2021.10.15

認知症の方の妄想とうまく付き合っていくための対応方法

最終更新日:2021.10.15

認知症の方が持っている世界

夫婦

アルツハイマー型認知症の初期症状においては、妄想がよく見られます。実際には起きていないことを、さも起きているかのように錯覚してしまい、不可解な言動をすることも珍しくありません。認知症の方が抱く妄想はさまざまですが、ひとつに被害妄想が挙げられます。実際にはそのようなことが起きていなくても、本人は被害を受けていると感じてしまい、家族や介護者に対しキツイ言葉を投げかけることがあります。「私のお金を盗った」「私を邪魔ものだと思っている」など、妄想を抱いているときの言動はさまざまです。また、嫉妬妄想と呼ばれる、配偶者や仲のよい方へ攻撃的になる妄想もあります。このケースでは、配偶者や仲のよい異性が、自分以外の人と仲良くしているのではないか、浮気をしているのではないかと疑うようになってしまいます。

違う世界にいる時の接し方

車いすの男性

認知症により妄想が酷くなっている方は、私達には見えないものを見聞きしています。違う世界にいるため、現実世界の我々とはなかなか話しがかみ合わないことも少なくありません。違う世界にいるときは、話のペースを合わせる、同じ立場の人を装うなどの対処が考えられます。

話のペースを合わせる

妄想を抱いている方とは、うまくコミュニケーションがとれません。そのため、相手が何をいっているのかわからず、つい聞き返してしまう方もいるでしょう。しかし、これはNGです。相手と話のペースを合わせてあげることで、満足してもらえます。たとえ何をいっているのかわからなくても、聞き返すことなく「そうだね」と同意してあげましょう。そうすることにより、何となく相手と会話のペースが合ってきます。

同じ立場の人を装う

たとえば、認知症の方が「そろそろ仕事へ行かないと」と徘徊を始めようとするケースは少なくありません。このようなときは、同じ立場の人を装うことで、穏やかにその場を収められるかもしれません。徘徊しようとしたタイミングで、自身も「私も仕事に行かないと」と、一緒に玄関へ向かう、仕事へ行く準備をするふりをする、といった具合です。「仕事なんて行っていないでしょ!」と咎めるようなことをしてしまうと、怒りを買ってしまい相手を興奮させてしまうおそれがあります。同じ立場の人を装えば、相手との関係性を壊すことなく、穏便にその場を収められるでしょう。

一人ひとりのルールを見つける

妄想の度合は人によって異なります。どのような妄想を抱いているのかもさまざまであるため、一人ひとりのルールを見つけ、それぞれに応じた対処を行うことが効果的です。まずは、相手が何をすれば気分を変えられるのかを見極める必要があります。好みの食事を提供したとき、特定のテレビ番組を見たとき、本を読んでいるときなど、さまざまなことが考えられます。日常的なコミュニケーションの中で、何をすれば気分が変わるのかを見極め、そのうえで対処しましょう。また、気分が変わるまでの時間がどれくらいかかるかも、併せてチェックしてください。対処方法により、気分がすぐ変わることもあれば、しばらく妄想が続いてしまうことも考えられます。できるだけ、短時間で気分を変えてくれるような方法を見つけてあげましょう。

時には世界を崩してしまうのも良い

介護

妄想の世界は現実世界ではないため、日常的なコミュニケーションすら取りにくくなるケースが少なくありません。このような状況を打破する方法のひとつとして、相手の妄想世界を崩してしまうことが挙げられます。浸っている世界をあえて壊すことにより、気分を大きく変えられる可能性があります。攻撃的になっていた方も、世界を壊されるような衝撃的なことを体験し、もとに戻ってくれる可能性があるのです。たとえば、介護者や家族がコスプレをして、普段とまったく違う恰好で現れ、古い友人のように話しかける、というものです。おそらく、ほとんどの方は突然の出来事に驚いてしまうでしょう。このように、強烈なインパクトを与えることで相手の世界を壊し、気分をガラッと変える効果が期待できます。

レビー小体型認知症とは

夫婦

新たな種類の認知症といわれているレビー小体型認知症ですが、近年ではこの認知症の診断を受ける方が増えています。1996年に診断基準が確立され、現在では認知症患者全体の約2割にもおよぶ方が、このタイプの認知症だといわれています。レビー小体型認知症の症状としては、パーキンソン症状が挙げられるほか、幻視やレム睡眠行動障害、自律神経障害などが代表的です。初期にはパーキンソン症状が見られ、手足の震えや動きが遅くなる、筋肉が硬くなるといった症状が確認できます。中期になると認知機能や意識レベルが変動し、1日の中で気分がコロコロと変わることも珍しくありません。症状の後期になると、パーキンソン症状がより強くなり、些細なことで転倒や転落することもあります。レビー小体型認知症の治療では、主に薬が用いられます。アルツハイマー型認知症と同様に、抗認知症薬が処方されますが、パーキンソン症状が強く出ているときには抗パーキンソン薬を投与します。

幻覚・幻視の方への対処法

レビー小体型認知症の症状としては、幻覚や幻視も挙げられます。基本的な対応は、一般的なアルツハイマー型認知症とほぼ同じです。幻覚や幻視がはっきりと見えている方もいるため、そのような方にはできるだけ安心できるような対処をしてあげましょう。幻覚が見えて怖がっているときも、「何もいないよ」と否定するのではなく、「私が探してみるね」と安心できるような言葉をかけてあげることが基本です。幻覚や幻視が見えている方の恐怖は、見えていない人にはわかりません。そのため、いい加減な対応をしてしまっては、余計に相手を怖がらせてしまい、心を閉ざしてしまうおそれがあるため注意が必要です。恐怖心を取り除けるよう、安心できる言葉をかけながら対応しましょう。

より良い人間関係を築いていこう

手

認知症を患っている方とうまく付き合っていくには、人間関係が大切です。よい人間関係が築けていないと、コミュニケーションがうまくとれず余計に関係性が悪化してしまうおそれがあります。特に、妄想が見えている方は、私達にはわからない恐怖と戦っているケースが少なくありません。まずはそこを理解してあげましょう。そのうえで、安心できる言葉をかけてあげる、肯定してあげるなどの対応を心がけてください。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。