2021.11.16

働きながら介護を考えている方へ|介護者から見た介護の流れ

最終更新日:2021.11.16
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

働きながら介護をするときには、介護保険サービスや地域のサービスを活用することが大切です。医療機関や福祉施設と連携することが、介護と仕事の両立につながるでしょう。今回は、介護者からみた介護の流れと、その都度心得ておきたい対応について解説していきます。

家族介護者から見た介護の流れ

介護

転倒事故や病気により、介護が必要な日はあるとき突然訪れます。まずは、家族介護者から見た介護が「支援期」「導入期」「安定期」「看取り期」へと移行することを把握しておきましょう。

介護支援期

介護支援期は、介護が必要になる前の段階です。いつかはと考えながらも、多くの人は具体的な対策をとっていないと考えられます。将来の介護に対する、漠然とした不安を感じる時期でもあるでしょう。

介護導入期

介護導入期は、突然介護が必要になってから介護を導入するまでの期間のことです。身内が入院した場合は、退院後の暮らしを考える時期にあたるでしょう。入院前より身体機能が衰えている場合には、退院後に在宅介護が必要です。介護者にとっては、突然やってきた介護に対する不安と戸惑いの多い時期ともいえます。

介護安定期

介護を導入してからしばらくたつと、介護安定期に入ります。仕事と介護を両立している場合は、介護疲れが出ることもあるでしょう。医療や福祉機関と連携がとれていないと、介護の負担を家族だけで抱えてしまい悩みが多くなるケースも考えられます。

終末期

終末期は、看取りを考える介護の最終段階です。在宅で家族を看取るときには、医療機関との連携を欠かすことはできません。施設や病院で家族を看取るときにも、どのようなケアや治療を続けていくのか、本人の意思を第一に検討する必要があります。

段階ごとの対応

手

家族の介護は、段階ごとに必要な対応が異なります。そのため、あらかじめ情報を整理しておくことが重要です。ここからは、各段階に合わせた対応を確認していきましょう。

介護支援期

介護が始まる前の支援期は、現状を把握することが大切です。前もって必要事項を調べておけば、将来の介護に対する負担を軽減できます。介護に対し、前向きに考えられるようになることもポイントです。

①生活状況をよく観察する

介護支援期は、将来介護が必要な家族の生活状況をよく観察します。既往歴や持病、服薬中の薬についても把握しておきましょう。これらを知っておけば、急に体調が悪くなったときにも医師や看護師に必要な情報をスムーズに提供できます。日常生活のリズムを把握しておけば、在宅介護が必要になったときにも介護サービスのイメージをつかみやすくなるでしょう。

介護導入期・介護安定期

導入期は、これからの介護生活に向けチームを作っていく時期です。また、安定期には医療や福祉の専門職と連携をはかり、そのつど正しい対応をとることが重要視されます。

②現在の状況を把握・整理する

導入期は、まずは現状を把握し必要な情報を整理します。介護される側の身体状況によって、必要とされる介護サービスは異なるからです。また、介護者側がどれほど介護できるのか、整理することも重要なポイントです。働きながら介護をするのであれば、心配なことや職場に相談が必要と思われることを書き出しておきましょう。

③介護プロジェクトチームを作る

家族の介護は、プロジェクトチームとして対応する必要があります。家族や親族を交え、誰がどのくらいサポートできるのかを話し合っておきましょう。突然訪れた介護に対応しようと、流れに任せてひとりに負担がかかるのは最善ではありません。無理を重ねると、介護疲れの原因となり得ます。金銭的な問題も含め、それぞれが納得したうえで介護を始めることが大切です。

④適切な住環境を選択・整備

家族の身体状況が大きく変化しているときは、住環境を見直す必要があります。玄関口の段差をなくしたり、浴室に手すりを付けたりするのもひとつの方法です。住環境を整備する際は、医療関係者のほか、福祉用具のアドバイスをする「福祉住環境コーディネーター」が心強い味方となります。介護される側の、安心安全な生活を実現することが可能です。適切な住環境は家族の介護負担も軽減するため、導入期の間に整えておきましょう。

