要性がすぐそばまで迫っているのかを理解するためにも、親と定期的に会話をしてADL(日常生活動作)がどの程度なのか調べておきましょう。なお、ADLには食事や入浴、排泄、身だしなみといった基本的な生活動作と、掃除や買い物、選択、公共交通機関を利用すること、スケジュールやお金を自分で管理することなどの複雑な生活動作が含まれます。

親の介護・医療・住まい・財産・交流など、将来への希望や意思を知らない

介護を始めるためには、親の健康状態や利用している医療機関・介護施設を把握しておくだけでなく、財産や家についても把握している必要があります。また、親が将来にどのような希望を抱いているのかについても、健康なときから理解しておくようにしましょう。

親が頼れる友人や知人など、交友関係を知らない

親の交友関係についても知っておくことで、介護をスムーズに行えることがあります。普段、どんな友人や知人と交流しているのか、また、いざというときには誰を頼りたいと考えているのか、健康なときに尋ねておきましょう。エンディングノートに交友関係や介護が必要になったときに連絡を取りたい人について記載しておくと、万が一のときにも慌てず対応できるようになります。

親の資産管理の状況を知らない

介護は長期化する可能性があるため、お金についても早めに話し合っておくことが大切です。どんな資産があるのか、また、どこに預けているのかについて尋ね、いざというときはどこからお金を引き出せるのか明確にしておきましょう。万が一のときのために、資産をどのように管理・配分したいのかについて親の意向を確認しておくことも重要です。エンディングノートを作っておくと、資産の管理や配分の整理がしやすくなるかもしれません。

介護への不安

親の状況を把握するだけでなく、介護者自身の不安についてもチェックする必要があります。以下のうち、当てはまる点については介護が始まるまでに勉強しておきましょう。

介護保険制度の仕組み、活用方法を知らない

介護サービスを利用するためにも、介護保険と活用方法を知っておく必要があるでしょう。介護保険は基本的には65歳以上の人が利用できる公的保険制度で、適用されると1~3割の自己負担で、介護サービスや自宅の改修、介護用品の購入などを行えるようになります。ただし、要介護度・要支援度によって介護保険の適用限度額が決まっているので注意が必要です。また、民間の介護保険や認知症保険に加入している場合は、介護が必要になったときに保険金を請求できることがあります。親が健康なうちに加入の有無を尋ねておきましょう。

職場の「仕事と介護の両立支援制度」を知らない

職場によっては、仕事と介護の両立支援制度が利用できることがあります。就業規則等を確認しておきましょう。また、職場独自の支援制度がなくても、年に5日までの介護休暇とトータルで93日までの介護休業を取得できることがあります。一度、庶務部などで尋ねてみましょう。

介護サービスを利用する際の費用や仕組みが分からない

介護サービスは、ケアマネージャーを通して利用することが一般的です。例えば入浴などの介護サービスを通所で利用できる「デイサービス」ならば、利用時間や受けるサービスの内容、介護保険の負担割合によって金額が異なります。利用できる回数は要介護度・要支援度によって制限があるため、事前にケアマネージャーと相談してプランを立てておきましょう。

介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らせるか?高齢期の住環境の変化に対する情報や知識がない

介護が必要になっても住み慣れた地域で暮らしたいと望む方は少なくありません。地域包括ケアシステムで地域内の医療・介護サービスを利用するのか、バリアフリー化して自宅で介護できるようにするのか、また、特養や有料老人ホームなどの施設に入所するのか、どのような介護を希望しているのか親の意思を確認しておきましょう。地域内で利用できる医療・介護サービスに関しては、各地域にある「地域包括支援センター」で尋ねることができます。親が住む地域の地域包括支援センターの場所や電話番号も確認しておきましょう。

介護はいつまで続く?見通しが立たず精神的・肉体的な負担が大きそう

介護は長期化することが多く、長引くにつれ、精神的にも身体的にも負担が大きくなると予想されます。前向きに介護と向き合うためには、周りに頼ることが重要です。一人で抱え込まないためにも、家族で介護体制を構築し、地域のサービスを把握しておきましょう。

離れて暮らす親をどう支える?遠距離介護にかかる費用やコツがわからない

遠距離介護が予想される場合は、より一層、ケアマネージャーとの関係が重要になります。こまめに連絡を取り、最適な形で介護を行えるようにしておきましょう。また、介護保険の対象外とはなりますが、民間の家事代行サービスなどを利用することで遠距離介護の回数を減らせることもあります。いざというときに頼れるサービスもリストアップしておきましょう。

介護サービスについて理解しよう

パソコンを使う男性

いつ介護が必要になるかは誰にも分かりません。いざというときに介護離職をしないためにも、親の状況や介護サービスについて知っておきましょう。また、介護保険や介護休暇・介護休業などの公的制度について知っておくことも大切です。介護が始まる前に勉強しておきましょう。