2021.10.13

入浴介助|個浴の大切さと浴室の環境づくり

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

介護での入浴について

お風呂_介助

入浴介助は介護する側にも介護される側にも体に大きな負担がかかる分野です。介護施設では入浴を「個浴」「一般浴」「機械浴」に分けて、介護を受ける人の状況に合わせて対応します。

個浴

個浴は一般家庭のバスルームのような1人用の浴槽を使った入浴方法です。介助を受けながら一人ひとり個別で入浴するのでプライバシーが保たれます。介護施設などでの個浴は、自宅の風呂に入っているようなイメージでゆっくりと一人のバスタイムを楽しめるため、多くの施設で導入が進んでいます。

介護をする人がマンツーマンで入浴介助をするため、腰に負担がかかりやすい点が問題となりやすいです。また、浴槽は浅めで幅を狭くして体がお湯に沈み過ぎないようにします。

一般浴

一般浴は、大きな共同浴場での入浴方法です。多くの介護施設では自分で歩ける人が一般浴を利用しています。介護する側が数名いて、介護が必要な入居者を何人も入浴介護します。

限られた時間、限られたスタッフでマニュアルに沿って大勢の入居者の入浴介助ができ、着替え・体を洗うなどの一連の行動を流れ作業的にさばいていくスタイルです。近年はプライバシー重視、サービス向上の観点から一般浴よりも個浴が好まれる傾向があります。

機械浴

機械浴は、入浴用の特別な機械を使用した入浴方法です。自分で歩けない人や、座ったままの姿勢を保てない人が機械浴を利用します。

大きく分けてチェアー浴とストレッチャー浴があり、介護施設では介護スタッフが声掛けをしながら付き添って入浴介助をしています。

チェアー浴は専用の椅子と浴槽を使い、座った姿勢のまま入浴でき、抱きかかえる動作が不要です。ストレッチャー浴は寝たままの姿勢で入浴し、基本的に介護スタッフは2名付きます。

浴槽のタイプと設置方法について

お風呂_入浴介助

自宅での入浴介助を考えてバスルームのリフォームを予定している場合、浴槽タイプと設置方法に気を付けましょう。3つの浴槽タイプと4つの設置方法について、それぞれの特徴を確認しながら、自宅での介護に合った組み合わせをご紹介します。

浴槽のタイプ

和式

和式の浴槽は基本サイズが深さ60cm、長さ80~120cmです。膝を曲げて入浴し、肩までお湯に入れる深さが特徴となります。体にかかる水圧が高く、入浴により呼吸や心臓の動きが活発になりやすいです。そのため、高齢者が入浴で疲れることがあるため好ましくないとも言われています。

洋式

洋式の浴槽は基本サイズが深さ45cm、長さ120~180cmです。足を延ばして寝そべるように入浴し、肩までお湯に入るイメージとなります。高齢者にとっては浴槽の縁が低く入りやすいものの、体が浮いて安定しにくく肩までお湯に入りにくい場合があります。

また、寝そべった姿勢を保つことが難しい点、立ち上がりにくい点が事故防止の観点からデメリットとなりやすいです。そのため、高齢者が使用する場合には滑り止めや手すりなどが必要となります。

和洋折衷式

和洋折衷式の浴槽は基本サイズが深さ60cm、長さ110~160cmです。足を伸ばせる洋式タイプのメリットと、肩までお湯に入れる和式タイプのメリットを兼ね備えています。肩までお湯に入っても水圧がかかりにくいので、心臓などへの負担も軽減できます。

最近は和洋折衷式の浴槽タイプが好まれていて、各メーカーも多彩な和洋折衷式の浴槽を取り扱っています。安全性を考えた位置に手すりを設け、滑り止めを施したユニットタイプの商品も多く出ています。

設置方法について

据え置き型

据え置き型の設置は、バスルームの床に浴槽をそのまま置く方法です。オシャレな浴室空間を演出するために、猫足のバスタブなどを設置したり、温泉旅館をイメージさせる木の浴槽を置いたりするケースが当てはまります。

落とし込み型

落とし込み型の設置は、バスルームの床面から浴槽を3分の1ほど埋め込む方法です。バスルームの床から浴槽の縁までの高さは35~45cmとなります。

半埋め込み型

半埋め込み型は、浴槽を床に20cm程埋め込む方法です。バスルームの床から浴槽の縁までの高さが約30~40cmとなるので、バスタブへの出入りがしやすくなります。

埋め込み型

埋め込み型の設置は、バスルームの床と同じ高さに浴槽を埋め込む方法です。浴室空間を広々と感じさせる設置方法となります。浴槽が完全に床に埋まっている状態なので、洗い場と浴槽が近すぎると、体を洗った泡などが湯船の中に入りやすいです。

最悪の組み合わせは?

高齢者にとって最悪の組み合わせは、洋式の浴槽を埋め込み型で設置する方法です。入浴介助を考えてバリアフリー化したい場合、段差がないことを理想と考えてしまう人は多いでしょう。

しかし、バスルームでは浴槽の縁との段差をなくすという考え方をしてしまうと使い勝手が極端に悪くなってしまいます。洋式の浴槽タイプを埋め込み型で設置すると、まずはバスタブに入るために床にしゃがむ動作が必要です。そして、浴槽から出る際にも床から立ち上がる動作が必要となります。浴槽からの出入りの際に、両手で浴槽の両サイドの縁を掴みにくいため体が安定しません。

理想の組み合わせとなるお風呂とは?

高齢者にとって理想の組み合わせは、和式の浴槽を半埋め込み型で設置する方法です。和式の浴槽は幅が広すぎないため、体が縁に付き安定しやすい点がメリットとなります。

また、浴槽の両サイドの縁を掴めるので出入りしやすい点もメリットとなります。そして、深さがあるため浮力が働き、介護する側も浴槽から引き上げやすいです。

深さがある和式の浴槽は据え置き型では縁が高すぎで入りにくく、落とし込み型では低すぎて入りにくくなります。そのため、設置方法は半埋め込み型が最適です。

深さ60cmの和式浴槽を、バスルームの床面から高さ40cmで設置すると、入浴介助がしやすくなるので目安にしてください。

もし、現状の浴室が和式の浴槽で据え置き型なら、床にすのこを置くなどの対応で「和式の浴槽と半埋め込み型」に近くなります。浴槽の横には、浴槽の縁と同じ高さの台を用意し、台に座って入るようにするとスムーズです。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。