2022.07.26

特定施設入居者生活介護とは|初めての方へ分かりやすく解説

最終更新日:2023.07.03
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

家族の介護をしていると、「介護者の負担を減らしたいが、入居施設をどこにしたらよいかわからない…」とお悩みの方もいると思います。そこで、特定施設入居者生活介護について理解を深めておくことで、入居施設を検討する際に役立つでしょう。特定施設入居者生活介護とは、ケアプランに基づき、「身体的介護サービス」と「機能向上のリハビリ」を受けられる厚生労働省が定めた施設です。こちらの記事では、特定施設入居者生活介護の種類やサービス内容、利用対象者等について詳しく紹介していきます。

特定施設入居者生活介護とは

特定施設入居者生活介護とは

特定施設入居者生活介護の指定を受けた「特定施設」とは、ケアプランに基づき、身体的介護サービスと機能向上のリハビリを受けられる、厚生労働省が定めた施設のことです。具体的には、有料老人ホームや軽費老人ホーム、養護老人ホームさらに一部のサービス付き高齢者向け住宅がこれに当たります。

特定施設入居生活介護での介護サービスの提供の方法は、「一般型」と「外部サービス利用型」に分かれます。一般型は内部提供型とも言い、特定施設の介護職員が食事や入浴、排せつ介助などを提供することを指します。一方、外部サービス利用型は、特定施設の職員が立てた計画に基づいて、外部の事業所に介護サービスを依頼する方法です。特定施設入居者生活介護の指定を受けるということは、入居者に日常生活上のお世話や機能訓練を行うことを示しますが、特定施設の対象になるのは「有料老人ホーム」「経費老人ホーム(ケアハウス)」「養護老人ホーム」です。「サービス付き高齢者向け住宅」の場合でも、「介護付き有料老人ホーム」に該当するなら特定施設の扱いになります。

特定施設入居者生活介護のサービス内容

特定施設入居者生活介護のサービス内容

特定施設入居者生活介護のサービス内容には、24時間介護や生活支援、機能訓練など3種類のサービスがあります。

24時間介護サービス

特定施設入居者生活介護における24時間介護サービスでは、以下のような日常生活における介護全般を受けることができます。

  • ・食事の介助(食事準備や配膳など)
  • ・入浴の介助(浴室への移動や浴槽での出入り、着替えや清拭など)
  • ・排泄の介助(トイレへの同行やオムツ交換など)

24時間介護サービスの場合、スタッフが24時間常駐しているため、利用者は早朝や夜間においても安心して過ごすことができます。

生活支援サービス

特定施設入居者生活介護における生活支援サービスでは、以下のような生活する上で必要なサポートを受けることができます。

  • ・枕やシーツなどの寝具の交換
  • ・衣類の洗濯
  • ・買い物の代行および同行
  • ・居室の清掃
  • ・服薬の管理

施設の種類より健康相談をはじめ安否確認や介護相談なども行っているため、不安なことや困った時がある際も安心です。

技能訓練やその他のサービス

特定施設入居者生活介護では、介護や生活の支援以外にも以下のようなさまざまなサービスを受けることができます。

  • ・専門の指導員によるリハビリテーションなどの機能訓練
  • ・入退院時における同行
  • ・療養上のお世話

施設の種類により医療処置を受けることもできます。

特定施設入居者生活介護の種類

特定施設入居者生活介護の種類

特定施設入居者生活介護の対象となる施設には4種類あり、介護付き有料老人ホームやケアハウスと呼ばれる経費老人ホーム、養護老人ホームがあります。サービス付き高齢者向け住宅については、介護付き有料老人ホームに該当するものは特定施設の扱いになります。また、特定施設入居者生活介護に指定を受ける特定施設を介護付きホームといいます。さらに特定施設入居者生活介護には、特定施設の事業者が自ら介護を行う一般型と、特定施設の事業者はケアプラン作成などのマネジメント業務を行い、介護を委託する外部サービス利用型があります。

