2021.06.14

筋力低下を予防したい方へ|介護予防運動③ 筋力トレーニング

最終更新日:2021.06.14
小池 涼太
理学療法士

筋力トレーニングによる効果

筋力トレーニング

筋肉量の低下は、50歳くらいから始まり、60歳くらいから急激に低下します。何もしなければ、どんどん筋肉量が減っていくため注意が必要です。高齢者が筋力トレーニングを取り入れたいのは、筋肉量アップの目的のためです。筋肉量がアップすれば、基礎代謝アップや筋力アップを実感しやすいでしょう。高齢になると筋肉量を増やすのは大変だと思われがちですが、何歳になっても増やすことは可能です。とくに筋肉量の低下で不調を抱えやすいのは、体幹や下半身の筋肉量低下でしょう。体幹は体を支えるための筋肉で、下半身は足腰を動かすために必要です。これらの筋肉が少なくなると、足腰の動きがスムーズでなくなり、痛みの原因にもなります。筋力トレーニングは、痛みがある方の予防としてもおすすめです。とくに腰回りや膝周りの筋肉量が低下すると、関節や筋に負担をかけて、痛みを伴いやすくなります。また、筋肉量が増えると基礎代謝がアップしやすく、生活習慣病予防にもなります。筋肉トレーニングは、食べ物を飲み込む力をつけて、食事から栄養を取り込むためにもおすすめです。

介護予防運動の具体例(筋力トレーニング)

筋力トレーニングをする男性

介護予防に筋力トレーニングを取り入れるなら、その人の身体の状態に合ったものを選んでください。無理にトレーニングを進めると、故障の原因となります。高齢者は、骨や筋などを痛めやすい特徴があるため、無理のない運動を進めることが大切です。どのような筋力トレーニングを取り入れたらいいのか迷う方向けに、体幹と下半身を鍛える方法を紹介します。それぞれ、筋力が低下していると感じる部位を選んで、取り入れてみてください。

筋力トレーニング(体幹を鍛える)

体幹とは、胴回りにある筋肉のことです。胴回りにある筋肉は、手足や腰回りなど全身の動きに関係してきます。体幹が弱ってくると、内蔵機能も低下しやすいため注意しましょう。高齢者が体幹トレーニングを取り入れて、歩く動作や姿勢を保つ筋肉を鍛えてみてください。体幹トレーニングの中でも、高齢者におすすめの方法を紹介します。

太もも上げトレーニング

仰向けになった状態で、太ももを上にあげるトレーニングです。普段の生活で骨盤周りの筋肉を使うことが少なく、衰えやすい部位です。太もも上げトレーニングで、「腸腰筋」と呼ばれる部位を鍛えることができます。仰向けになって、両膝を曲げましょう。そのままの姿勢で、息を吐きながら片足を上にあげていきます。このときはお腹に力を入れながら、お腹をへこますようなイメージです。足を上にあげるときは、足の付け根からあげるようにします。勢いで足をあげるのではなく、ゆっくりと骨盤周りの筋肉を意識しながらあげてください。足を下げるときに、息をゆっくり吐くようにします。この動作を両足で5~10回程度繰り返しましょう。

上体起こし

上体起こしは、お腹周りを鍛える体幹トレーニングです。腹筋運動とは異なり、上体を完全にあげきらないため、体に負担なく行えます。筋力が低下した人でも、無理なくトレーニングができます。仰向けに寝て、両膝を曲げましょう。両手を伸ばし、膝裏を触れるような気持ちで、上半身を持ち上げます。上半身を持ち上げるときは、息を止めないようゆっくりと行いましょう。「1・2・3」と声を出しながらやると、呼吸を止めずに済みます。持ち上げる速度は、3秒くらいです。上半身を持ち上げたら、今度は3秒かけてゆっくりと下していきます。下すときも、呼吸を止めないように数を声に出すのがおすすめです。

