2022.06.27

親の介護でお悩みの方へ、押さえておきたい5つのポイントを解説

最終更新日:2022.08.18
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

親の介護を考えているものの、働き盛りの年齢だったり、子どもが受験を控えていたり、自分の家族で手一杯になり、どうしても親の将来を考えるのは後回しになりませんか?

・兄弟と話し合いの場を設けていない
・できれば親自身で何とかして欲しい
・介護に詳しくないし、忙しくなるのは避けたい

親が遠距離に住んでいる人や、兄弟の仲がよくない場合など、家庭の事情で意思疎通ができない事例もあります。とはいえ、介護関係の情報を集めたい気持ちもあると思います。そこで今回は、「親の介護で悩みがちな5つのポイント」として、①親の介護で注意したいこと②家族間のトラブル対応③自宅と老人ホームのどちらを選ぶか④お金の対策⑤仕事と介護の両立についてをお伝えします。

親の介護で注意したいこと

老いていく親

親と別居していると、普段の様子や生活スタイルがわからず、飲んでいる薬や現在の体調、いつも通っている病院や主治医を知らない人のほうが多数派です。そのため、介護に必要な情報が足りない場合があります。実際、保険証がどこに保管されているか知らない人もいるでしょう。介護の手段を探す前に親の健康状態を理解して、介護者になる自分たちがどこまで親の介護に関われるか確認することが大切です。まずは親の現状を整理してください。

親の病状の確認をする

親の通院に同伴して、主治医から病状説明を受けてください。親から口頭で説明を聞いても親自身が病状の理解不足のため、医師に指示されるまま薬を受け取っている場合があります。

高齢者は体調が急変し、救急搬送されるかもしれません。また、ゆくゆくは老人ホームに入所する可能性も考えられます。このような入院・入所では、確実に病歴や服薬管理の聞き取りをされます。スムーズな手続きと情報共有のため、主治医と話して今後の将来設計や病歴を確認すると安心です。

介護へ取り組む姿勢を考えておく

介護へ取り組む姿勢

親の介護へ取り組む姿勢として「心理面の心構え」が必要です。体は衰えて生活に手助けが必要な親の姿を見て、元気だった「数年前」と「現在」のギャップに衝撃を受ける人は少なくありません。ごく簡単なことができない親を見て、喪失感を感じたり、憤りを感じたり、一言では表せない心の思いが言動として出てきます。

特に認知症の進行が進み、家族に対して「はじめまして」や「どちら様ですか?」と実の親に言われたとき、大きなショックを受けるでしょう。また、育ててくれた親のために介護を頑張る人は非常に多く、介護負担が蓄積して「介護うつ」になる事例も全国で多発しています。

そのため、主介護者の方は役場・地域包括支援センターで、介護相談を受けてください。訪問介護など居宅サービスや、グループホームなど地域に密着した施設サービスの提案を受けられます。自治体で開催している介護教室の受講などで、技術を身につけることも効果的です。

遠距離介護をするかどうか決めておく

遠距離介護のメリットデメリット

遠距離介護とは、別居している子どもが、遠方に住む親を支援することを指します。転勤や結婚など、ライフスタイルの変化で親と離れて暮らすと、緊急事態があってもすぐに親の元へ向かえません。電話などで安否確認はできるものの、生活の援助はできないことが主な問題点です。

例えば、北海道に住んでいる親が助けを求めてきても、沖縄に住んでいる子どもはすぐに駆け付けることは難しく、交通費も高額になります。そのため、遠距離介護の場合は「訪問介護や施設サービスの入所」などで、住宅改修のコストや介護費用が必要になります。

親と同じ地域に住んでいると、親の体調を把握しやすい環境になり、突発的な緊急事態に対応が出来るのがメリットです。のがメリットです。そのため最適な介護サービスを選びやすく、プロに介護を任せられるため介護負担は大きく軽減されます。転居の必要はないため、環境変化によるストレスもありません。しかし、親と住む距離に限らず、あらかじめ介護の方向性を考えておくと安心です。

親の介護での家族間のトラブル対応

質問をする男性

親兄弟の仲が悪い家族は少なからずいます。そういった場合、遺産相続でトラブルに発展して仲が悪くなったり、離れて暮らしているため関係性が希薄になったりする可能性があります。親の介護は、子ども同士で協力し合う必要があるので、関係が冷えて意思疎通が取れないと、結果として親の介護に支障をきたします。

特に、親と遠方に住んでいると体調の変化を知らない場合も多く、兄弟や病院などから「親の介護が必要」と聞かされるケースもあります。突発的な状況変化による家族間のトラブルと解決方法を知っておくと安心です。

親の介護で兄弟が協力してくれない

親の介護が必要になる時期は、子どもたちは50歳前後の働き盛りで、家庭や仕事で忙しく積極的な介護に参加しにくい現実があります。自分の生活が優先になりがちですので、親の介護の押し付け合いが発生して関係が悪化するケースや、1人で介護を引き受けて介護者や介護者の家族が「ノイローゼ」になった事例もメディアで報道されています。