介護付き有料老人ホーム

老人ホーム

有料老人ホームでは「介護付き有料老人ホーム」だけが特定施設入居者生活介護の指定を受けることができます。有料老人ホームの中で、唯一特定施設となります。入居する時の費用は、家賃を前払いするという意味の入居一時金(0~数千万円)と月々の費用(15万~35万円)がかかります。入居一時金は退去時に払いすぎた分があれば返還されることがあります。月々の費用は施設介護サービス費やサービス加算という、介護保険の対象になる料金と、居住費、食費といった自費の料金があります。そのほか不定期で、レクリエーションや理美容代、日用品代、医療費、入浴や通院送迎が一定以上になった時の追加サービス費などがかかることがあります。

サービス付き高齢者向け住宅

自宅

サービス付き高齢者向け住宅は、有料老人ホームと比べて低めに抑えられ、住み替えを見通して比較的気軽に選べる施設です。初期費用と月々の費用は「一般型」か「介護型」なのかで金額に差があります。初期費用として、一般型は礼金や更新料が不要で、敷金(0~数十万円)のみがかかります。一方特定施設入居者生活介護の指定を受けている介護型では、介護付き有料老人ホーム同様返還金制度がありますが、入居一時金(数十万円~数百万円)がかかります。月々の費用は、一般型で5万~25万円、介護型で15万~40万円程度を想定しておきましょう。一般型が低額なのは日常生活がある程度自立した方が多いためで、生活支援サービスなどを使いすぎなければ、年金の範囲内で賄うことも可能になります。介護型が高めなのは、食費サービスを受けることが前提となっていることや、水道光熱費が含まれているためです。

ケアハウス(軽費老人ホーム)

老人ホーム

福祉施設という性格上、身寄りがない、または家庭環境や経済状況などの理由で家族と一緒に住むことができない高齢者が限定的に入居できるケアハウスですが、やはり「一般型」か「介護型」で違いがあります。一般型は初期費用として、退去時に行う居室の清掃や修繕のための保証金を、介護型では入居一時金(0~数十万円)を支払います。そのほか月々介護サービス費や居住費や食費などを支払います。一般型が介護保険対象サービスを使うときは、自宅で暮らす要介護者と同じように外部事業所に依頼しますが、介護型は施設の介護職員が行います。

養護老人ホーム

介護

養護老人ホームは、介護の必要性を問わず、経済的な理由で自力で生活することが難しい高齢者の施設で、基本的には社会復帰を目指すことを目的にしているため、長期的な利用を目的としていません。入居者本人や扶養義務者の前年度の収入によって費用が39段階に定められており、入居金は不要です。最も高額でも14万円程度で済むようです。安否確認や生活相談、健康管理、レクリエーションの支援はありますが、介護サービスの提供はないので介護の必要性が出てくると介護保険施設などに移るようになります。今回は特定施設入居者生活介護の指定を受けた様々な施設について解説しました。指定を受けることで、一定の基準が保証されていることになるので、施設選びの目印にしてみるのもいいでしょう。ケアハウスは自治体の助成を受けることができるので、有料老人ホームよりも低い金額設定になっています。基本的に受けられるサービスは見守りや食事、掃除、洗濯などの生活援助が中心です。

特定施設入居者生活介護の施設基準

特定施設入居者生活介護の設備基準

特定施設入居者生活介護の事業者として指定を受けるには、厚生労働省令で定められた人員基準や設備基準、運営基準をクリアする必要があります。

人員基準

管理者、サービス提供者の人員配置などについて以下の基準があります。

管理者 常勤、専従の管理者1人。
生活相談員 常勤1人以上。常勤換算で利用者(要介護者等)100人に対し、生活相談員1人以上
看護および介護職員

利用者(要介護者)3人に対し、看護および介護職員1人以上。また利用者(要支援者)10人に対し、看護および介護職員1人以上

(ただし看護職員は要介護者等が30人までは1人、30人を超える場合は50人ごとに1人)

機能訓練指導員 1人以上で他の職と兼務可
計画作成担当者

介護支援専門員(ケアマネジャー)1人以上で他の職と兼務可

(ただし要介護者等100人あたり1人の設置を標準)

