2021.06.07

介護保険を利用して購入できる入浴用品の種類と特徴

最終更新日:2023.11.09
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

介護保険の給付対象となるものには、介護サービス費用のほかに介護用品の購入費用も該当することはご存じでしょうか。介護用品は種目別に貸与と販売とに分かれており、他人が使用したものを再利用することに心理的な抵抗感を伴うもの、使用によってもとの形態や品質が変化し再利用できないものなどは、介護用品の販売種目として、その介護用品の購入費用を介護保険の給付対象としています。そこで今回は、介護保険の給付対象となる販売種目のひとつ入浴用品について、種類や選び方、給付額などをご紹介します。

入浴用品はどんな状態のときに使うべきか

介護保険 入浴用品

入浴用品は、要介護者の入浴を補助する目的として使用される介護用品です。介護保険の活用もできる入浴用品もあります。入浴には、身体を清潔に保つことはもちろん、精神的および肉体的な苦痛と、緊張を緩和させるなどの効果があります。しかし、身体機能が低下することで座位の保持や浴槽への出入りが困難になり、入浴を億劫に感じるようになります。また介護が必要になると、家族への負担が増えることに悩み、入浴を諦めてしまうケースもあります。要介護者が安心して入浴を楽しみ、生きる喜びを感じることができるよう、身体機能が低下したり介護が必要になった際には、入浴用品の使用の検討が必要です。

入浴用品はどんな悩みを解決することができるのか

介護保険 入浴用品

入浴用品を要介護者の自宅に導入することで、以下のような悩みを解決することができます。

解決できる悩み①浴槽への出入りが大変

自宅の浴槽が高い場合、浴槽への出入りに困難を抱える要介護者には大きな負担です。浴槽の外側や内側に据え付けて段差を解消する入浴補助用具を導入することで、腰や膝へかかる負担の悩みを解決できます。

解決できる悩み②介護者の身体的負担が大きい

要介護者の入浴を介助することは、介護者にとって身体的にも精神的にも負担が大きいです。特に中腰の姿勢で長時間介助をすることは、腰や膝に慢性的な痛みを抱えることにもつながります。要介護者の体に巻いてサポートする入浴用品を導入することで、介護者の負担の悩みを解決もできます。

解決できる悩み③浴室内で転倒しないか不安

浴室内に段差があるときは要介護者も介護者も転倒の不安を抱えます。入浴用品を導入することで段差を軽減し、安全に入浴時間を過ごせるように改善することができるでしょう。また、要介護者は浴槽内で滑ったり、浴槽の出入りで転倒したりする危険も抱えます。浴槽内で姿勢を支える入浴用品や、浴槽への出入りの際に要介護者の身体に巻いてサポートする用具を使用することで、浴室内事故の危険性を軽減することができるでしょう。

入浴用品を利用するメリット

介護保険 入浴用品

入浴用品を利用すると、以下のようなメリットを得られることがあります。

メリット①入浴時の介護負担を軽減できる

入浴の介助は、介護者にとって大きな負担です。特に介護者よりも体の大きい要介護者を介助する場合には、体力的にも重労働です。また、手を離したら要介護者がケガをするという責任感から、精神的な負担を感じることもあります。浴槽用手すりや浴槽内椅子、入浴台といった入浴用品を利用することで、要介護者が浴槽への出入りや浴槽内での姿勢の維持を安易に行えるとともに、介護者の身体的、精神的な負担を軽減できます。

メリット②浴室内事故でのリスクを軽減できる

浴室内は、段差が多く滑りやすいため、転倒しやすい場所です。すのこや入浴台といった入浴用品を利用することで、浴室内の段差を解消するとともに、滑りにくい環境を整えて転倒などの事故のリスクを軽減できます。

メリット③衛生的な状態を維持できる

入浴は、要介護者の清潔を保ち、心身ともにリフレッシュすることにつながります。要介護者の身体状況や浴室の環境に応じた入浴用品を利用することで、要介護者は安全で安心な入浴を楽しみ、生きる喜びを感じるとともに、いつでも衛生的な状態を維持できます。

