2022.11.09

親の介護は拒否できる?介護ができない時の対処法を解説

最終更新日:2023.01.03
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

「親の介護が必要だが、仕事や子育てが忙しくて余裕がない」「兄弟たちと親の介護や遺産相続について話したいけど、何から手を付けていいか分からない」と悩んでいる方がいらっしゃると思います。子が親を介護することは、法律で定められています。拒否すれば法的に罰せられることもあります。しかし、様々な事情により、介護ができない環境の人もいるでしょう。今回は、親の介護の扶養義務や、親の介護ができない時の対処法について詳しくご紹介します。

親の介護は拒否することができない

頭をかかえる女性

ここでは親の介護を拒否できない理由や拒否した場合どうなるかについて紹介します。それでは順番に解説していきます。

直系血族及び兄弟姉妹は扶養義務がある

要介護者に対して介護の義務がある者

「直系血族および兄弟姉妹は、お互いに扶養する義務がある」と民法第877条第1項で定められています。直系家族とは、父母・祖父母・子ども・孫などを指します。

扶養義務とは、自力で生活を維持できない親族に対して、生活維持のために必要な経済的援助や日常生活を介助する義務のことです。親の介護は、子どもや孫、兄弟姉妹に扶養義務があります。その為、親が介護を必要とした場合、介護を拒否することはできません。ちなみに結婚して戸籍から外れていても、法律上の扶養義務は残ります。

親の介護を拒否したらどうなる?

それでは親の介護を拒否したら、どうなるのでしょうか。結論として、親の介護を拒否すると、①「保護責任者遺棄罪」②「保護責任者遺棄致死罪、保護責任者遺棄致傷罪」の罪に問われてしまう可能性があります。

①保護責任者遺棄罪とは、扶助が必要な人物を置き去りにする犯罪です。老年者や病人、身体障害者、幼年者を保護しなかった場合に適用される場合があります。法定刑は、3か月以上5年以下の懲役です。

②保護責任者遺棄罪を犯し被害者にケガを負わせた場合は、保護責任者遺棄致傷罪になります。罰則は、懲役3か月〜15年です。また保護責任者遺棄罪を犯して被害者を死亡させてしまった場合は、保護責任者遺棄致死罪になります。保護責任者遺棄致死罪の罰則は、懲役3〜20年です。

親の介護ができない時の対処法

親の介護ができない時の対処法

親の介護は、肉体的にも精神的にも大きなストレスを伴います。仕事や子育てなどの諸事情で、親の介護ができない場合もあるでしょう。そのような場合、一人で抱え込むのは非常に危険です。周囲の親族や行政窓口へ相談しましょう。

兄弟姉妹や親族を頼る

親の介護ができない場合、兄弟姉妹や親族を頼りましょう。子どもが複数人いる場合は、兄弟姉妹間で「誰がどんな支援をするのか」の役割分担を決めておくのが原則です。兄弟姉妹のうち、誰かひとりが全てを担うのはおすすめできません。他の兄弟も親の様子が分からなければ不安を感じます。財産を独り占めするために介護をしているのではなど、あらぬ疑いを掛けられることもあるのです。

役割分担の具体例として、以下を挙げます。

・介護などにかかる一か月の費用を、兄弟姉妹で分割する
・同居する長男が身の回りの介護をする代わりに、経済的な支援は次男が多めに支払う

地域包括支援センターに相談する

高齢者に関する総合相談窓口である地域包括支援センターへ相談するのも有効です。センターには保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなど福祉の専門家が配置されています。遠方に住んでいて介護できない、資金援助したいけど余裕がないなど、介護についてのあらゆる相談を受付けてくれます。介護保険の手続き代行や介護サービス、施設入所についても詳しく説明を受けることが可能です。

介護施設への入居を検討する

親の介護ができない場合、介護施設への入居を検討する手段もあります。施設入居には費用が必要であり、不安を感じる方もおられるかもしれません。しかし家族が全ての費用を負担する必要はありません。親の預貯金や年金も介護費用に充てられます。また介護保険制度や健康保険制度により、介護費や医療費は原則1~3割の負担で済むのです。介護施設の種類によって、必要な費用は異なります。親の状態や負担できる費用に応じて施設を選びましょう。施設を選ぶ際には、地域包括支援センターや担当ケアマネジャーへの相談が有効です。

親の介護は遺産相続に影響する?

家系図

「親の介護をしていれば、他の兄弟よりも多く相続できるの?」と考えることもあるかもしれません。結論として、できる場合もできない場合もあります。

遺産相続の法制度に「寄与分」の考え方があります。寄与分とは、「親の財産を維持したり増加させるために、特別寄与した人には多めに財産を与える」という考え方です。一般的な親の介護は「扶養義務」に当たる為、寄与分には該当せず、親を介護したからといって多くの財産を相続できません。

とはいえ、親の介護をする人が不公平感を持つのも理解できます。兄弟姉妹間の財産トラブルを防ぐには、早めの対応が最も有効です。親が元気なうちに、もしくは介護がスタートした時点で、介護の役割分担や相続について話し合っておきましょう。

毒親の介護を拒否することは可能?

バツマークをする男女

虐待やネグレクト、暴言を吐くなどの毒親に悩み、親の介護をしたくない人がいるのも事実です。いわゆる毒親であっても介護をしなければならないのでしょうか?

法律上は、自分の親が毒親であっても介護を拒否することはできません。直系家族には、扶養義務があるからです。しかし、親と同居をして、介護を行うことは、精神的にも肉体的にも大きなストレスを伴います。相手が毒親であれば、なおさらでしょう。同居しての介護が困難な場合は、施設入所させるなどして一定の距離を取るのが有効です。

親の介護をしたくない場合、まずは専門家に相談しよう

親子で手を握り合う

今回は親の介護について紹介しました。子が親を介護することは、法律で定められています。とはいえ様々な事情により、親の介護ができない人もいます。あらかじめ介護について詳しく知っている人は少数です。実際に親の介護が必要になって初めて、対応を考える人がほとんどです。まずは、一人で悩まず、周囲の親族や専門家に相談しましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。