設備基準

居室や介護室などの設備要件について以下の基準があります。

介護居室

原則個室で、介護を行うために適当な広さがあり、プライバシーにも配慮すること

また地階には設けず、空き地や廊下、広間に面した緊急避難用の出口を設けること

一時介護室

介護を行うために適当な広さがあること

(ただし、すべての居室が介護専用居室であって、利用者を移す必要がない場合は設置が不要)

浴室 身体の不自由な人にあ入浴することに適したものであること
便所 居室のある階ごとに設置し、非常用設備を設けること
食堂・機能訓練室 機能を十分に発揮するだけの適当な広さがあること
施設全体 利用者が車椅子で円滑に移動することが可能な空間と構造であること

運営基準

以下のような項目について運営基準があります。

  • ・特定施設入居者生活介護の取り扱い方針
  • ・運営規定に定める事項
  • ・職員の秘密保持
  • ・法定代理受領サービスの利用についての利用者の同意
  • ・サービス内容や手続きの説明、契約の締結など

参考:厚生労働省. 「特定施設入居者生活介護」.https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000648154.pdf, (参照 2022-07-26)

特定施設入居者生活介護のメリット・デメリット

特定施設入居者生活介護のメリットデメリット

特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設を利用する場合は、さまざまなメリットやデメリットを事前に確認してから十分に検討する必要があります。

特定施設入居者生活介護のメリット

  • 介護保険により利用者の要介護度に応じて自己負担が定額に設定されているため、特定施設に入居した後、金銭面での負担増の心配を抑えられます。看護や介護などの職員が24時間365日常駐しているため、体調に不安を抱える人も安心して過ごすことができます。特定施設に入居後、身体状況の変化に伴って要介護度が上がっても、住み慣れた施設で暮らし続けることができます。

特定施設入居者生活介護のデメリット

  • 介護保険を利用して外部の介護サービスを利用することができないため、人間関係が悪化した場合などは我慢する必要もあります。利用者の要介護度に応じて定額の自己負担が発生するため、介護の必要が低い人の場合は、自己負担が割高になることがあります。

特定施設入居者生活介護の対象者

施設で過ごす入居者の様子

特定施設入居者生活介護を利用できるのは、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ケアハウスなどの施設に入居している要介護1〜5の認定を受けた人です。ただし、入居している施設が「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていることが保険適用の条件になっています。また、介護予防特定施設入居者生活介護を利用できるのは、要支援1または2の認定を受けた人です。

特定施設入居者生活介護の費用

介護保険負担割合証

特定施設入居者生活介護の費用は、要介護や要支援の等級区分ごとや、居住地がどの地域区分(1級地〜7級地、その他)に属しているかによって異なります。

要支援1・2

介護予防特定施設入居者生活介護

サービス費用の設定

1日あたりの利用者負担(1割)

1か月あたりの利用者負担(30日
要支援1 180円 5,400円
要支援2 309円 9,270円

要介護1〜5

特定施設入居者生活介護

サービス費用の設定

1日当たりの利用者負担(1割)

1か月あたりの利用者負担(30日)
要介護1 534円 16,020円
要介護2 599円 17,970円
要介護3 668円 20,040円
要介護4 732円 21,960円
要介護5 800円 24,000円

※利用者負担は、一定以上の所得者の場合は2割または3割となります。

参考:厚生労働省. 「特定施設入居者生活介護」.https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group17.html, (参照 2022-07-26)

要介護度が上がったら特定施設入居者生活介護の検討をしよう

施設のお部屋で過ごす男性

日々の介護に負担を感じ、そろそろ介護サービスを検討している人向けに、特定施設入居者生活介護についてご紹介しました。特定施設入居者生活介護は、介護保険により利用者の要介護度に応じて自己負担が定額に設定されており、看護や介護の職員が24時間365日常駐しているため、安心した日々を過ごすことができます。また、身体状況の変化に伴って要介護度が上がっても転居する必要もありませんので、介護に負担を感じてきた際には特定入居者生活介護の利用を検討してみましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。