2023.05.10

親の介護のストレスを軽減する方法4選を介護の専門家が解説

最終更新日:2023.05.10
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

「外で仕事を頑張って、帰ると親の介護」「仕事がお休みでも介護は休めないので、気を抜く暇もない」、そんな毎日を送っていませんか?仕事と介護の両立はむずかしいものです。大事だからこそ自分でみてあげたいし、親だからこそイライラしてしまうこともあるでしょう。ストレスの溜めこみすぎはゆくゆく身体の不調につながります。ストレスを軽減することで自分と家族との大切な生活を続けていくことができます。今回は、ストレスを軽減するための方法を紹介していきます。

親の介護にストレスを感じてしまう原因

親の介護にストレスを感じてしまう原因

ストレスを軽減するにはストレスの原因をなくすことにほかなりません。ストレスを引き起こす原因は主に以下の3つです。
・介護者の身体的・精神的な負担が大きい
・介護にかかる費用負担が大きい
・介護と仕事の両立が必要
ここからは、これら3つの原因について詳しく見ていきます。

介護による身体的・精神的負担

高齢になると筋力やバランス感覚などさまざまな身体機能が弱まっていきます。認知症の罹患率も高くなり、認知機能の低下も見られたりします。それらが原因で歩行が不安定になったり、排泄したいと感じる感覚が弱まったりしていくと、日常生活にも影響が出てきます。

例えば排泄面です。成人の1日の排尿回数は4〜8回程度で、トイレごとにつきそうとなると数時間おきのつきそいが必要になります。夜中にトイレに行くときには、介護者も夜眠れなかったりします。

食事の食べこぼしや排泄の失敗がると、片づけや着替えの介護も必要です。洗濯物が増えたり、においに対処する負担も出てきたりします。認知症が進行し、徘徊や昼夜逆転が見られてくると、身体的にも精神的にもかなりの負担になっていきます。

介護にかかる費用負担

介護する量が増えていけば介護者の健康にまで影響を及ぼし兼ねません。介護負担を軽減することが必要になってきますが、負担軽減には経済的負担を伴うことが多いです。例えば介護保険サービスであるデイサービスを週2回利用した場合、1ヶ月の利用料は3〜4万円台が相場となります。またオムツ類が必要になれば1ヶ月数千円の費用がかかることもあります。

施設に入所した場合、身体的負担はありませんが経済的負担は大きくなります。例えばサービス付き高齢者住宅やグループホームであれば18〜20万円以上の費用がかかることもあり、費用面から入所が困難なケースも珍しくありません。

親の介護と仕事の両立

介護が必要な方のほとんどが持病を持っています。そのため定期の受診が必要であったり体調を崩しやすかったりします。受診のつきそいや看病で繁忙期や急な休みを取らないといけない場合もあるでしょう。そのような休みが続くと会社に申し訳なく感じ、肩身の狭い思いをしてしまいます。また、仕事が終わって帰宅しても介護という仕事が待っており、休まる間もなく翌日がやってきます。土日も関係のない介護と職場に気を遣いながらの仕事の両立はなかなか難しいところです。

親の介護のストレスを軽減する方法4選

親の介護のストレスを軽減する方法4選

介護はひとりではできないという言葉が介護業界にはあります。この言葉は親の介護をしている方にも当てはまります。介護者が疲弊してしまえば、大切な親も共倒れになり兼ねません。ここからは親の介護のストレスを軽減する方法を4つお伝えします。

介護保険サービスや介護保険外サービスを利用する

介護のことなので介護のプロにお願いするのは有効な手段です。介護事業所は専門スタッフの配置人数や設備面など沢山の基準が義務付けられています。基準を満たした事業者によるサービスは多岐に渡り、大きく介護保険サービスと介護保険外サービスに分けられます。どちらもプロが提供する介護サービスなので大きな負担軽減となります。以下、介護保険サービスと介護保険外サービスについて説明します。

介護保険サービス

介護保険サービスとは、介護保険制度に基づいて日常生活に支障をきたす高齢者を対象とした1〜3割の自己負担で利用できるサービスです。市役所等で申請後、必要な介護度合いを7段階で判定され介護度合いに応じたサービスを受けることができます。

介護保険サービスには、日帰りで通ってサービスを受けるデイサービスや自宅に介護や家事の支援が来る訪問介護、車椅子や介護ベッド等の福祉用具の購入やレンタルに補助を受けられるサービスなどさまざまなものがあります。

特に自宅での介護の場合、数日から数週間宿泊することができるショートステイの活用はとても有効です。完全に介護から離れることで介護者が休息する時間を作り、外出や旅行に出かけるなど精神的にリフレッシュすることもできます。また親は介護や看護の専門職員のサービスを受けられ自宅での介護のヒントが得られたり、社会参加やリハビリの時間になったりもします。

介護保険外サービス

介護保険外サービスとは、介護保険制度には該当しないものの、介護に必要とされるサービスのことを指します。介護保険ではカバーしきれない、かゆいところに手が届くサービスも多く、一人一人にカスタマイズしたサービスを受けることが可能です。サービス利用は全額自己負担となるため事前に料金の確認が必要となります。

介護保険外サービスには、食事を届けてくれる配食サービスや車椅子に対応している移送サービス、自宅に散髪等にきてくれる訪問理美容などさまざまなものがあります。また、近隣の社会福祉協議会等では話し相手になってくれる傾聴ボランティアや介護予防教室を行っているところもあります。訪問理美容をうまく活用すれば、床屋までのつきそいや理容用の椅子に座り直す必要もなく、自宅で定期的にヘアカットが終えられかなりの負担軽減になります。

