2021.11.06

夜間の介護をサポートする|夜間対応型訪問介護とは?

最終更新日:2021.11.06
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

夜間対応型訪問介護とは

住宅街

要介護者のいる家族にとって、夜間の介護は心身ともに大きな負担です。夜間対応型訪問介護は、夜間における要介護者の生活をサポートし、家族を含む支援者たちの負担も軽減できるサービスです。

夜間対応型訪問介護の概要

介護の資格を有するスタッフが、夜間に訪問して介護のサポートをしてくれるサービスです。深夜22時から早朝6時までの時間帯も含めてサービスを提供しているところが多いですが、実際には事業所単位で対応時間が異なります。提供しているサービスは、大きく3つにわけられます。あらかじめ決めた時間帯に巡回を行う定期巡回サービスや、通報に応じてスタッフが駆けつける随時訪問サービス、通報があったときにオペレーターが対応するオペレーションサービスなどです。

対象者は要介護1以上

夜間対応型訪問介護を受けるには、要介護認定を受けなければなりません。要介護認定は1~5までの区分がありますが、1~5のいずれかに認定されている方はサービスを利用できます。また、サービスを受けようとする事業者と同じ地域に暮らしている方の利用が可能です。要介護認定には、要支援1~2の区分もありますが、これらはサービスの対象外です。また、有料老人ホームやグループホームなどに入所している方は、夜間対応型訪問介護を受けられません。

サービスの内容

家

夜間対応型訪問介護には、定期巡回や随時訪問、オペレーションサービスなどがあります。ここでは、夜間対応型訪問介護で代表的な、定期巡回と随時訪問の2サービスについて解説します。

定期巡回

あらかじめ決めた時間に、サービス事業所のスタッフが利用者の自宅を訪問し、介護のサポートを行います。毎回決まった時間に、介護職員が訪れることが特徴です。訪問時の滞在時間は事業者や受けるサービスにより異なりますが、だいたい30分前後となることがほとんどです。定期巡回では、利用者の排泄介護や入浴介助など、さまざまなサービスを行います。また、健康面のチェックや安否確認などを行うケースも少なくありません。利用者本人の希望はもちろん、支援する家族、介護者などのニーズにマッチしたサービスを提供しています。なお、夜間は夜22時~早朝6時までを含んでいますが、対応できる時間は各事業所に委ねられています。

通報による対応(随時訪問)

決まった時間に介護スタッフが利用者の自宅を訪問するのではなく、通報により必要に応じて訪問するサービスです。設定している時間内なら回数の上限なく利用できますが、その都度費用が発生することがほとんどのため注意が必要です。随時訪問の利用シーンは、主に夜の時間帯に困ったことが起きたときです。たとえば、突然体調が悪くなった、ベッドから落ちて動けなくなった、といったケースが考えられます。随時訪問サービスに似たものに、オペレーションサービスがありますが、こちらも通報によりサービスを受けられます。電話で対応できることならオペレーターがアドバイスをし、必要に応じて介護職員を自宅に派遣します。

利用料の区分

植物

夜間対応型訪問介護の利用料金は、サービスを提供する事業者がオペレーションセンターを設置しているかどうかで変化します。オペレーションセンターを設置している事業所の場合、月額基本料金に利用した回数に応じた料金が加算されます。オペレーションセンターを設置していない事業所を利用するときは、定額料金で利用できます。定額ではあるものの、オペレーションセンター設置事業所の基本料金の倍額以上の料金設定であることもあるため、注意が必要です。

実際の利用料の目安

オペレーションセンター設置事業所で、自己負担額が1割のケースでは、以下のような計算式で料金を算出します。

月額基本料金+利用回数ごとの料金

月額基本料金は標準値で1,000円前後で、定期巡回は1回380円前後です。たとえば、定期巡回サービスを月に5回利用したのなら、1,000円+(380×5)=2,900円が利用料金です。オペレーションセンター未設置事業所の場合は、定額2,800円前後でサービスを利用できます。いずれにせよ、地域や事業所などによりやや費用が変わるため注意が必要です。

夜間対応型訪問介護のメリット

家

介護資格を有する専門スタッフが、定期的に巡回してくれるため安心感が得られます。介護者の夜間における負担も軽減されるでしょう。トラブル時や緊急時にも柔軟な対応をしてもらえるのもメリットです。

定期的な巡回による安心感

あらかじめ決めた時間帯にスタッフが訪問してくれるため、利用者はもちろん介護者の家族も安心です。毎回同じ時間に訪れてくれるため、利用者の安否確認が可能になるのも魅力的なポイントです。独居の要介護者にとって、毎回決まった時間に誰かが訪問してくれるのは心強いものではないでしょうか。その都度生活に関する相談もでき、より質の高い生活を実現できます。トラブルにも柔軟に対応してもらえる。基本的に、ほとんどの夜間対応型訪問介護事業所では、利用者やその家族からの要望に対し柔軟な対応をしています。ニーズにマッチしたサービスを提供したいと考える事業所が多いからです。オペレーションセンターのある事業所なら、通報してすぐに相談できるため、要介護者の不安も取り除けます。困ったことが起きたとき、不慮の事態が発生したときなども対応してもらえるのは、利用者にとって大きなメリットといえるでしょう。

緊急時の通報が可能

夜間にトイレや浴室で転倒してケガをした、ベッドから落ちて動けなくなった、といったケースは珍しくありません。このような緊急時にも、ケアコール端末で通報すれば状況に応じた対応をしてもらえます。夜22時から朝6時までの時間帯にも対応しているため、真夜中に不慮の事態が発生したときでも安心です。

こんな方におすすめ

一人暮らしをしている要介護者の方に、夜間対応型訪問介護はおすすめです。一人暮らしでは、ケガや病気などで動けなくなったまま、誰にも発見されないおそれがあります。助けを呼ぶこともできぬまま、命を落としてしまうことも考えられます。夜間対応型訪問介護の定期巡回を利用すれば、決まった時間にスタッフが訪れてくれるため、誰にも発見されないことはありません。離れて暮らす家族も、夜間対応型訪問介護なら安心です。定期的に人が訪れ安否確認をしてくれるからです。老老介護をしているケースや、家族への介護負担が大きい場合にも夜間対応型訪問介護はおすすめです。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。