2021.05.18

分かりやすく解説|認知症の中核症状と周辺症状の関係について

最終更新日:2021.05.18

認知症を発症するとさまざまな症状が見られるようになるでしょう。それらの症状は「中核症状」と「周辺症状」に分けられ、別個に考える必要があります。中核症状についてはもちろん、周辺症状とは何か、また、お互いにどのような関係があるのかについて見ていきましょう。

中核症状と周辺症状の関係

パズル

認知症を発症したときに見られる症状は、中核症状と周辺症状に分けられます。中核症状とは簡単に言えば病気によって直接引き起こされる症状のことで、その中核症状によって引き起こされるのが周辺症状(BPSD)です。

中核症状と周辺症状の関係の具体例

例えば、病気によって職人さんがこれまで出来ていた作業ができなくなると仮定しましょう。病気になったことでめまいやふらつきが起こり、高い場所での作業ができなくなったとします。作業ができない自分にイライラしたり、周囲に暴言を吐いたりするようになるかもしれません。この場合では、病気によって引き起こされた症状は「めまい」や「ふらつき」なので、これらが中核症状となります。そして、「イライラ」や「暴言」は中核症状によって引き起こされた症状なので、周辺症状と分類することができるでしょう。

中核症状

認知症を原因として引き起こされる中核症状には、以下のものがあります。

● 見当識障害
● 失語
● 遂行機能障害
● 失行
● 記憶障害

見当識障害

自分が置かれている状況が分からなくなることを「見当識障害」と言います。例えば現在地や時間、曜日、日時が分からなくなったり、身近な人との関係性について分からなくなったりすることもあるでしょう。何度も行ったことがある場所なのに道に迷ってたどり着けなかったり、家の中でトイレの場所が分からずに漏らしてしまったりすることもあります。

失語

適切な言葉が出てこないようになることを「失語」と言います。簡単な単語でも間違ったり、明瞭な言葉が話せなくなったりすることもあるでしょう。例えば「スマホ」という言葉が出てこずに、「スマオ」等の似たような言葉を話したり、「財布」のようにまったく異なる言葉が出てしまったり、言葉が上手に出てこないために口ごもってしまったりするケースもあります。また、話をすることは問題がなくても、相手の話や書かれている文章を理解することが難しくなる場合もあるでしょう。会話することが難しくなったり、本や新聞を読まなくなったりすることもあります。

遂行機能障害

計画して物事を進めることが難しくなることを「遂行機能障害」と言います。また、「実行機能障害」と呼ばれることも少なくありません。例えば料理をしながら新聞を読むといった二つ以上の物事を同時進行させることが難しくなり、焦がしてしまったり、どこまで読んだか忘れてしまったりすることもあるでしょう。その他にも、料理に必要な材料を買うことや、予想外のことが起こったときに適切な対応をすることが難しくなることもあります。

失行

日常生活の基本的な動作ができなくなることを「失行」と言います。洋服の着替え方やたたみ方、お箸の使い方、化粧の仕方などを忘れてしまうこともあるでしょう。

記憶障害

もの忘れが増えたり、記憶力が低下したりすることを「記憶障害」と言います。ついさっきまで話していた内容を忘れたり、もの忘れを指摘されても何について指摘されているかすら分からなくなってしまったりすることがあるでしょう。

周辺症状(BPSD)

中核症状によって引き起こされる周辺症状は、行動や心理状態に表れることが多いため「行動・心理症状」と呼ばれることもあります。認知症の周辺症状として、以下の症状を挙げられるでしょう。

● 不安
● 抑うつ
● 妄想
● 幻覚
● 睡眠・覚醒障害
● 食異常行動
● 徘徊
● 暴言・暴力
● 介護拒否

不安

現在地や日付が分からなくなると、不安になります。また、さっきまでしていたことやこれからの予定が分からないときも不安に感じるでしょう。認知症の中核症状により不安が引き起こされることは多いので、周囲の人々は不安を軽減するような声がけをすることが大切です。

抑うつ

認知症になると、今までできていたことができなくなることがあります。できないことに気持ちが落ち込んでしまい、抑うつ状態になることもあるでしょう。また、今まで関心を持っていたことに興味を持てず、人と会うのが億劫になり、気持ちが滅入ってしまうこともあります。

妄想

実際とは違うことを信じ込む「妄想」も、認知症によくある周辺症状のひとつです。例えば財布を入れた場所を忘れて、家族が盗んだと騒ぎ立てることもあるでしょう。家族は疑われたことに腹を立てるのではなく、認知症患者の話をよく聞いて、一緒に探したり、置き場を決めてなくさないようにすることが大切です。

幻覚

実際にはないものが見えたり聞こえたりする「幻覚」も、認知症によくある周辺症状です。レビー小体型認知症では幻視が、アルツハイマー型認知症では幻聴が見られることが少なくありません。頭ごなしに否定するのではなく、一旦は受け入れて患者の気持ちを落ち着かせるようにしましょう。

睡眠・覚醒障害

認知症になると体内リズムが乱れがちになるため、就寝時間になっても眠気が起こらなかったり、夜中に目が覚めてしまったりすることがあります。不眠が続くと、集中力の低下や体調悪化を招くこともあるでしょう。寝る前に足を温めたり、日中にしっかりと運動したりすることで、正しいリズムを取り戻すことができます。

食異常行動

認知機能の低下により、食べ物ではないものを口に入れることもあります。洗剤や薬剤などは身の回りに置かないようにし、万が一誤食した場合はすぐに救急車を呼ぶようにしましょう。

徘徊

帰り道が分からずに外を動き回る方も少なくありません。見当識障害や記憶障害から徘徊することもありますが、不安な気持ちから徘徊することもあります。徘徊しようとしているときは、一緒に散歩することを提案したり、テレビを見たりゲームをしたりといった外出以外の楽しそうなことを提案することがよいでしょう。

暴言・暴力

不安な気持ちが強まると、相手に対してひどい言葉で罵ったり、殴ったり、物を壊したりといった行為に出る方もいます。また、認知機能の低下により思っていることが表現できず、イライラして暴言・暴力が出ることもあるでしょう。不安そうな表情やイライラしている態度が見られるときは、早めに楽しい話題を提供することなどで暴言・暴力を回避できることもあります。

介護拒否

自尊心が傷つけられ、介護を拒否する方もいます。また、入浴や食事、排泄などのサポートをする意味が理解できずに介護を拒否することもあるでしょう。患者がなぜ介護を拒否するのかの理由をしっかりと聞き、納得できる形で介護を受け入れてもらうように説明します。

中核症状への理解

認知症の初期の段階では、患者ができることもたくさんあるため、患者の行動をサポートする形で介護を実施していきます。できないことに対して叱ったり、「なぜできないの?」というような自尊心を傷つける言葉をかけたりすることで、患者本人の中に負の感情がため込まれ、周辺症状として現れることがあるので注意が必要です。認知症の中核症状を理解し、何が難しいのか、どのようなことができにくくなるのか家族が把握しておきましょう。

周辺症状への対応

周辺症状は中核症状と異なり、個人によって差があるため、その人の生い立ちや生活環境、職業歴などを考慮した対応が必要です。また、薬物療法やリハビリテーションを行うことでも、周辺症状を抑えることができます。医師やケアマネージャーと相談し、適切な介護計画を立てましょう。認知症は誰しもがなる可能性がある病気です。中核症状や周辺症状を理解しておくことで、患者の気持ちや行動を理解しやすくなり、また、介護もしやすくなります。医師や理学療法士等の専門家と話し合い、患者に合う介護方法や対応を探していきましょう。

東海林 さおり
看護師
看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。