2021.11.05

介護休業給付金とは?|実際の支給額や注意点について説明

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

介護により勤務継続が難しくなるときは、介護休業を取得して介護に専念することができます。介護休業を取得する際には「介護休業給付金」を受給できることがありますが、具体的にはどのような制度なのか、また、受給の条件や支給額について詳しく見ていきましょう。また、介護休業給付金の申請先や制度利用の注意点についても紹介します。

介護休業給付金とは

お金の計算

介護休業給付金とは、家族を介護する目的で休業を取得した場合に受給できる給付金です。雇用保険に加入しており、介護休業を取得する開始日までの2年間のうち、11日以上働いた月が12か月以上ある方が対象となります。介護休業給付金の受給が可能な場合には、賃金日額の67%を支給日数分受け取ることが可能です。例えば6月1日から7月31日まで介護休業を取得するケースならば支給日数は61日と計算できます。

介護休業中に給付される制度ではない

介護休業給付金の給付は休業終了後となります。また、受給には審査が必要のため、受給までにはやや時間がかかることにもご留意ください。通常は申請書を提出し、介護休業給付支給決定通知書を受け取って約1週間に指定した口座に給付金が振り込まれます。

介護休業給付金の給付条件

手帳

介護休業給付金を受給するためには、労働者と被介護者、介護日数・回数の3つにおいて条件を満たしていることが必要です。まず受給者は雇用保険に加入し、休業開始日までの2年間のうち、11日以上働いた月が12か月以上ある方で、なおかつ同じ事業主の元で1年以上継続して雇用されている方が対象になります。また、介護休業終了後に離職を予定している方は、受給の対象外です。対象家族となる被介護者は労働者の配偶者か父母、義父母、子、兄弟姉妹、祖父母、孫のいずれかで、2週間以上の常時介護が必要な状態の方です。1回の介護休業は3か月までで、被介護者1人に対して93日以内かつ3回以内と定められています。

介護休業とは

介護休業とは、対象となる家族を介護するために取得する休業のことです。介護休業は被介護者1人に対して最大93日かつ3回以内なので、数日だけあるいは数時間だけ介護のために仕事を休む際には介護休暇制度を利用することができるでしょう。介護休暇は介護が必要な家族が1人のときには5日分、介護が必要な家族が2人のときには10日分まで取得できます。給付金は受給できませんが、介護休業を最大限に活用するためにも、こまめに回数を消費しないように注意しましょう。

介護休業給付金の支給額

計算機

介護休業給付金としては、休業開始日時点の賃金日額の67%を支給日数倍した金額を受給できます。ただし、受給できる金額には上限と下限があるためご注意ください。

● 賃金日額を30倍した「賃金月額」が77,220円に満たないときは、賃金月額が77,220円として計算する
  例:賃金月額が60,000円で支給日数が60日の場合の介護休業給付金:77,220円×67%÷30×60=103,474円

● 賃金月額が502,200円を超えるときは、賃金月額が502,200円として計算する
  例:賃金月額が600,000円で支給日数が60日の場合の介護休業給付金:502,200円×67%÷30×60=672,948円

● 賃金月額が77,220円以上502,200円以下のときは、賃金月額・日額に基づいて計算する
  例:賃金月額が300,000円で支給日数が60日の場合の介護休業給付金:300,000円×67%÷30×60=402,000円

介護休業給付金の申請

資料を見る女性

介護休業給付金の申請書は介護休業終了日の翌日から2か月経過する日の末日までに提出し、その後、事業主が休業給付金取得のための申請手続きを行います。なお、事業主を通して申請手続きを行うことが原則ですが、労働者自身が希望する場合は、事業所を管轄するハローワークで手続きを行うことも可能です。

介護休業給付金を利用する際の注意点

面談する女性

介護休業給付金を利用する際には、いくつか注意点があります。受給手続きをスムーズに行うためにも、以下の3つのポイントにご留意ください。

休業1回ごとに申請手続きを行う

介護休業を2回以上取得する場合は、それぞれの休業期間が近いときでもまとめて手続きを行うことはできません。介護休業を取得する度に手続きを行い、正しく受給するようにしましょう。

受給可能な期間は被介護者1人あたり93日まで

介護休業給付金の受給可能な期間は、被介護者1人あたり93日までです。被介護者の要介護度や介護事由が変わった場合でも、受給可能な日数は変わりません。また、トータルで93日のため、介護が長引くと日数が不足する恐れがあります。家族と協力して、各自が時期をずらして介護休業を取得するなどの工夫をしましょう。

介護手当が支給される場合は給付金額が変わることがある

事業所によっては介護手当が支給されることがあるでしょう。介護手当と介護休業給付金の合計額が、賃金日額を支給日数倍した金額の80%を超える場合は介護休業給付金の金額が減額されることがあります。例えば60日間の介護休業を取得し、120,000円の介護手当を事業所から受け取ったとしましょう。賃金日額が10,000円のときは介護給付金受給額が402,000円のため、計算式どおりの方法で給付金を受給するならば介護休業期間中に全部で522,000円を受け取ることになります。しかし、522,000円は本来受給できたはずの賃金600,000円の87%にあたるため、介護休業給付金は全額受給できません。600,000円の80%に相当する金額から介護手当を差し引いた360,000円のみ受給します。

介護には家族の協力が必要不可欠

折り紙

介護に専念するためにも、経済的な不安を解消しておく必要があります。介護休業給付金制度について知り、受給額を概算しておくことで、ある程度は不安を解消することができるでしょう。介護が長引くときは家族と協力し、それぞれの介護休業を活用して介護にあたることができます。まずは家族で話し合い、どのように介護を続けていくか決めておきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。