⑤介護保険制度を理解し、サービス内容を知る

介護保険制度は、高齢者の介護を社会で支え合うための公的な保険制度です。65歳以上で介護を必要とする人や、40歳から64歳で、特定疾患により介護が必要な人が利用できます。介護保険サービスを利用するためには、要介護認定による介護度の判定が必要です。認定度は、要支援1または2から、要介護1から5までの7段階です。利用できるサービスの内容は、介護が必要とされる度合いによって異なります。例えば、訪問介護員がサービスを提供する訪問介護は、要介護度1からが利用対象です。そのため、要支援に認定された場合は利用できません。今後の介護方法を検討するためにも、各サービス内容はあらかじめ確認しておきましょう。

⑥信頼できるケアマネージャーを選び、ケアプランを作成する

介護サービスを利用するためには、サービス計画書と呼ばれるケアプランの作成が必要です。要支援認定された場合、ケアプラン作成の相談先は地域包括支援センターになります。要介護認定された場合は、ケアマネージャー(介護支援専門員)のいる事業所に作成を依頼しましょう。ケアプランは、一度作成しても介護者や本人の身体状況に応じて作り変えられます。ケアマネージャーとは連携が欠かせないため、信頼できる人を選ぶことが大切です。

⑦介護保険以外の民間・公的サービスなどの活用

介護に利用できるサービスは、介護保険サービスだけではありません。民間企業が運営するものや、公的な介護保険外サービスもあります。これらのサービスは、介護保険サービスだけでは補いきれない部分をサポートするものです。例えば、介護保険を使う訪問介護サービスでは、趣味のための外出介助や、同居家族のための洗濯や調理はできません。民間の介護サービスであれば、必要に応じたサービスを利用できます。市区町村が実施する公的なサービスには、一人暮らしの高齢者の見回りを兼ねた配食サービスや、生活援助サービスなどがあります。

⑧「ワーク・ライフ・ケア・バランス」を整える

「ワーク・ライフ・ケア・バランス」は、介護と仕事の両立を意味する言葉です。働きながら介護をする場合は、安定期に向け双方のバランスを整える必要があります。平成29年度の調査によると、介護をしている人は約627万人にのぼるとされています。そのうち、仕事をしながら介護をする人は半数近くの約346万人です。特に、近年は介護をしながら働く女性の割合が上昇傾向にあります。介護をしながら仕事を続けることは、体力的にも精神的にも簡単なことではありません。介護と仕事の両立のために設けられているのが、介護休業制度です。家族1人につき3回、通算93日まで休業できるため、会社と相談しながら介護体制を整えていきましょう。
【参考】総務省統計局「平成29年就業構造基本調査」

終末期

介護の先には、看取りを迎える終末期がやってきます。平成29年度の調査によると、病院で看取りを迎える人は全体の80%以上です。また、60%以上の人が自宅で最期まで療養したいと考える一方、実際には実現不可能であるとも回答しています。家族の介護の終末期は、多くが病院でのケアが中心になると考えられます。近年は高齢者施設での看取りケアも充実してきていますが、その際も医療機関との連携が必須です。本人の意思を尊重しながら、家族が納得いく最期を迎えられるように相談を重ねる必要があります。
【参考】厚生労働省「看取り参考資料」

もしもに備えて、家族の介護について考えよう

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いつかはと考える家族の介護は、その多くがある日突然必要になります。いざというときに慌てないためにも、早い段階で流れをつかんでおくことが大切です。家族が健康なうちに、希望する介護生活について話しておくのも良いですね。介護が始まってもひとりで抱え込むのではなく、周囲とひとつのチームになりながら、そのつど最善の方法を検討していきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。