見学の流れと準備
希望する有料老人ホームが絞り込めたら、いよいよ見学してみましょう。一つの有料老人ホームに決めるのではなく、複数の施設を見学することが大切です。複数の施設を見学することで、比較しやすくなり一か所の見学では気づかない点も明らかになります。有料老人ホームの見学には予約が必要です。施設のホームページや電話で申し込んでください。可能であれば家族も一緒に見学しましょう。施設を見学できるだけでなく、定期的に訪問するときや有事の際に駆け付けるときの交通機関を確認することができます。
見学の当日まで
見学を予約したら、施設のパンフレットやホームページから得た情報をまとめておきます。見学時に見ておきたい場所があればメモしておきましょう。また施設のスタッフから直接話を聞くチャンスなので、質問や疑問点がある場合はそれも準備しておきます。疑問点や不明点があれば見学の時に全て質問しておくようにおすすめします。設備やスタッフの情報のほか、事故歴や退去者などのネガティブな情報も確認しておきましょう。可能であれば聞き忘れ、確認し忘れがないようにチェックシートを準備しておきます。何か所も回ると混乱してしまう可能性もあるので、チェックシートを比較の参考にしましょう。
当日
見学当日は施設の内部だけでなく周囲の環境や最寄り駅へのアクセスも確認しましょう。見学の時間帯はできるだけ人が多い時間帯を選ぶと、施設の雰囲気や活気がわかりやすくなります。また、予約の際にはどんな点を確認したいか伝えておくようにしてください。見学者が案内する場合も、案内される場所以外に見たいところがあれば伝えておきます。食事やレクリエーションなどは時間が決まっているので、確認したいポイントに合わせた時間帯に見学しましょう。見学したいポイントがいくつかある場合は、時間帯を変えて何度か見学するようにします。
見学後
見学が終わってからは、記憶が新しいうちに施設に受けた印象や気になった点をまとめておきます。見学のメモや写真は他の施設に見学に行く時の参考にもなるので、そのままにせずに整理しておきましょう。施設ごとに気に入った点とイマイチな点をまとめておくようにしてください。一度の見学では、わかる内容も限られています。気になる点がある場合は何度か見学して、可能であれば体験入居して不明点、疑問点を解消しておきましょう。
見学時に見ておきたいこと
見学するときにまず確認するのが設備や建物でしょう。第一に建物や設備類が清潔に保たれているかどうかを確認します。居室やトイレ、浴室、共有スペースなど見学するときには施設を一巡するので、間取りや備品類も合わせてみておきましょう。コールボタンはあるかどうか、備え付けの備品には何があって私物はどこまで持ち込めるかなど細部までチェックします。また安全面ではベッドやドアの形状でトラブル防止されているかを確認しましょう。転倒や衝突の際の配慮があるかどうか、手すりなどの補助設備も確認します。共有スペースや共有設備もどのようなものがあるかチェックしましょう。庭や日当たりをみるほか、外出困難な入居者にとってはバルコニーのように自然と接する環境があるかどうかも重要です。見学するときには、入居後の訪問も想定して駐車場の有無や施設の周辺情報も質問しておいてください。
見学時は「人」にも注目する
有料老人ホームを見るときには、建物や施設に目を奪われがちです。そこで働いているスタッフや入居している人の表情も大切な情報です。入居者の表情が元気で活気にあふれていれば、充実した生活を送っていることが想像できます。入居者の身なりが整っていない場合は、スタッフのケアが行き届いていないのかもしれません。入居してなじめそうかどうか、雰囲気や自立度もみるようにしてください。また入居者にどのようにスタッフが対応しているか、スタッフの質も確認しておきましょう。スタッフが入居者と触れ合うレクリエーションや介助の現場を見せてもらってください。入居者に無理をさせていないか、声掛けしているかをチェックします。時間帯を変えて見学すると、スタッフや入居者の表情も確認しやすくなるでしょう。
見学時に聞いておきたいこと
有料老人ホームはこれからの人生のメインとなる住まいです。見学時には必ず疑問点、不明点を残さないように質問しておきましょう。また入居者は自分の生活スタイルに合うかどうかという視点が重要です。その施設に住んで違和感なくなじむかどうか、生活している自分がイメージできるかどうか考えてみてください。見学の際には、生活のことに加えて、契約や予算に関する話もしておきましょう。料金プランなどもパンフレットにすべて記載してあるとは限らないので、必要になる費用とその内容、含まれているサービスと別料金になるものなどを確認します。あわせて希望する医療行為やリハビリ、医療職などがある場合は対応できるかどうかも確認してください。有料老人ホームの見学を何度かすると、それぞれのホームに一長一短があることがわかってきます。求める条件をすべて満たす施設を探すとなかなか決まらないこともあるでしょう。条件に優先順位をつけて、自分に合う施設を見つけてください。
こんな施設は要注意・要チェック
有料老人ホームのパンフレットや見学では、施設の全ての姿を確認することはできません。パンフレットや見学の時は、どうしても良い面を見せようとするものです。まず避けたほうが良いのが、ネガティブな面について隠そうとする施設です。良心的な施設であれば、施設の長所と短所両方について答えてくれます。過去のクレームやトラブルが起きたこと、過去にどのような理由で退去者が出たのかを話したがらない施設は誠実さに欠けて信用できません。また入居を決めるときには、どのような心身状況まで対応できるかあらかじめ確認してください。また注意していただきたいのが、施設長や責任者がスタッフに横柄だったり、どなっていたりする施設です。周囲や入居者への配慮ができない人は施設の人員として不安があります。また入居者がスタッフに笑顔を見せない、話しかけない施設も要注意です。良いサービスを受けていれば信頼して自然と笑顔や雑談が生まれるでしょう。しかし、入居者からの信頼や愛情が感じられない場合は、施設やスタッフの対応に満足していないことの現れです。有料老人ホームは、見学と比較検討を繰り返して本人と家族両方が納得したうえで契約しましょう。施設見学の時にすぐに契約するように言ったり、要望に対してなんでも「できます」と回答したりする施設は、経営状況が悪くて契約をせかしているのかもしれません。パンフレットやホームページが魅力的でもどうしても気に入らない、気になるところがあるという場合は他の施設を検討するようお勧めします。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。