主治医やケアマネージャーに相談する

専門家に相談することで介護負担を軽減するさまざまなアドバイスをもらうことができます。医者は医療のスペシャリストです。例えば、親が頻尿でトイレへのつきそいが大変な場合、頻尿のお薬を処方してもらうことで解決するかもしれません。また慢性の便秘で大変な思いをされているときは便秘になりにくい食事や運動のアドバイスがもらえたりもするでしょう。

ケアマネージャーは介護サービスを熟知した介護の専門家であり、介護サービスを利用する際の計画書の作成も行います。遠慮せず日頃の困りごとや疲れていることを相談してください。各々の事情に応じ、適切なサービスを盛り込んだサービスプランを提案してくれます。

地域の「介護者の会」に参加をする

介護者の会とは、介護を担う人たちが集まり、情報交換や交流などを行う場です。同じ立場の人たちが集まるため、自分だけが抱えてきた悩みや問題を共感しあう場になります。また介護に関する情報や知識を得ることもでき、負担軽減のヒントを得られます。

介護者の会は自治体や介護施設や病院、社会福祉協議会が主催していることが多く、中には特定の病気や高齢者介護などジャンルに特化したものもあります。自分に合った介護者の会を見つけてみましょう。

「介護休暇」や「介護休業」を活用する

いずれも法律で定められた会社を休むことができる制度です。介護休暇は最大10日間取得ができ、休暇中の給与の一部が支払われます。介護休業は最大で93日取得可能で介護保険から一定の給付金が支払われることもあります。休暇や休業を利用することで時間や体力的な余裕を確保できます。また、この間に疲労回復を行うことで介護者の健康状態を維持し、介護に対するモチベーションも維持していくことができます。

関連記事:介護休暇とは?介護休業との違いや取得条件、賃金の有無を解説

その他、親の介護のストレスを解消する方法

レクリエーションを行う様子

今までお伝えしてきた以外にもストレス軽減する方法はあります。できることからはじめてストレスを軽減していきましょう。自分の健康も大切にしながら介護を継続していく方法をいくつかご紹介します。

自分の時間を確保し、気分転換をする

自分の時間を確保しリフレッシュする時間を作りましょう。自分の趣味をしたり映画を観たりなど、リフレッシュすることで心身の疲労を回復できます。また、介護に対してのメリハリもでき、充実感も得られるでしょう。

十分な睡眠時間を確保する

睡眠は心身にとって不可欠で重要な回復時間です。睡眠には、疲労回復の他、集中力や免疫力の向上、メンタルヘルスの改善効果が知られています。十分な睡眠を取り、身体と精神の健康を維持していきましょう。

1人で頑張りすぎないようにする

介護はいつ終わるのか先が見えにくいものです。そして24時間365日必要とします。大切な親を介護し続けていくには無理をしすぎないことが重要です。1人で全て抱え込んでしまうと職場、家庭、健康にも影響が出てきます。家族や兄弟で協力し合あい、できるところは分担していきましょう。職場においても福利厚生や労働組合に相談しておくことで急な休みが必要になったときなどに備えておきましょう。またケアマネージャーなど専門職にも日頃の状況を伝え、自分が負担を溜め込みすぎないように事前に対応策を考えておくことも重要です。

1番のストレス解消法は介護施設への入居

介護施設の入居者と職員の様子

介護施設への入居は介護疲れへの1番の軽減・解消になります。日常の介護は専門の職員が行うため大幅な負担軽減になり、また、自分の時間を確保しやすくなります。施設への面会や一緒に外出する機会を作ることで、親に会うこともできますし、家族にしかできない精神的な部分の介護を行うことも可能です。

施設には様々な種類があり、軽度な高齢者を主な対象とするサービス付き高齢者住宅やグループホームやリハビリ目的の介護老人保険施設、重度な方を対象とした特別用語老人ホームなどがあります。施設に入居するには1ヶ月15万円〜20万円程度の費用が必要となります。特別養護老人ホームや介護老人保健施設には低所得者向けに費用減免となる制度があります。

親の介護は平均何年?

砂時計

親の介護期間は、平均で4〜6年ほどと言われています。日本人の平均寿命が女性で84歳くらいなので、80歳前後から介護が必要になるケースが多いと思われます。親が80歳であれば子は50代くらいでしょう。定年65歳が標準の今、仕事と介護の両立は10年以上になってもおかしくない時代だと言えます。

認知症の介護がしんどいとお悩みの方へ

悩み事をする女性

80歳〜84歳の5人に1人は認知症というデータがあります。認知症になると、記憶や判断力、思考力などの低下が見られるようになります。家族は、同じことを繰り返し聞かれたり、物を盗られたと言われたりすることもあるでしょう。

認知症の介護は、大きなストレスがかかります。対処法として、まず認知症はどのような症状でどのように進行していくのか知ることが大切です。突飛な行動をしている場合でも、認知症の症状を理解することで、なぜそのような行動に至ったのかひもとくことができたりします。悪意があるわけではなく、病気がそうさせていると理解することが大切です。

情報共有や交流を目的として、各地域で認知症サポーター養成講座や認知症カフェ、認知症と家族の会など集いの場があります。集いの場に参加することも対処法のひとつです。

親の介護でお困りの方は介護の広場へ相談しよう

デスクワークをする女性

親の介護と仕事の両立で悩んでいる方はあなただけではありません。また、実際リアルに集う場だけではなくウェブ上でも介護の情報が得られたり、同じ立場の人たちと交流したりすることが可能な時代です。

情報収集や交流、悩み相談など幅広く集いの場となっているのが「介護の広場」です。「介護の広場」は悩みを投稿することで、経験のある一般の方や専門家から回答を得られるコミュニティサービスです。コミュニティサービスも有効に活用しながら親の介護と仕事が続けていけるようにしていきましょう。

介護の広場
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。