2021.10.13

認知症の人のイライラが消える接し方

最終更新日:2021.10.13

認知症患者である前に一人の人間である

黄色の花

認知症は、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態です。話が伝わらなかったり、会話ができなかったりする姿を見ると、どうしても1人の人というより「認知症を患ってしまった方」と捉えてしまうかもしれません。しかし、認知症の人と接するためには一人の人間であるということを理解し、どのように心に寄り添えばいいのか考えなければいけません。どのように接していくことが大切なのか紹介します。

個々が大切にしていることに目を向ける

目の前にいる人を、認知症患者とだけ認識してしまうとそれぞれの価値観や考え方の違いに気づけません。認知症になってもそれぞれ個々に大切にしていることがあり、一人ひとり得意なことや苦手なことがあります。表に現れている症状だけでなく、その根底にどのような気持ちがあるのかを知ることで、一人ひとりに合った対処法を見つけることができるでしょう。

少しのリスクも時には必要

認知症になったと聞くと、日常生活すべてに支障があるものと思い込む人は少なくありません。しかし、認知症の進行や、個人差によって可能なことは違います。基本的に介護現場ではリスク回避が優先されています。しかし、必ずしもリスクを回避すれば要介護者(認知症の方々)が快適に過ごせるわけではありません。家から全くでなければ転倒やトラブル、事故からは守ることはできます。しかし、リスクを避けるあまりに本人ができることをやめさせてしまえば、認知機能の低下が進んで症状が悪化することもあります。本人ができることや、やりたいという意欲があるものに関しては、ある程度のリスクを取ってもさせてあげる事をおすすめします。例えば、買い物はさまざまな商品が並ぶスーパーや商店街は歩いているだけでも楽しめます。ワクワクすることによって脳のさまざまな部分が活性化します。また、外出すると気温や匂いなど五感も刺激されるでしょう。買い物ができれば家族の役に立ち、人に喜ばれる嬉しさ、意欲、自信を育むきっかけにもなります。

介護者と利用者の対等な関係づくり

介護者は利用者にとって頼れるパートナーです。しかし、介護者が言っていることが正しい、こうであるべきだという考えは必ずしも正しいわけではありません。ただ相手の言うことを受け入れるだけでは、コミュニケーションは一方通行です。要介護者が自分の意見を周りの家族や介護職員に伝えるためには、気になることや怖いもの、不安を口に出せる雰囲気が大切です。十分に信頼関係を築いて、お互いに腹を割って話せるようになることが目標です。

介護者の都合ばかり優先しない

普段生活していれば用事を抱えていたり、時間に追われていたりすることもあるでしょう。「あまり介護に手間がかかっては困る」というのも、介護者の本音です。しかし、「困る」という介護者の都合だけで、ケアを決めてしまうことは避けるようにしてください。介護の現場でやり方が決まっているものには理由があります。例えば、他の作業があるからと、食事介助の時間に次々に食事を口に押し込んでいけば、嚥下困難でトラブルに発展するかもしれません。介護者の都合ばかりを優先せずに、その介助をなぜ行うのか考えて行動するということが、安全かつ適切に介護を行うためには不可欠です。

日頃の人間関係の大切さ

食事‗介護

認知症のケアは介護者と介護利用者の関係作りからスタートします。認知症の人は、症状に対する不安や周囲への恐怖を抱えています。親子であっても、年が離れていても自分の弱い姿は人に見られたくないと感じるのが自然です。人間関係が良くないと、素直に助けを求められず、より孤独になってしまうでしょう。どうしても介護者と介護を受ける側には上下関係が生じてしまうことがあります。また、一生懸命に介護に取り組む人ほど、思ったように上手くいかなくて、要介護者につらく当たってしまうこともあるでしょう。大切なのは、介護を受ける人、認知症の人の心に寄り添って、同じ目線に立つことです。生活や人生をより楽しむために、パートナーとしてサポートできる存在が理想です。

家族以上に本人が悩み苦しんでいる

顔を隠す女性

認知症は周囲の人間はもちろん、認知症と診断された本人も辛い思いをしています。思考力や判断力が低下すれば、自分がどうしてここにいるのか、目の前にいるのが誰なのかわからない状態になり緊張や恐怖を抱えてしまうことがあります。「いつ帰れるの?」「迎えはまだ?」といった言葉は不安や恐怖の現れです。そのような場合は、まずは否定をしないことがポイントです。相手の言うことや気持ちを受け止めて、共感してください。

一瞬一瞬を大切に生きるために今できること

ストレッチをする女性

80代や90代の要介護者にとって、日々の生活はとても貴重な時間となります。また、年だからとやりたいことを諦めてしまうと、後から「あれがしてみたかった」、「こうしておきたかった」という気持ちが強く出てしまうこともあるでしょう。もちろん、健康上、身体的な制限から完全にかなえられないこともあります。しかし、無理だからと要求を突っぱねてしまうと、後悔や残念な気持ちだけが残ってしまいます。可能な限り気持ちに寄り添って、できる範囲のことをするようにしてください。

問題行動と見えて、問題ではないこともある

介護

認知症の人々の気持ちは、認知症ではない要介護者に比べると、読み取りにくいと感じる部分が多くあります。そのため、どうしても気持ちがわからないと一歩引いてしまうこともあるでしょう。徘徊をしたり暴言を吐いたりなど、問題行動ととらえられがちな行動をするケースがありますが、表に出ている行動の根底には何らかの理由があります。考えや気持ちを踏まえたうえで、どのような言葉や対応を欲しているのか考えてみましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者
多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。