2021.12.09

高血圧の治療薬「降圧薬」とは|薬に関する疑問や質問について簡単解説

最終更新日:2022.07.25
東海林 さおり
看護師

高血圧治療のQ&A

高血圧(140/90以上)と診断された方で高リスクに分類される方はすぐにでも薬物療法を開始する必要があります。薬物療法とは高血圧のタイプや年齢、合併症などに合わせて降圧薬や利尿薬を服用して血圧コントロールをしていく治療法です。

Q.降圧薬は一生飲み続けなければいけないのでしょうか?降圧薬の治療はどのように進められますか?

A.必ずしも飲み続けなければならないケースばかりではありません。降圧薬を飲み続け、非薬物療法を並行し行い、生活習慣、血圧ともに長期的に改善してきていれば降圧薬を中止したり、減量したりするケースはあります。また、冬は血圧が高めだが、夏は下がっている方はなど季節によって血圧が変動する方はそれに合わせ降圧薬を中止したり、減量したりすることがあります。
しかし、これの判断は必ず医師の指示のもと行う必要があります。突然薬を中止、減量することで思わぬ症状が出て危険な状態になる可能性があるからです。中止、減量の判断を適切に行うためにも家庭血圧を含め血圧の推移をしっかり記録しておくことが必要です。重度の高血圧の方や、心臓や腎臓に合併症がある方は降圧薬を中止、減量することが難しいケースが多いのも事実です。中止、減量することで合併症の悪化を招き、命に関わることもあるからです。

Q.降圧薬の治療はどのように進められますか?

A.はじめから自分に合った薬を処方されるとは限りません。まずは少量から服用を始め、一カ月程度は家庭血圧を計測し記録しながら推移を見ていきます。降圧薬の服用を始めるとこの記録が非常に大切になってきます。血圧の推移によって、薬の効果が出ているのか、自分に合っているのかがわかるからです。副作用が認められなければ、血圧の測定記録見ながら2~3カ月程服用を続けていきます。その結果で血圧の低下が認めれらるのか、それとも不十分なのかで降圧薬の内容や量を調整し再び2~3カ月効果を見て、再度薬を調整していきます。こうして量、回数、種類の組み合わせを調整していくことで9割以上の方に効き目が現れできます。利尿薬を含み3種類以上の降圧薬を組み合わせても効果が出ない方は治療抵抗性高血圧と診断されます。

Q.高齢で狭心症の人に適した薬はありますか?

A.狭心症や心筋梗塞などを合併している高血圧に適している降圧薬といえばカルシウム拮抗薬です。カルシウム拮抗薬は狭心症の治療のために開発された薬で、国内で最も多く使用されています。その他にも、ARBやACE阻害薬も適していると言えます。カルシウム拮抗薬は簡単に言うと血管を広げて血圧の上昇を防ぐ薬です。動脈硬化が進んだ高齢者にも効果的です。

Q.血圧だけでなく血糖値も高く合併症が心配です。どの降圧薬が合いますか?

A.血糖値、血圧ともに高いという方は少なくありません。糖尿病と高血圧が合併すると脳心血管病を発症するリスクが高くなると言われています(通常の6~7倍)。そういった場合は血糖値、血圧両方を改善していく治療を進めていかなくてはいけません。高血糖で高血圧の人に適している薬はARBという降圧薬です。ARBとはアンジオテンシンⅡという物質が血管に収縮されて血圧を上げてしまうのを阻害する薬です。ARBはインスリンの効果を促進し、脳、心臓、腎臓の血管を保護する働きがあるため、血糖値が高い人や心肥大、心不全のある方、腎機能が低下し始めた方にも有効な降圧薬です。

Q.ストレス性高血圧の人に適した薬はありますか?

ストレス

A.強いストレスによる高血圧の方にはα遮断薬やβ遮断薬が適しています。血圧は自律神経によって支配されています。ストレスを受けると交感神経(心身を興奮させる神経)が優位に働き、ノルアドレナリンという神経伝達物質が分泌されて血管にあるα受容体や心臓にあるβ受容体と結合します。その結果、末梢血管が収縮され心拍数が上昇し、血圧が上がってしまいます。α遮断薬、β遮断薬はその受容体に結合することで交感神経を鎮める効果があります。

Q.日本人の降圧は利尿薬が適していると聞きましたが本当ですか?