腰ひねりトレーニング

腰ひねりトレーニングは、座ったまま出来る体幹トレーニングです。高齢になると、腰をひねる筋力が低下していき、上半身の動きが悪くなります。少しずつトレーニングを続けることで、上半身の稼働を高めることができます。背筋を伸ばした状態で、椅子に腰かけます。そのまま息を吐きながら、腰を左右にひねっていきましょう。腰を中心に戻すときに息を吸いこみ、ねじるときにゆっくりと息を吐いていきます。骨がもろくなっている方や、腰の骨に異常がある方は、医師に相談してください。腰をねじるときは、痛みが出ない程度にしましょう。

筋力トレーニング(下半身を鍛える)

下半身の筋肉量が低下すると、つまづきやすく転倒の恐れがあります。歩行に必要な筋肉のため、介護予防として筋力トレーニングをしていきましょう。座ったままできる筋力トレーニングなら、転倒のリスクがなく安全にできます。筋力がなくなり運動に自信がない方でも、手軽に取り組むことができるでしょう。高齢者におすすめの、下半身を鍛える筋力トレーニングを3種類紹介します。

クッションはさみトレーニング

クッションはさみトレーニングは、太ももの内側を鍛えます。太ももの内側は、普段の生活で使うことが少ないため、トレーニングで鍛えていきましょう。筋力が低下すると、骨盤が不安定になり、腰痛や膝痛の原因になります。姿勢を正して椅子に腰かけます。太ももの間にクッションを挟みましょう。両足でクッションを押すようにしながら、3秒ほどキープさせます。3秒経ったら力を緩めて、同じ動きを10回行いましょう。トレーニングでは、1人用の椅子を用いるとバランスを取りやすくなります。両手で椅子の両端を抱えると、姿勢が安定しやすいでしょう。

膝伸ばしトレーニング

椅子に座ったまま、片足ずつ足を上げていくトレーニングです。膝周りの筋力トレーニングや、太ももの前側を鍛える方法としておすすめです。姿勢を正して椅子に腰かけます。1人用の椅子を用いて、両端を手で持つと、体を支えやすいでしょう。片足ずつ、ゆっくりと膝下を上にあげていきます。膝を伸ばし切った状態で、10秒くらいキープさせてください。片足を10回くらいトレーニングしたら、足を変えて反対側もやりましょう。筋力が弱い方は、自分の足だけを使ってトレーニングしてください。少し筋力がついてきたら、足に重りをつけて負荷を上げることもできます。

つま先立ちトレーニング

椅子に座ったまま、かかとを上げ下げするトレーニングです。立った状態でかかとを上げ下げすると、高齢者の場合ふらつきやすく注意が必要です。無理せず、椅子に座ったままトレーニングしましょう。姿勢を正して椅子に腰かけます。かかとを上げて、ふくらはぎの筋肉が刺激されているのを感じてください。筋肉の刺激がわかりにくいときは、少し前傾姿勢になり体重をかけるとわかりやすくなります。かかとを上げたら、3秒くらいキープさせます。3秒したらかかとを下して、10回くらいトレーニングしてください。足は両方を同時に上げ下げさせます。

定期的に運動しよう

高齢者が介護予防として筋力トレーニングをするなら、体幹と下半身のトレーニングがおすすめです。どちらも体を支えて、歩くときに必要になる筋肉です。筋肉量が少なくなってくると、転倒で怪我のリスクが高くなるため、鍛えていきましょう。まだそれほど体の不調が気にならない方でも、60歳以降は筋肉がどんどん低下していきます。介護予防のために、定期的に筋力トレーニングを取り入れて、何歳になっても自分の足で歩けるようにしてみてください。

小池 涼太
理学療法士

“理学療法士として維持期リハビリとして高齢者が住み慣れた地域でいつまでも生活できるようリハビリを提供してきた。
現在では高齢者の地域での生活を支えるだけでなく、生きがいを持った生活が送れるよう、QOLの向上を目指し、心を豊かにするリハビリを提供できるよう活動している。”