入浴用品の種類と選び方

パナソニックエイジフリー「シャワーチェアユクリア ミドルSPワンタッチおりたたみN」PN-L41821

介護保険 入浴用品

浴室の洗い場で体を洗ったりシャワーを浴びたりする際に使用する椅子です。座面が大きく、椅子の足に滑り止めのゴムが付いているのが特徴で、背もたれやひじ掛けを備えたものもあり、安定した座位を確保できます。シャワーチェアの選び方は、浴室や浴槽の構造、入浴の方法や要介護者の希望などを考慮します。特に座位を保つことが困難な場合には、背もたれを備えたタイプを選びます。また座った際に要介護者の脚が浴室の床に着くよう調節することも重要です。

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アロン化成「バスボードはねあげくん」H-S/H-L

介護保険 入浴用品

浴槽の縁に設置して、使用する板のようなもので、バスボードとも呼ばれています。板に腰を下ろして浴槽への出入りを行うため、高く脚を上げなくても浴槽内に安全かつスムーズに出入りができます。筋力の弱くなった人や浴槽の縁をまたぐのが困難な人に便利です。入浴台の選び方は、要介護者が入浴台に体重をかけても破損しない強固な材質であるとともに、浴槽の縁も強固であること、さらに浴槽の幅に合った入浴台を選びます。また入浴台を設置した際に要介護者が安定した姿勢が確保できることも重要です。

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アロン化成「浴槽手すり」UST-130N

介護保険 入浴用品

浴槽の縁を挟み込んで固定してに設置し、浴槽へ出入りする際に掴まるための手すりです。手すりを設けることで浴槽をまたぐ動作が安定するため、元気な人から立位に不安を感じる人まで安全に立ち上がりが行えます。浴室用手すりの選び方は、要介護者が手すりを握った際に掴みやすい形状であるとともに、力を加えても破損しない強固な材質のものを選びます。また浴槽の縁の幅や材質によっては設置できなったり浴槽を傷つけてしまうこともあるので、浴槽に合ったものであることも重要です。

浴槽手すりについて詳しく見る

TOTOエムテック「浴室すのこ(カラリ床 )」EWB470

介護保険 入浴用品

浴室内の洗い場の床に敷くことで脱衣所と浴室内の段差を解消し、つまずきや転倒を防ぐためのものです。浴室内すのこの選び方は、滑りにくい材質でクッション性に優れたものを選びます。また浴室内で使用するため、腐りにくい樹脂製なものが便利です。

浴室すのこ(カラリ床)について詳しく見る

パナソニックエイジフリー「浴槽台 ユクリア 軽量コンパクト1826」PN-L11726

介護保険 入浴用品

浴槽内に椅子を設置することで、要介護者が浴槽内において容易に立ち座りを行うための椅子です。椅子の足や天板に滑り止めのゴムが付いているのが特徴で、浴槽をまたぐ際の踏み台としても使用できます。浴槽内椅子の選び方は、浴槽に入る形状やサイズの椅子を選びます。

浴槽台ユクリア軽量コンパクト1826について詳しく見る

入浴用品の費用

介護保険 入浴用品

入浴用品は、他人が使用したものを再利用することに心理的な抵抗感が伴うもの、使用によって元の形態や品質が変化し再利用できないもののため、介護保険を利用して購入できます。購入の際は償還払いと言って、いったん全額を支払った後、費用の9割(一定以上の所得がある場合8割または7割)が介護保険から払い戻されます。また同一年度で購入できるのは10万円までを限度と定めており、限度を超えた部分は全額自己負担となります。

価格の目安としては、シャワーチェアと浴槽内椅子は約10,000円~30,000円ですので、実質自己負担額は1,000円~3,000円です。浴室内すのこと浴槽内すのこは浴室や浴槽の大きさによって見積もり額が決まります。

入浴台は約20,000円~50,000円、浴槽用手すりは約20,000円~40,000円ですので、それぞれ実質自己負担額は2,000円~5,000円、2,000円~4,000円です。また入浴用介助ベルトは約10,000円ですので、実質自己負担額は1,000円です。

介護保険を利用して購入できる入浴用品について

介護保険 入浴用品

入浴用品を導入することでリスクを軽減し、要介護者も介護者も快適な生活を送ることができます。導入を検討する際は、ケアマネジャーと相談して、要介護者が暮らしやすくなるとともに、サポートする家族が介護しやすくなるような入浴用品を、介護保険を利用して購入しましょう。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。