2021.06.05

アルツハイマー型認知症とは|具体的な症状と予防法まで解説

最終更新日:2021.06.07

アルツハイマー型認知症とはどのような病気かご存じですか。ひとくちに認知症といっても種類があり、特徴も様々です。認知症患者全体の67.6%を占めるアルツハイマー型認知症ですので、詳しく知っていれば親の介護で必ず役に立つでしょう。今回は具体的な症状と予防法について解説していきます。

物忘れから始まり、徐々に進行する

認知症

アルツハイマー型認知症は初めから重度の症状になるのではなく、些細な物忘れや小さな失敗から始まります。加齢による似たような症状もありますが、アルツハイマー型認知症の物忘れの特徴は、事柄の一部ではなく全体を忘れるという点です。たとえば食べた朝食のメニューを忘れるのは加齢による物忘れですが、食べたという経験そのものを忘れるのがアルツハイマー型認知症の記憶障害です。このような中核症状だけでなく、複数の周辺症状と呼ばれる妄想、徘徊、暴言暴力が出現したり消えたりしながら進行していきます。

アルツハイマー型認知症がたどる過程

認知症_高齢者
アルツハイマー型認知症を抱える人の症状は記憶障害や理解・判断力の障害、見当識障害、実行機能障害、失効・失認・失語など様々です。ここでは初期、中期、後期で目立ち始める症状についてそれぞれ説明していきます。

初期(2~3年)

直前のことでも場面が切り替わるとすぐに忘れてしまう、献立を考えて買い物することやおかずを二品同時進行で作ることができなくなっていきます。また、自分がどんな時間や場所を生きているのかという基本的な状況が分からなくなる、見当識障害が現れてくることもあります。季節や時間の感覚が分からなくなるので、時間までに出かける準備を済ませることが難しくなります。考えるのに時間がかかってくるほか、情報処理の能力が下がるので一つひとつしか考えることができなくなっていきます。入院や引っ越しなどいつもと違ったことがあると、状況を処理しきれなくなって混乱しやすくなるでしょう。そのほか、ものをなくした時に「盗まれた」という被害妄想が出ることもあると心得ておくのが賢明です。

中期(3~5年)

中期では、記憶力はさらに衰え、数年から数十年の記憶が失われていきます。トイレの場所が分からなくなり失禁する、近所なのに迷子になり、知り合いに付き添われて戻ってくる、何キロも先まで徘徊して警察のお世話になるなど、徐々に場所に対する見当識が薄れていくのです。また物事に対する手順の理解が難しくなるので、今まで使っていた洗濯機や電子レンジが使えなくなり、誰かがいないと生活することも難しくなってきます。運動器に問題がないのに自力で着替えをすることが難しくなる、感覚器に問題がないのに言葉が出にくくなるなど失行失語が目立ってきます。周囲から責められるので傷つきますが、言語能力の低下でうまく表現できず、その苛立ちや鬱憤が、暴言・暴力という形で現われることもあります。

後期~最期(5年以降)

記憶を溜めておく「ツボ」のようなものである海馬の委縮が進むと、過去に覚えた記憶までこぼれ落ちていくようになります。人の生死や人物を忘れるので、亡くなった親が生きていると言うことはよくあることです。また、この頃すでに時間の見当識障害はかなり進んでいるので、自分の年齢を何十歳も若く勘違いし、息子や嫁を兄や姑などと思い込んでしまうこともありえるでしょう。最期に近づくにつれ、会話、食事、排泄、歩行能力が低下するので、意思疎通が困難になり寝たきりで過ごす時間が長くなりがちです。常時介護する必要があり医療や介護サービスへの依存度も高くなるので、入院や施設入所をする人も多いでしょう。

アルツハイマー型認知症の予防方法

親子
遺伝子レベルの研究が進められる中、発症の10~20年も前からアルツハイマー型認知症の予兆が見られることが分かってきました。MCIと呼ばれる軽度認知障害の段階から介入し、発症予防の取り組みをすれば、抑制や改善が可能だと考えられるようになっています。ここでは3つの予防方法について説明していきます。

少し汗ばむ程度の運動

生活習慣がアルツハイマー型認知症の発生と大きく関係していることが突き止められ、運動や身体活動を行っている人は、アルツハイマー認知症発症リスクを最大で65%まで軽減できるとされています。適度な運動は脳の血流を増やすばかりか、動脈硬化と呼吸機能を改善し、血管疾患のリスクをも低下させます。結果的に体の炎症を軽減し、脳を含む全細胞の寿命を延ばす効果があるのです。また、健康な高齢者で「1日の総活動量」が多い人と少ない人では、アルツハイマー型認知症発症率がおよそ2.3倍も違うというデータもあります。運動や家事などの身体活動が、アルツハイマー型認知症の発症リスクを下げる効果があるといえるでしょう。

会話で脳を活性化

MCIの人に共通するのは、社会とのつながりが弱く孤独になりがちな状況にいるということ。アルツハイマー型認知症の予防に社会交流が大切とされるのは、人と話をすることが脳の刺激となり、神経細胞ネットワークを活性化するからです。しかし無理をする必要はなく、ストレスのない会話を意識するのがポイント。もともと大人数が苦手な人が急に大きな集まりに参加しても、緊張してしまって会話どころではないでしょう。心地よい家族や友人と、興味関心の高い事柄に対する質の高いコミュニケーションをとることが大切です。支える側としては、馴染みの人間関係の中で協働する、本人の得意なことを認めてもらえるような場を持ち続けられるよう環境作りをしてあげましょう。

生活習慣病に気を付ける

高血圧は全ての認知症発症リスクになり、治療して血圧を下げると認知症のリスクが20%減少することが分かっています。また、血中コレステロール高値がアルツハイマー型認知症の発症と相関すること、これを下げる薬剤が発症率を低下させるとの報告もあり、生活習慣病に気を付けることがアルツハイマー型認知症予防のカギといえるでしょう。特に中年期の高血圧、高コレステロールを含む脂質異常症、肥満の人が認知症になる確率は、そうでない人の2倍以上で、老年期に入って生活習慣病になる場合より影響が大きいというデータがあります。アルツハイマー型認知症を予防するには、中年期の生活習慣病を防ぐ運動習慣や、豊かな会話ができる人とのつながりを作っておくことが大切です。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。