A.高血圧には血管が狭くなる血管硬化型と体内の液体が溜まっていく体液貯留型があります。確かに日本人は体液貯留型が多い傾向にあります。体液貯留型が多い原因としては塩分の過剰摂取にあります。塩分を多く摂ると、体内で濃度を調節しようとして水分を溜め込むため、血管内の血液量が増えてしまいます。増えた血液を押し出そうと心臓の働きを高めるため、更に血圧が上がってしまいます。また、高齢になるにつれて排泄機能が衰えますので、血管硬化型でも体液貯留型に移行する方も多く、高齢者の7割が体液貯留型と言われます。日本人の降圧には利尿薬が適しているといわれるのは、体内の水分量を減らすことが必要になるためです。

Q.血圧は薬でどこまで下げれば安心ですか?

A.具体的に数値としてどこまで下げればいいのかは人によって異なります。それは年齢や合併症によって目標が違うからです。日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」で年齢、合併症の有無とその種類によって細かく降圧目標が定められています。

降圧基準表

Q.降圧薬の飲み忘れを防ぐ方法はありますか?

A,降圧薬はコンスタントに服用することによって血圧の改善に繋がりますので、飲み忘れはなるべく避けたいところです。最近では1日に1回という薬も増えてきていますが、それでも忘れることはあります。飲み忘れを防ぐいくつかの方法をご紹介します。
・血圧計の隣に薬を置く
服薬のタイミングと服薬のタイミングを合わせることで、逆に血圧の測定忘れも防ぐことができます。また、血圧手帳に服薬したら印を付けるのも効果的です。
・スマホで通知
スマートフォンに入っている時間アプリで毎日同じ時刻に通知してもらうことで服薬を思い出すきっかけを作ります。また、チェック機能付きアプリなどを使うのも有効です。

おススメアプリ
「お薬リマインダー・飲み忘れ防止アプリ」をApp Storeで (apple.com)
マイセラピー・お薬リマインダー・飲み忘れ防止アプリ – Google Play のアプリ
・カレンダーに印をつける
子供だましのような方法ですが、飲んだら印をつけたり、シールを貼ったりすることで自分以外の家族も飲んだか飲んでいないかが明確になります。一人で管理するのではなく家族のサポートも大切です。
・常に持ち歩く
飲み忘れの一つとして外出中という理由があります。タブレットケースやポーチなどで常に持ち歩いていることで、ふとした時のイレギュラーにも対応できます。

Q.降圧薬を飲み忘れたら、次に2倍の量を飲みますか?

A.絶対に2倍の量を一度に飲まないでください。降圧薬を飲み忘れた時に絶対にやってはいけないのが、忘れた分もまとめて飲むことです。降圧薬の効果として血圧を下げるという効果はどの薬にもあります。その薬を一度に2倍量飲むことで急激に血圧が下がり、ふらつき、転倒などの副作用が強く現れることがあります。継続的に服用しているため、一度飲み忘れたところで急激に血圧が上がってしまうということがほとんどありません。とはいえ、飲み忘れて思い出した時に、どれくらのタイミングならどのような対処をすれば良いのかというのは医師と事前に確認しておくことをお勧めします。可能であればその場で主治医や薬剤師に相談してみましょう。

服薬忘れ対処法

Q.降圧薬を飲みだして副作用が辛いです。続けて大丈夫ですか?

A.薬を処方した医師に相談しましょう。降圧薬は長期的に服用していくことを前提に選ばれているため強い副作用がないお薬が多いです。しかしながら、どの薬にも多少の副作用が現れる可能性はあります。代表的な症状としてはめまい、動悸、頻脈、徐脈、むくみなどです。副作用が辛いと思った時には必ず医師に相談し、自己判断で中止や減量は行わないようにしましょう。

高血圧薬の副作用

不安な方は医師や薬剤師に相談しよう

高血圧で薬物療法を始める方はこれからどのようになっていくの不安になりますよね。特に薬のことは専門的な知識でわからないことが多く不安は大きいと思います。だからこそ、医師や薬剤師とのコミュニケーションが大切になってきます。とにかくわからないことや不安なことは聞くのが一番です。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。