2021.06.07

介護保険を利用して購入できる腰掛便座の種類と特徴|快適介護用品・福祉用具

最終更新日:2023.01.03
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

特定福祉用具とは介護が必要な方のお困りごとを支援する用具の中で、利用する方の肌が直接触れる用具が対象となります。介護用品はレンタルすることができる商品もありますが、衛生面を考慮し肌が直接触れるポータブルトイレや入浴で使用するイスや手すり、特殊尿器の交換部分がそれにあたります。購入可能な特定介護福祉用品には5つの種類がありますが、そのうち、腰掛便座について見ていきましょう。

腰掛便座はどんな状態のときに使うべきか

高齢者

腰掛便座は、要介護者の排泄の際に使用する福祉用具です。排泄は一日に何度もおこなう生理現象ですが、身体に不自由を感じるときにはトイレに行くことやトイレでしゃがむこと、立ち上がることに困難を覚えることもあります。腰掛便座を利用することで、トイレまで行くという行為を省略できたり、トイレで座る・立つの動作を楽に行えたりすることがあるでしょう。また、腰掛便座にはいくつも種類があるため、ケアマネジャーと話し合って、要介護者の状態や自宅の環境に合わせたものを選ぶ必要があります。

腰掛便座はどんな悩みを解決することができるのか

介護

腰掛便座を購入して要介護者の自宅に導入することで、以下の悩みを解決できることがあります。

解決できる悩み①トイレまで行くことが大変

要介護者の状態によっては、トイレまでの移動に困難を覚えることがあります。腰掛便座のなかには居室に据え付けられるものもあり、トイレまで行かずに排泄できるようになるでしょう。

解決できる悩み②トイレでしゃがむことが大変

自宅のトイレが和式便器の場合、要介護者はしゃがむことが難しいと感じるかもしれません。腰掛便座のなかには和式便器の上に取り付け、洋式便器のようにしゃがまなくても利用できるように補助するものがあります。

解決できる悩み③トイレで座ることが大変

自宅のトイレが洋式便器の場合でも、便座が低いと、トイレで座ることや立ち上がることに困難を覚えることもあるでしょう。腰掛便座のなかには洋式便器の座面に取り付けられるものがあり、高さを補助して、要介護者が座る・立つの動作をしやすいようにサポートします。

解決できる悩み④トイレから立ち上がることが大変

洋式便器の座面の高さに問題がなくても、立ち上がる際に痛みや不便さを感じることがあるかもしれません。腰掛便座のなかにはスプリング式や電動式で立ち上がりをサポートできるものもあります。

腰掛便座を利用するメリット

トイレ

腰掛便座を利用することで、次のようなメリットを得られることがあります。

メリット①排泄時に不便さを感じなくなる

トイレが使いにくい場合は、尿意や便意をもよおしてもあまり行きたくないと感じるかもしれません。しかし、腰掛便座を利用することでトイレが使いやすくなると、不便を感じずに排泄ができるようになるでしょう。

メリット②便秘を予防する

トイレの使いにくさを理由に便意を我慢するようになると、場合によっては便秘になることもあるでしょう。すっきりとした排便は健康の基本でもあります。便秘を予防するためにも、腰掛便座を利用することが必要になることがあるでしょう。

メリット③介護の負担が軽減する

トイレの立ち上がりを補助する腰掛便座を自宅に導入するならば、介護者の負担も軽減します。また、トイレが使いにくいことで要介護者が便意や尿意を我慢している場合、我慢しすぎてベッドや廊下などで漏らしてしまうことがあるかもしれません。腰掛便座を導入してトイレに行きやすくなるならば、粗相をすることも減り、介護者の掃除や洗濯の負担を軽減できることもあります。

腰掛便座の種類と選び方

種類①和式便器の上に設置する腰掛便座

和式便器の上に設置するタイプです。導入すると、洋式便器のように利用できるようになります。和式トイレはひざや腰に大きな負担をかけるため、要介護者にとっては使いづらいものですが、腰掛便座を置くことでしゃがまずに利用できるようになるでしょう。また、設置工事が不要なことから、少ない費用でトイレの洋式化を行えるという点もメリットです。設置には時間がかからないので、すぐに利用できるのもメリットといえるでしょう。

アロン化成「サニタリーエースHG据置式 アイボリー」534123

腰掛便座の種類_サニタリーエースHG据置式アイボリー

・足腰が弱いが未だに和式トイレを利用している
・洋式トイレへの改修工事を検討しているが、費用がかかるため先送りにしている

このような方は「アロン化成 サニタリーエースHG据置式 アイボリー 534123」がおすすめです。工事不要で和式トイレが洋式トイレに早変わりします。広さや取り付け位置に合わせて便座の向きを180度変えられます。便座の取り外しも可能で、手軽に掃除ができます。

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種類②洋式便器の便座を高くする腰掛便座

洋式便器の座面が低いと、立ち上がる際や座る際に腰・ひざに大きな負担がかかります。便座の上に置くタイプの腰掛便座を利用することで、立つ・座るの動きが楽になるでしょう。

