2021.06.02

自宅で湯船につかれる訪問入浴介護とは?|メリットやサービス内容について解説

最終更新日:2022.12.01
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

自宅で湯船につかれる訪問入浴介護とは

お風呂

自力での入浴が困難な方の自宅に介護職員が足を運び、入浴のサポートをするサービスです。自宅の浴槽に入浴しにくい方のため、浴槽を持ち込んで入浴介助サービスを行うことも大きな特徴です。

訪問入浴介護の内容

利用者の自宅に介護職員が訪問し、持ち込んだ専用の浴槽を使い入浴のサポートを行います。通常、2~3名のスタッフで行われることが多く、看護師の有資格者も同伴するため安全に入浴介助が受けられるサービスです。家の浴槽が狭くて入浴しづらい、といったケースは少なくありません。特に、体の自由が利かない要介護者の場合、浴槽が狭いと1人での入浴は困難です。訪問入浴介護なら、専用の浴槽を持ち込んでくれるため、快適に入浴ができます。

訪問入浴介護の特徴

複数のスタッフからサポートを受けられることがひとつの特徴です。複数のスタッフが力を合わせて入浴させてくれるため、介護者はもちろん要介護者への負担も軽減できます。訪問するスタッフの中に、看護師が含まれているのも特徴です。入浴中には、血圧が上がる、転倒するなどのリスクがありますが、看護師が同伴することでこうしたリスクを軽減できます。要介護者も安心して入浴できる魅力があります。

対象者は要介護1以上

訪問入浴介護のサービスを利用できるのは、要介護1~5の認定を受けている方です。また、認定を受けている方でも、医師から入浴を禁じられている方はサービスを利用できません。訪問介護を検討しているのなら、あらかじめかかりつけ医に相談しておきましょう。

介護予防訪問入浴介護について

要支援1~2の方は原則サービスの利用ができませんが、一定の条件を満たしていれば利用可能です。自宅に入浴できる設備がないようなケースでは、介護予防訪問入浴介護を利用すれば訪問入浴サービスが受けられます。基本的なサービスの内容は、訪問入浴介護とほぼ同じです。専用の浴槽を搭載した入浴者が自宅を訪問し、複数のスタッフによって入浴介助が行われます。自宅に入浴できる設備がない以外にも、感染症のおそれがある方もサービスを利用できます。感染症のおそれがある方は、施設の浴槽が利用できないため、サービスの対象に含まれているのです。介護予防訪問入浴介護でも、介護職員以外に看護師が同伴するため安心です。健康状態のチェックも併せて行ってくれます。

サービスの流れ

夫婦

訪問入浴介護を利用する前に、大まかなサービスの流れを把握しておきましょう。

1.健康状態のチェック
血圧や脈拍などを看護師がチェックし、入浴可能な状態かどうか確認します。

2.入浴の準備
持ち込まれた浴槽へお湯を溜めて準備します。介護職員が利用者の衣服を脱ぐのを手伝います。

3.移動と入浴
サポートを受けながら、浴槽まで移動します。スタッフに体を洗ってもらい、浴槽に漬かって体をあたためます。

4.シャワーを浴びる省かれることもありますが、最後にシャワーを浴びるのが一般的です。

5.ベッドに移動し着衣
スタッフのサポートを受けてベッドに戻り、衣服を着るのを手伝ってもらいます。

6.健康チェック
入浴後の血圧や脈拍などが正常か、看護師がチェックします。

7.片付け
看護師が健康状態のチェックを行っているあいだ、介護スタッフが浴槽の後片付けをします。

8.終了
これで一通り訪問入浴介護は終わりです。

訪問入浴介護の利用料金は?

お金

利用料金の目安

利用料金は、要支援1・2と要介護1~5で分かれています。全身入浴1回を自己負担額1割とした場合、要支援1・2の方は845円、要介護1~5の方は1,250円です。

訪問入浴介護の自己負担額

自己負担額は、利用者の所得や住んでいる地域によって変わってきます。所得が少ない方の場合、自己負担額が1割負担ですが、一定以上の所得がある方の場合には、2~3割です。また、住んでいる地域が1級地~7級地、その他のどこに区分されるかでも変わります。たとえば、東京都の23区は1級地に該当するので20%が上乗せ、神奈川県横浜市や大阪府大阪市などは2級地に該当するため16%が上乗せされます。

訪問入浴介護のメリット

入浴介護は、慣れている介護スタッフでも体を酷使し大変です。訪問入浴介護を利用すれば、家族の負担を軽減できるのがメリットです。また、健康チェックが定期的にでき、本人が快適に入浴できるのもメリットといえるでしょう。

家族の負担を軽減できる

入浴介護では、衣服の着脱はもちろん、入浴の際に体もしっかり支えてあげなくてはなりません。介護者は相当体力を消耗し、腰や膝などにも大きな負担がかかります。訪問入浴介護を利用すれば、介護を担ってきた家族の負担を軽減できます。複数のスタッフが担当してくれるため、安心して任せられるのも魅力です。介護者の肉体的、精神的な負担を取り除くことができれば、ストレスの軽減効果も期待できるでしょう。

健康チェックが定期的にできる

要介護者の健康状態は常に気になるものです。特に、入浴時には血圧や脈拍が高くなりやすく、ときに体調を崩してしまう原因にもなりかねません。訪問入浴介護サービスなら、看護師による健康チェックが受けられます。先述したように、訪問入浴介護では2回にわけて健康チェックが行われます。
入浴前と入浴後の2回行われるため安心です。訪問入浴介護のサービスを利用するたびに健康チェックをしてもらえるため、病気の早期発見にもつながります。

血行促進につながる

血行を促進するには、体をあたためることが効果的だといわれています。お湯を溜めた浴槽に浸かったあと、体がポカポカとあたたかいのは、血行がよくなっている証です。血行がよくなると、栄養が体の隅々まで行き渡りやすくなります。また、体の代謝が活性化し、健康増進の効果も期待できるのです。

リラックス効果を得られる

日本人はもともとお風呂が大好きな民族です。入浴により心身ともにリラックスでき、ストレスの軽減効果も期待できます。要介護者は、不便な生活を強いられるケースも多く、ストレスを溜め込んでいる方も少なくありません。のんびりと浴槽に浸かることでリラックスでき、ストレスを解放できれば気持ちにも余裕が生まれます。利用者が気持ちよくうれしそうに入浴している姿を見れば、介護をしている家族もあたたかい気持ちになれるでしょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。