それを防ぐため、兄弟間で約束事を決めて役割を分担してください。例えば兄弟が2人いるとしたら「主に兄が介護するが、週末は弟が担当」「遠方で介護に関われない代わりに介護費用を負担」など、兄弟で均等に介護を担うことが理想です。十分な話し合いと、明確な役割分担が大事なポイントになります。

親の介護をしたくない

親の介護に関わりたくない理由として、幼少期に親から虐待された経験があり、感情面で「介護をしたくない」と思う人や、病気や認知症で衰えていく姿を直視できず、親に会いたくない人がいます。親の介護は強制ではないものの「子どもは親の介護をする義務」が民法で定められています。確執はあるかもしれませんが、援助できる余力がある範囲内で親を助けなければいけません。

直接介護が難しく、専門的な知識がない場合は、介護サービスを利用してください。親が自宅で生活を継続するなら、訪問介護や訪問診療など豊富な居宅系サービスがあり、自立した生活が難しい場合でも、老人ホームへの入所ができます。市役所などで詳しい手続きを教えてもらえますので、介護制度を利用して親の介護は専門の介護士事務所にお願いするのが最善です。

親の介護、自宅と老人ホームのどちらを選ぶか

自宅と老人ホームのどちらを選ぶか

親の介護に直面したとき「在宅介護(自宅での介護)」と「施設介護(老人ホームへ入所)」の選択で悩む人は多いです。自宅の生活は不安だけど、老人ホームではどんな介護を受けられるかわからず、不安になる人もいるでしょう。そこで「自宅」と「施設」のメリットとデメリットをまとめました。家庭と親の意向を踏まえて、選択肢の参考にしてください。

自宅での介護の場合

自宅で介護をするメリットは、住み慣れた環境のため親は安心感があります。自力の生活に大きな支障がなければ、訪問介護やデイサービスを利用しつつ、いままでと大きな変化がない生活できるため、家族全員の負担は少ないでしょう。寝たきりのような、体を動かすことが難しい場合でも、訪問入浴や訪問看護など、豊富な居宅サービスを選べます。

デメリットは、家族の介護負担です。多くの家庭では介護や看護の知識が乏しく、急な事態の対応力は高くありません。誤嚥や体調が急変した場合、パニックで119番通報できない事例もあります。また、認知症による夜間の徘徊や一人で外出して帰れなくなるケースもあるため、所在確認と安全確保は必須です。

排泄・入浴介助は重労働になりがちで、腰などを痛める可能性だけではなく、終わりが見えない重圧から介護者がメンタル面で問題を起こすなど、共倒れの問題も報道されています。介護度が高くなるにつれて介護者の負担は大きくなるため、在宅介護は介護者の無理のない範囲で行ってください。

老人ホームの場合

一般的に知られている老人ホームは施設サービスです。施設サービスは公的施設である「特別養護老人ホーム」「老人保健施設」等と、民間施設である「グループホーム」「サービス付き高齢者住宅」などがあります。

公的施設は月額費用が低めですが、介護度の重い人や在宅生活が難しい人が優先して入所できるため、希望してもすぐに入れるとは限りません。民間施設では自立度が高い人も入居でき、個人のニーズに合わせて施設を選べます。

老人ホームのメリットは、介護負担が大きく減らせます。介護士による24時間の見守りがあり、施設によっては看護師が常駐しているため、急な体調不良でも手厚いケアが受けられます。施設内で顔なじみができるため、レクリエーションを通じて、認知症の予防や体の活性化につながります。

デメリットは、入居者同士でトラブルが起こったり、認知症により落ち着かず、家に帰りたがったり、集団生活の中で心理的なストレスが積み重なる場合があります。費用面では、居宅サービスよりコストがかかるケースもあるため、施設の相談員と確認してください。

親の介護でのお金の対策

介護保険被保険者証

親の介護では新しい生活を準備するため、一定の費用がかかります。自宅内の段差の解消や、階段や廊下に手すりを付けるなど、住宅改修が必要な人もいるでしょう。しかし、国や自治体から援助があるため、制度を活用しながら介護する方法をまとめました。

親の介護にかかる費用

親の介護にかかる月額の介護費用

公益財団法人 生命保険文化センターの2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、月額の費用の平均額は8万3,000円です。手すりの取り付けなどの住宅改修や、介護用ベッドの購入を含めた一時費用の平均額は74万円と、2018年の調査より増えました。介護の場による費用の違いは「在宅」は4万8,000円、「施設」は12万2,000円と、大きな開きがあります。

介護費用を軽減できる制度として、介護保険の負担限度額認定証の発行や、高額介護合算療養制度、高額介護サービス費支給制度、その他、市町村や自治体独自の助成があります。一旦立て替えて後日返還してもらったり、施設の入居費用の負担が軽くなったりします。給付には条件があるため、すべての人が受給できるわけではありません。役場で制度を受けられるか条件を確認してください。

親の財布・通帳等の確認

子ども側の経済的な援助が限られている場合、親の年金や貯金を介護費用に使わなければいけません。そのため、親の財産管理は重要です。介護度によって介護保険の限度額が決まっているため、年金の受給額を確認しておくと、毎月の介護費用の目安になります。