TOTOエムテック「補高便座 50mm #SC1 パステルアイボリー レギュラー」EWC440R

腰掛便座の種類_補高便座50mm#SC1パステルアイボリーレギュラー

・現在使っている便座では高さが低く、立ち座りで足腰に負担がかかる

このような方には「TOTOエムテック 補高便座 50mm #SC1 パステルアイボリー レギュラー EWC440R」がおすすめです。座面を高くして立ち座りの負担を軽減することができます。足腰に不安がある方におすすめの商品です。高さが変わるだけで、これまで通りウォシュレットが使えて快適です。

補高便座50mm#SC1について詳しく見る

種類③スプリング式・電動式の立ち上がり補助機能付き腰掛便座

便座を高くするだけでは立ち上がりの際に痛みを感じるという方には、スプリングや電気による立ち上がり補助機能付きの腰掛便座を導入できます。トイレの立ち上がりをサポートするのは、介護者にとっても負担が大きな作業ですので、介護の負担も軽減できます。

TOTOエムテック「トイレリフト」EWC151

腰掛便座の種類_トイレリフト

・トイレでの立ち上がりが大変
・トイレのスペースが足りず、手すりを設置できない方

このような方には「TOTOエムテック トイレリフト EWC151」がおすすめです。EWC151は、はね上げ式のアームレストが付いた立ち座りを電動でサポートするトイレリフトです。使用する方の身体状況に合わせて垂直と斜めの昇降経路が選べます。介助者も使用者も使いやすいリモコンスイッチです。昇降はスイッチ操作時のみ作動し、希望の高さで停止するため安心です。

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種類④移動可能な腰掛便座

トイレまで行くことが難しい場合や、家庭のトイレが和式で、なおかつあまり広くないために和式便器の上に設置するタイプの腰掛便座を導入することができない場合は、居室に設置できるポータブルトイレを検討できます。このタイプの腰掛便座は移動可能なため、ベットサイドなどの要介護者が多くの時間を過ごす場所に合わせて動かすこともできます。

パナソニックエイジフリー「ポータブルトイレ座楽背もたれ型SP」VALSPTSPBE

腰掛便座の種類_ポータブルトイレ座楽背もたれ型SP

・夜に一人でトイレまで歩いていくのが辛い
・防災用としてポータブルトイレを活用したい

このようなお困りごとを抱えている方は「パナソニックエイジフリー ポータブルトイレ座楽背もたれ型SP VALSPTSPBE」がおすすめです。VALSPTSPBEは、使う人にも介護する人にも配慮をした設計になっています。ひじ掛けは体型に合わせて高さ調節ができ、握力の減少した高齢者の方にも安心できる握りやすさを実現しました。フタが被せ式なため、気になる臭いの漏れを抑えます。

ポータブルトイレ座楽背もたれ型SPについて詳しく見る

腰掛便座の費用

電卓

メーカーによっても、また種類によっても腰掛便座の価格は異なります。また、介護保険の負担割合によっても異なるのでご注意ください。目安としては和式便器の上に設置するタイプの腰掛便座の価格は20,000~30,000円で、介護保険の負担割合が1割ならば自己負担額は2,000~3,000円です。また、洋式便器の便座の高さをサポートする腰掛便座の価格は10,000~15,000円で、自己負担額は1割負担の場合は1,000~1,500円となります。電動式で立ち上がりを補助するタイプの腰掛便座の価格は180,000~250,000円で、介護保険によってカバーされる購入上限額が10万まで(自己負担額も含む。1割負担の場合は9万円、2割負担の場合は8万円が介護保険で償還される金額となる)のため、自己負担額については1割の方でも90,000~160,000円程度になるでしょう。まずはケアマネジャーと相談してから導入を決定してください。居室におけるポータブルタイプの腰掛便座の価格は35,000~50,000円で、介護保険の負担割合が1割の方なら自己負担額は3,500~5,000円程度です。シャワー機能付きのものは120,000~150,000円で、こちらも介護保険の上限額との関係により、自己負担額が1割負担の方で30,000~60,000円となります。

まとめ

手

排泄は一日に何度も起こる生理現象なので排泄に不便を感じると生活の質が一気に低下してしまうことがあるでしょう。腰掛便座があることでリスクを軽減して、要介護者も介助者も快適な生活を送れるようになります。ご自宅に合うタイプ、そして、要介護者が利用しやすいタイプの腰掛便座を選び、生活が便利になるようにしていきましょう。メーカーによってもさまざまなタイプの腰掛便座があります。できれば介護用品店などで一度実際に座ってみて、便座の高さや使用感が納得できるものを選ぶようにしてください。また、においに配慮したものやシャワー機能付きのものなどは高額になります。価格によっては介護保険が全額適用されない場合もありますので、ケアマネジャーと相談してどの程度のものが適しているのか考えてみましょう。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。