2023.06.26

高齢者の脱水症の原因6つとは?脱水症チェックと予防・対処法

最終更新日:2023.09.08
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

暑い日が続くようになると、汗の量も増えて喉の渇きを感じることが多くなるのではないでしょうか。ご家族に高齢者の方がいる場合、ご家族が脱水症になってしまわないか不安を抱く方もいらっしゃるかと思います。本記事では、脱水症の原因や予防・対処法について説明していきます。脱水症に対して不安がある方は、本記事をお読みいただけますと幸いです。

脱水症とは

脱水症で倒れる男性

脱水症とは、体内の水分量が不足し、生命維持や日常の活動に支障をきたしてしまう状態を指します。暑い日に多量に汗をかいたり、下痢や嘔吐などで水分喪失が著しくなったりすると発症することがあります。

脱水症による危険性(リスク)

脱水症になると、ナトリウムなどの電解質のバランスが崩れることで、けいれんや意識障害などが出現することがあります

また、脱水症により体液や血管内の水分が不足することで、身体に十分な栄養や酸素を供給できなくなります。その結果、腎不全や脳梗塞など身体の臓器に障害が生じ、場合によっては死に至る危険もあります

高齢者が脱水症になりやすい原因

高齢者が脱水症になりやすい原因

高齢者が脱水症になりやすい原因について説明します。高齢者が脱水症になりやすい原因としては、主に以下の6つが挙げられます。

① 筋肉量が減り、身体の水分量が減る
② 喉の渇きを感じづらくなる
③ 腎臓機能の低下
④ トイレが気になり飲む量を控えている
⑤ 嚥下障害や食欲低下による水分摂取量の低下
⑥ 利尿作用のある薬を飲んでいる

それぞれについて、具体的に説明していきます。

筋肉量が減り、身体の水分量が減る

筋肉量が減り、身体の水分量が減る

年齢が高くなるほど体内に保有する水分量は減っていきます。例えば、新生児は体重の80%、幼児は70%の水分量を占めていますが、成人は60%、高齢者は50%と徐々に少なくなるのです。

そのため、高齢者は少しの水分を失うだけでも脱水状態になりやすいです。それに加えて、水分を備蓄することができる筋肉の量が若いときよりも減る為、さらに水分がなくなり脱水状態になりやすくなります。

喉の渇きを感じづらくなる

高齢になると、一般的に喉の渇きを感じづらくなります。身体の水分量が減って血液の濃度が上昇すると、その刺激が脳の視床下部という部分に伝わります。視床下部には口喝中枢という喉の渇きの感覚を司る部分があり、ここに血液濃度の上昇という刺激が伝わることで、喉の渇きが生じる仕組みになっています。

高齢者の場合、この喉の渇きを感じる機能が弱まっているため、脱水により血液濃度が上昇しても喉の渇きが生じにくくなっています。

腎臓機能の低下

高齢になると、腎臓の機能も低下します。腎臓には尿の生成や水分の再吸収を行う働きがあり、これらを行うことで身体の水分量を調節しています。身体の水分量が過剰になると尿量を増加させ、水分を体外に排出することを促し、身体の水分量が減少すると尿量を減少させ、水分の再吸収を促進させます。

高齢になると、腎機能が低下することで、尿量の調節や水分を再吸収する働きが弱まり、身体の体液量が減少しても水分の再吸収や尿量の調節ができず、結果として脱水に至ってしまうことがあります。

トイレが気になり飲む量を控えている

成人は、毎日1Lの水分を飲み物から摂取するのが望ましいとされています。しかし、トイレに行く回数を減らしたい、失禁を恐れて水分量を減らすなどの理由により水分摂取量を控えてしまう高齢者がいらっしゃいます。それにより、必要な水分を体内に入れることができずに脱水状態になることがあるでしょう。

嚥下障害や食欲低下による水分摂取量の低下

嚥下障害がある方は、食べることが難しいため、自然と食欲が落ちてしまうことが多いです。人間が必要とする水分量は1日に約2.5Lです。そのうち1.2Lは食事から摂ることが想定されています。しかし、食欲が低下し、食事量が減ると、毎日の食事から十分な量の水分を摂取することができません。

利尿作用のある薬を飲んでいる

利尿作用のある薬を服用している場合は、尿によって水分が失われやすくなっています。適切な量の利尿剤を服用し、なおかつ医師の指示に従った水分量を摂取しているか今一度確認しておきましょう。