しかし、親が認知症になると、判断力の低下から親族同士のトラブルに発展する可能性があります。そのため、親に変わって財産管理や介護サービスの選択を任せられる、成年後見制度の活用も検討してください。

介護保険を利用するための手続きを確認

介護保険サービス利用までの流れ

介護保険とは、介護が必要な人に費用を給付する制度です。対象は「40歳から64歳までの第2号被保険者(医療保険加入者のみ)」と「65歳以上の第1号被保険者」に分けられます。主に介護が必要になった高齢者が受けられる保険制度ですが、第2号被保険者は、難病や末期がんなど特定疾病で介護が必要と認められた場合、給付を受けられます。介護保険を利用する流れは以下の通りです。

①市町村の役場や地域包括支援センターで要介護認定(要支援認定)の申請
②認定調査(調査員が自宅や施設に訪問)と主治医による主治医意見書の作成
③コンピュータと介護認定審査会による要介護度の判定
④認定(要支援は1~2・要介護は1~5。自立度が高いと非該当になる)
⑤介護(介護予防)サービス計画書の作成(通称:ケアプラン)
⑥ケアプランに基づいた介護サービスの利用

手順が複雑に見えますが、役場や地域包括支援センターの担当から具体的な手続きの情報がもらえるので安心してください。

仕事と介護の両立について

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2019年の国民生活基礎調査の概況によると、親の介護をする子どもの年齢は「50歳から69歳が50%以上」を占めています。年齢的に会社のベテランや責任がある役職、人手が足りない職場で働いている人もいると思います。そうした中で突発的な介護の問題が発生し、介護離職を考える人も多いです。そのため、職場へ介護の理解を求める方法などをまとめました。

職場に介護のことを伝えるべきか

親の介護を職場に伝えるポイント

会社には親の介護が必要になった時点で、早めに相談してください。周囲の理解が得られやすくなりますので、以下の順序で伝えるといいでしょう。

① 親の現状を伝える(ケガや病気、介護認定の申請状況)
②仕事の進捗(取引の状況や引き継ぎ)
③今後の見通し(在宅介護か施設に入所の予定・早退の可能性)

親の介護は誰にでも起こるため、お互い様です。親の介護を会社に伏せたままだと、急に仕事の穴をあけたり、仕事のパフォーマンスが落ちてミスが増えたりします。職場に迷惑をかけた後ろめたさから、介護離職に繋がる事例が問題になっていますので、早めの報告と相談を心がけてください。

介護休暇・介護休業

介護休暇と介護休業の違い

介護休暇と介護休業は、どちらも「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」として労働者に権利が認められています。具体的な違いは以下の通りです。
■介護休暇
・取得条件 雇用期間が6か月以上かつ要介護の家族を介護中
・期間 対象家族が1人の場合、年間に最大5日間(2名の場合は最大10日間)
・対象家族の範囲 親子や配偶者の親
・時間単位 1日か1時間単位で取得
・手続き 書類や口頭(当日も可)
・賃金 法的な定めはない(企業の裁量による)

■介護休業
・取得条件 雇用期間が1年以上かつ要介護の家族を介護中
・期間 対象家族が1人につき、通算93日まで
・対象家族の範囲 親子や配偶者の親
・取得単位 3回まで分割取得が可能
・手続き 開始日の2週間前までに書類を提出
・賃金 介護休業給付が受けられる

おおまかにまとめると、休む期間の長さと休職中の給付の有無に違いがあり、突発的な事態であれば介護休暇、親に付き添う必要があれば介護休業を選べます。家庭によって状況が異なるため、会社の上司と相談しながら選択してください。

親の介護について

孫とお芋を食べる女性

今回は親の介護で押さえておきたい5つのポイントを紹介しました。要点をまとめると以下の通りです。

・親を介護する前に主治医から病状を確認
・兄弟間で介護の約束事を決める
・在宅介護と施設介護は一長一短
・介護費用は介護保険が適用される
・介護離職の前に休業制度を検討

多くの人が初めての親の介護で知識がなく、仕事に追われている人がほとんどです。家庭環境は人それぞれで、親のために尽くす人もいれば、そうではない人もいます。先の見えない親の介護で心身をすり減らす前に、地域包括支援センターなど介護相談で、専門家と話しながら適切な介護サービスを利用してください。

平野たけし
介護福祉士、介護支援専門員、 第一種衛生管理者、 社会福祉主事任用資格、 認知症ライフパートナー3級 、福祉住環境コーディネーター2級 、メンタルヘルス・マネジメント検定試験2種 、ファイナンシャル・プランニング技能士3級

2018年9月まで、老人保健施設の介護士として14年間従事し、身体介護だけでなくイベントのプロジェクトリーダーを経験。介護福祉士・介護支援専門員・社会福祉主事、第一種衛生管理者、他多数の資格を習得する。2021年よりWebライター・電子書籍(Amazon Kindle)編集者として活動開始。様々なジャンルの書籍編集(加筆修正・構成・タイトル提案など)に8件携わり、ベストセラーを獲得。2年間の育児休業の経験があり、介護・子育ての記事執筆を得意とする。

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増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。