2021.10.28

糖尿病とは?原因や症状、前兆、予防について説明|高齢者の病気 内分泌

最終更新日:2022.07.25
東海林 さおり
看護師

糖尿病は、血糖値が高い状態が続く病気です。高齢者が糖尿病になると、生活の質や免疫力が低下する恐れがあります。糖尿病は自覚症状がないまま進行するため、前兆を見極め、早期治療につなげることが大切です。今回は、糖尿病の原因や症状、合併症、前兆、予防法について解説します。

糖尿病とは?

看護師

糖尿病の原因は、インスリンというホルモンの働きに異常で起こる、内分泌系の疾患です。人は食事をすると、血液中に含まれるブドウ糖の数値である血糖値が上昇します。インスリンとは、血糖値の上昇に合わせ、すい臓から分泌されるホルモンのことです。体内の血糖値は、インスリンの働きにより一定に保たれています。しかし、糖尿病になりインスリンの分泌に異常が起こると、血糖値は高い状態を維持したままになります。血糖値の異常は血管障害を引き起こし、失明や腎不全へとつながることもあるのです。体内で起こるこれらの症状は自覚しづらく、糖尿病だと診断される頃には、症状が進行しているケースも多く見られます。

原因

糖尿病には「1型糖尿病」と「2型糖尿病」があり、それぞれ原因が異なります。「1型糖尿病」の原因は、何かしらの原因ですい臓のβ細胞が破壊され、インスリン分泌に異常が起こる病気です。原因不明の突発性のものもありますが、大部分が自己免疫性であり、若年層でも発症することが特徴です。糖尿病の90%を占め、高齢者の患者も多い「2型糖尿病」は、食生活や運動不足、肥満といった環境因子が原因となります。インスリンの分泌機能に関わる遺伝子異常が重なるほど、発症しやすいとも言われています。

糖尿病の症状

高齢者

糖尿病には、確かな自覚症状がないとされています。はっきりと異常を感じる頃には、かなり進行していることが多い病気です。本人の自覚症状がない間も、体内では多量なブドウ糖が血管を傷つけていきます。そのため、後述する合併症を引き起こす可能性が高まってしまうのです。また、糖尿病になると免疫力が低下するため、高齢者は特に注意が必要です。風邪が進行し重症化すると、命にかかわる恐れもあります。

糖尿病による合併症

医師

糖尿病の合併症は、「神経」「目」「腎臓」とさまざまな箇所に現れます。3大合併症と呼ばれる主な疾病について確認していきましょう。

糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害は、手足の神経に異常をきたす合併症です。足先や足裏、指先に痛みやしびれなどの症状が現れます。神経障害が進行すると、足先の痛みが慢性化したり、知覚が低下したりするケースもあります。足先の傷に気付かないまま細菌感染すると起こるのが、潰瘍(かいよう)や壊疽(えそ)です。潰瘍や壊疽が広範囲にわたると、足の切断が必要になります。そのため、糖尿病になった場合は足先の状態に十分な注意が必要です。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症は、進行すると失明の恐れがある合併症です。高血糖状態により起こる、網膜内の血管障害が要因となります。糖尿病性網膜症は確かな自覚症状がなく、物が見えづらくなったと感じたときには末期段階であるケースも少なくありません。早期に発見し治療をするためには、年に1回以上の眼底検査が必要となります。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、腎臓に起こる合併症です。腎症を併発すると、血液をろ過して老廃物を排泄する腎臓の役割が損なわれ、尿アルブミンや尿たんぱくが増加してしまいます。そのため、進行した腎症には、タンパク質量を制限した食事療法が行われます。最終的には、機械で血液をろ過する人工透析が必要です。

糖尿病の前兆の見極め

高齢者

前述したように、糖尿病は本人が自覚しにくい病気です。症状はゆっくり少しずつ現れるため、次のポイントに注意して前兆を見極めましょう。

前兆の見極めのポイント

糖尿病になると、高血糖状態の血液を薄めようと、血管に多くの水分が集まります。水分は最終的に多量な尿として排泄され、身体は脱水のような状態になるのです。そのため、糖尿病になると体に以下のような前兆が現れます。

● のどの渇きを感じやすくなる
● 尿量が増加する
● 尿が泡立ち、臭うようになる
● 食べているのに体重が減少する
● 疲労感が強くなる

これらの異変を感じた場合には、速やかな受診が必要です。医師の判断を仰ぎ、適切な治療を始めましょう。

糖尿病の予防

栄養士

生活習慣が原因のひとつである「2型糖尿病」は、食事や運動で予防することが可能です。運動をすればエネルギーの消費量があがり、糖分の代謝も早くなります。結果、血糖値の安定へとつながるのです。週に3回、1回あたり20~60分の継続した運動が糖尿病予防には効果的です。ウォーキングのような有酸素運動は、下肢筋力の強化にもつながります。転倒や事故に気を付けながら、できる範囲から始めてみましょう。また、糖尿病予防には、ストレスのないリラックスした環境が大切です。ストレスを感じたときに分泌されるアドレナリンは、血糖値を上げる恐れがあります。タバコやアルコールもストレス反応を引き起こすため、過度な摂取は控えるようにしましょう。

食事

糖尿病予防として医療機関でも指導されているのが、糖質を控えた食事です。炭水化物に含まれる糖質を摂取すると、体内の血糖値は上昇します。そのため、糖質量の多い米やパンを控え、高たんぱく低糖質な肉や魚、卵、豆腐などを意識的に摂取するのが良いとされています。また、糖尿病予防の食事に大切なのが食物繊維です。野菜や海藻に含まれる食物繊維には、血糖値の上昇を抑える作用があります。心がけておきたいのは、糖質を極端に控えたり、肉類だけを食べたりといった食事をしないことです。全体の栄養バランスに気を付けながら、健康的な食生活を目指しましょう。

糖尿病の治療

看護師

生活習慣が原因の「2型糖尿病」の場合、食事療法と運動療法が治療の基本となります。食事療法では、炭水化物50~60%、タンパク質20%、残りを脂質で補う比率がエネルギー量の目安です。加齢にともなう筋力低下を防ぐためにも、高齢者の食事には十分なタンパク質量が必要です。食物繊維やミネラルを豊富に含む、野菜類も積極的に摂取しましょう。ただし、腎障害が見られる場合には、タンパク質やカリウムの摂取は控えるようにします。運動療法は、インスリンの働きを促す有酸素運動が中心です。糖尿病を悪化させたり合併症に影響したりしないよう、運動は医師の指導のもと行います。食事や運動療法による生活改善の目安期間は、1~2か月です。それでも血糖値が十分に下がらない場合には、薬物療法やインスリン注射を検討することになります。

糖尿病についてよく理解しておこう

運動する夫婦

高齢者の糖尿病は、体の状態を見極めながら治療することが大切です。健康的な食事や運動を心がけることは、糖尿病だけでなく、加齢による筋力低下を予防する効果もあります。日々の健康状態に目を向けながら、糖尿病の早期発見と適切な治療につなげていきましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。