脱水症のサイン「脱水症チェック」

脱水症のサイン脱水症チェック

脱水症の症状としては、口渇感や尿量の減少、皮膚や口腔内の乾燥、倦怠感などがあります。軽度、中度、重度の症状について、具体的に説明していきます。

軽度

軽度の脱水症では、口渇感や尿量の減少、皮膚や口腔内の乾燥などが出現します。呼びかけには反応し、意識レベルは保たれていることが多いです。

中度

中度の脱水症では、頭痛や嘔気、頻脈などの症状が出現します。

重度

重度の場合、電解質のバランスが崩れ、また身体の各臓器に十分な酸素や栄養を送れなくなるため、意識障害やけいれんなどの症状が出現します。また、血圧低下なども起き、死に至ることがあるため注意が必要です。

脱水症の対処方法

ペットボトルの水

脱水症の対処方法について説明します。

軽症の場合

まずナトリウムなどの電解質をバランスよく含んだ「経口補水液」で水分摂取を行いましょう。経口補水液とは、水に適切な食塩とブドウ糖を加えたものであり、水分の吸収を円滑に行うように調整された飲料水です。

経口補水液を摂取することで、水分のみならず、発汗等で失われたナトリウムも摂取することができます。脱水時、水のみを摂取すると電解質のバランスが崩れてしまうため、基本的には経口補水液で水分摂取を行いましょう。

また、体温上昇による発汗を防ぐため、夏場であれば涼しいところに移動することも重要です。

中等症の場合

経口補水液等の水分を経口摂取できるかどうかで方針が変わってきます。嘔気などの症状が軽度であり、水分摂取ができそうであれば、経口補水液による水分摂取を行いましょう。

ただ、水分摂取でも症状の改善が見られない場合、病院受診をおすすめします。嘔気などの症状が強く、経口摂取が難しい場合、家庭での対応は困難と考えられるため、病院を受診して点滴による水分補給を行ってもらいましょう。

重症の場合

すぐに病院を受診して入院加療の上、水分補給や全身管理が必要です。重症が疑われた場合、速やかに救急車を呼んだ方が良いでしょう。

高齢者の脱水症の予防方法

高齢の方は喉が渇きにくいことが多いので、「喉が渇いたら水分を摂取する」ではなく、一日に何度もお茶の時間を設けて「時間が来たから水分を摂取する」ように心がけましょう

水分摂取量の目安として、小さめのコップ(150ml)なら毎日7~8杯、大きめの湯飲み(200ml)なら毎日5~6杯は飲むように意識しましょう。

また、普段から、水分と電解質(体の機能調節に必要不可欠なミネラル)を適時摂取することが大切です。電解質が入ったドリンクには、経口補水液がおすすめです。経口補水液以外にも、無塩のトマトジュースに少量(1Lに3g程度)食塩を入れたり、普通の水に少量(1Lに3g程度)食塩を入れたりして飲めば、水分だけでなく電解質も補給できます。

脱水症で入院した場合の入院期間は?

点滴

脱水症で入院した場合、脱水の程度により入院期間は異なります。

軽症であり、経過観察目的の入院の場合は、1,2日程度で退院となることが多いでしょう。中等症の場合、症状が改善するまでは絶食の上、点滴治療になることが多く、数日~1週間程度の入院になる場合があります。重症の場合、脳や腎臓等に臓器障害をきたしていることもあり、脱水の治療と同時に臓器障害に対する治療も必要になります。そのため、1~2週間程度の入院が必要になるでしょう。

高齢の家族が脱水症にならない為に家族が出来ること

体調の悪い高齢者を心配する家族

先に述べましたが、高齢者は喉の渇きを感じにくくなっているため、身体の水分量が減っても自発的に水分摂取をしないことが多いです。そのため、周囲の人が定期的に水分摂取を促すことが重要です。起床時や就寝時など、決まった時間帯に水分摂取を促すのが良いでしょう。普段から水分量の多い食事を心掛けておくのも良いです。また夏場ですと、室内の温度や湿度が高くならないように冷房等を活用するのもおすすめです。

認知症と脱水症の関係について

公園のベンチに座る高齢女性

認知症があると、認知症のない高齢者と比較して脱水症になりやすいと言われています。

高齢者の場合、喉の渇きを感じにくくはなっていますが、一般の高齢者であれば喉の渇きを感じれば水分摂取を行います。ただ認知症があると、そもそも食事や水分摂取自体の意欲が低下しているため、喉の渇きを感じても水分摂取を自発的に行わないことがあります。

また、思考力が低下しているため、暑さを感じても衣服を脱いだりしないこともあり、夏場に汗をかきやすくなります。

脱水症になりやすい高齢者はこまめな水分補給が大切

水分補給をする男性

いかがでしたでしょうか。脱水症による危険性や高齢者が脱水症になりやすい原因、対策方法等について説明しました。脱水症になりやすい高齢者にとって、こまめな水分補給がとても重要になります。高齢のご家族がいる方は、定期的な水分摂取をすすめましょう。

また、脱水症対策としてヨイケアの商品「経口補水液」は効率よく水分を吸収でき、大変オススメです。一度お試しいただければと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

ヨイケア
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。