2021.12.10

高血圧を改善するための運動療法|運動の種類や頻度、注意点について解説

最終更新日:2021.12.10
東海林 さおり
看護師

運動療法とは

高血圧治療で運動療法は有効な手段の一つです。運動をすることで血圧は一時的に上昇しますが、運動後は血圧が下がる傾向にあります。適度な運動を続けていくことで筋肉に酸素や栄養を運ぶために血管が広がり、交感神経の緊張を緩和させ、血圧が下がっていきます。また、高血圧の方の中には糖尿病、肥満、脂質異常症の方も多いので、体内のインスリンの働きを改善するためにも運動は有効な手段です。適度な運動は高血圧だけでなく生活習慣病と言われる方にとっては重要な治療法の一つです。

高血圧改善に役立つ運動の種類と頻度

では、具体的にどんな運動をどんな頻度でやっていったらいいのかを解説していきます。一般的には1週間に3回以上、トータルで1000~1500kcal程度消費する運動をするのが良いとされています。運動の種類はなんでもかまいませんが、ウォーキングやスイミング、ジョギング、サイクリングなど無理なく続けられる運動をすることが大切です。その他にも運動の時間だけでなく、通勤のための駅を一つ前で降り歩くことや、オフィスでは階段を使うなど、生活の中で出来る運動があるので組み込んでいくとより効果的です。

屋外で行う運動療法

野外で行う運動療法

運動不足の方が最も始めやすいのはウォーキングです。なぜウォーキングが始めやすいのかというと、無理がないからです。いきなり強度の高い運動を続けるのは肉体的にも精神的にも負担が大きいです。歩くという日常の動作を運動として習慣にしていくことが導入として取り組みやすいと言えます。また、ウォーキングは「ながら」や「ついで」ができるのもよいところです。なかなか運動する時間が取れない人も、スーパーに歩いて行ってみる、好きな音楽を聴きながら歩くなど日常に取り入れやすいのもいいところです。週に1回数キロ歩くというよりは、毎日少しずつでも歩く習慣をつけることが大切です。膝に負担が大きい方はプールでのウォーキングがおススメです。負担が少ないのに水の抵抗があって消費カロリーが多くなるというメリットもあります。更に慣れてきたらスロージョギングもおススメです。スロージョギングは高齢の方や、普段から運動をしない方でも無理なく続けられる運動で、お尻や太ももといった大きな筋肉を使うため消費するエネルギーはウォーキングの2倍にもなります。また、20分以上続けることで内臓脂肪を減らすのにも有効です。

室内で行う運動療法

室内で行う運動療法

家を空けるのが難しかったり、雨が降っていて外で運動ができないという時にもできる運動をご紹介します。
1つ目は「腕振りステップ運動」です。これはゆっくり足踏みする運動です。やり方としては足を肩幅くらいに広げ、右腕を水平に上げ、同時に左腿も水平に上げ1秒キープ。左右を入れ替え1秒キープ。これを左右交互に繰り返していく運動です。自然に呼吸をしながら行うことで有酸素運動になり血流をよくすることができます。
2つ目は「ストレッチ」です。ストレッチも家の中で出来る簡単な運動の一つです。ストレッチによって血流が良くなり、血管が拡張し血圧を下げる効果が期待できます。定期的に行うことで動脈硬化の予防にもなるでしょう。

では、どこをストレッチすればいいのか。おススメは膝と首です。ストレッチと言えば前屈したり開脚したりという動作を思い浮かべるかと思いますが、血圧を下げるということを考えるとこの2カ所が効果的です。膝関節を動かすことによって、自ずと足の大きな筋肉を動かすことができます。また、首の凝りをほぐすストレッチを行うことで血流を良くし、血圧調節中枢のある延髄の血液循環が良くなるため、血圧を下げる効果が期待できます。どちらも家でTVを見ながらできるような簡単な動きで無理なく続けることができる運動です。室内で行う運動として筋トレを想像した方も多いのではないでしょうか。高血圧に降圧効果が期待できる運動としては血管が拡張して血流が良くよくなるため有酸素運動が推奨されています。筋トレは無酸素運動に分類されます。無酸素運動とは瞬発的に筋肉の大きな力を出す時に糖をエネルギー源とすることから無酸素と呼ばれています。高血圧の方は無酸素運動によって急激に血圧が上昇することから脳卒中や心筋梗塞を誘発する危険があります。そのため、ハードな筋トレは避けた方が良いと言えます。

自分に合った運動強度とは

心拍数

ハードな運動は危険性があり、それでも運動をする必要がある高血圧の方はいったいどれくらいの運動強度が適切なのでしょうか。運動強度は皆同じではなく、自分に合った強度を計算することができます。
計算の仕方は以下の通りです。
適切な運動強度(脈拍数/分)=138―年齢/2
例:50歳の場合 138-(50÷2)=113回/分

運動強度が高くなってきたと思ったら一旦立ち止まり脈拍を測りましょう。時計の秒針と指でのカウントは面倒で不正確になりがちなので、スマートウォッチなどのウェアラブル端末を使うことをおススメします。脈拍だけでなく、歩数や運動時間、血中酸素濃度まで測れ、スマートフォンのアプリで記録までできるため活用していくと管理しやすくなります。

運動療法に注意が必要な人

関節が痛い女性

高血圧の方は運動療法をすることで高血圧が改善されるため、どの方にもおススメできるかというと一概にそう答えるのは難しい部分があります。運動が効果的な方もいれば、逆に危険を招く方もいるからです。

重度の高血圧の人

180/100ミリ以上の高血圧の方は運動によって上昇する血圧によって脳卒中や心筋梗塞などの発作を引き起こす危険性があります。場合によっては運動を禁止することもあります。特に、瞬発的に動く短距離走やハードな筋トレは安静時に比べ100ミリ近く上昇することもあるため注意が必要です。

合併症がある人

合併症(糖尿病、慢性腎臓病、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、不整脈など)がある方は運動によって病状が悪化する場合があるため、運動をする際は事前に医師と相談することが必要です。

その他

関節痛がある方が無理に運動をすることで逆に悪化する可能性があります。運動を習慣化することは大切ですが、体調が悪い時に運動するのは逆効果なので控える必要があります。

運動習慣を身につけて、血圧を下げよう

運動習慣

高血圧の方だけに関わらず、適度な運動を習慣的に行うことは健康維持に大変有効です。しかし、いままでやっていなかったことを習慣にするのは簡単なことではありません。自分の生活にどのように取り入れ、どれくらいの強度で行うと無理なく続けられるのか設計することも大切です。また、具体的な目標などがあると更にモチベーションアップになるので設定してみるのもおススメです。

東海林 さおり
看護師
看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。