2022.03.22

福祉用具のレンタル前に知っておこう|スロープやリフトでのヒヤリハット

最終更新日:2022.08.18
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

スロープやリフトは福祉用具では非常に重要なものであり、特に足の不自由な方や、車いすの方にとっては効果的なものです。しかし、使い方を誤れば事故が起きてしまいます。ここでは、スロープやリフトについてのリスク、福祉用具におけるヒヤリハット事例などについてご紹介していきます。スロープやリフトを検討している方は参考にしてください。

福祉用具によるヒヤリハットとは

福祉用具によるヒヤリハット

皆さんは、「ヒヤリハット」をご存知でしょうか。ヒヤリハットとは、仕事などで「危ない!」「もう少しでケガをするところだった」といった、危険なことが起こったけれど幸い災害や事故に至らなかった事例や事象のことです。ヒヤリハットを解説する際、よく「ハインリッヒの法則」という言葉が出てきます。

ハインリッヒの法則とは、ハインリッヒというアメリカの技師が労災事故を調査していく中で導き出した法則で、1件の重傷事故が起こるまでには29件の軽い事故があり、さらに300件のヒヤリハットが隠されているというものです。また同時に、事故を防ぐには1件の事故だけを調査しても防ぐことはできないということです。

この法則を福祉用具に当てはめると、スロープが外れて車椅子ごと要介護者が倒れそうになったりリフトでつりあげた要介護者の身体が壁に衝突したりなど、さまざまな事故が起きてしまう危険があります。

スロープによるヒヤリハット事例

スロープについて、ヒヤリハット事例を交えて解説します。スロープには、車椅子の車輪をスロープに合わせる必要がなく安心してスロープ上を走行できる一枚板型、軽量で一人でも簡単に設置できるレール型などがあります。

では実際に、スロープで起こるヒヤリハットにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な事例としては、スロープで移動する際に車椅子から落下しそうになったり、介護者が要介護者をスロープで下ろす際に転倒しそうになったりすることがあります。

事例1.スロープに衝突し、車椅子から投げ出されそうになった

一枚板型のスロープを勢いよく上がろうとした際、車椅子のフットサポートがスロープに当たり、そのはずみで乗っていた要介護者が車椅子から投げ出されそうになることがあります。起きる原因としては、急勾配の場所にスロープを設置し移動介助を行ったことです。このようなことが起こらないためには、緩やかな勾配などゆっくりとしたスピードで上がれる場所にスロープを設置し移動介助を行うこと、一人ではなく二人で移動介助を行うことが必要です。

事例2.車椅子の要介護者をスロープで下す際、階段でつまずいた

玄関前の階段にレール型のスロープを渡して、後ろ向きで要介護者の乗った車椅子を下ろそうとした際、介護者が階段につまずきそうになることがあります。起きる原因としては、介護者の足場が悪くなる2本1組のレール型スロープを使用して移動介助を行ったことです。このようなことが起こらないためには、車椅子を後ろ向きで移動介助する際は、車椅子の車輪をスロープに合わせる必要がなく安全にスロープ上を走行できる一枚板型のスロープを使用することが必要です。

リフトによるヒヤリハット事例

次に、リフトについて、ヒヤリハット事例を交えて解説します。リフトには、要介護者を持ち上げ床面を自由に動かして他の場所に移動や移乗ができるキャスターが付いた床走行式つりぐ付きリフト、リモコンを押すだけの簡単操作で車椅子をプラットホーム上にそのまま固定して乗車ができる福祉車両の昇降リフトなどがあります。

では実際に、リフトで起こるヒヤリハットにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な事例としては、リフトのハンガーを下降しすぎて身体にぶつけたり、福祉車両の昇降リフトから車椅子が転落したりすることがあります。

事例1.リフトのハンガーに頭をぶつけてしまった

寝たきりの要介護者を移乗する際、床走行式つりぐ付きリフトのハンガーが頭にぶつかってしまうことがあります。起きる原因としては、介護者がリフトのハンガーを下降させることに集中しすぎてしまい、要介護者の身体の位置を確認していなかったことです。このようなことが起こらないためには、要介護者の身体の位置を十分に確認してからハンガーを下降させること、一人は操作でもう一人は安全確認と2人1組で移動介助を行うことが必要です。

事例2.リフトでつり上げている際、落ちそうになってしまった

小柄でやせ気味の要介護者を、床走行式つりぐ付きリフトでつりあげている際、介護者も不慣れだったこともあり、要介護者がリフトから落ちそうになることがあります。起きる原因としては、リフトのハンガーが要介護者の身体を確実に支えきれていないこと、介護者がリフトの操作方法を理解していないことです。このようなことが起こらないためには、要介護者をリフトのハンガーに確実に固定されているか最低2回以上は確認すること、介護者がリフトの使用体験を行い要介護者の気持ちを理解すること、一人ではなく二人以上で移乗介助を行うことが必要です

事例3.車両リフトから車椅子が転落しそうになった

福祉車両のリフトに車椅子を載せた後、介護者が操作機に気をとられていたら、車椅子が後方に移動して転落しそうになることがあります。起きる原因としては、車内で車椅子が動かないようベルトなどで固定していなかったことです。このようなことが起こらないためには、福祉車両のリフトに車椅子を載せた後に、ベルトなどを使用して確実に車椅子が固定できたかを最低2回以上確認すること、介護者は操作機だけでなく車両全体に気を配ること、福祉車両のリフトに車椅子ではなく人間を乗せたと意識することが必要です。

介助する際は慎重に行おう

車椅子の女性を介助するヘルパー

今回は、福祉用具をレンタル前に知っておきたい、スロープやリフトでのヒヤリハットについて、起きる原因や防止策を交えてご紹介しました。スロープやリフトは、足に負担を抱えている人や車椅子を利用している人にとって、とても役に立つ福祉用具です。スロープやリフトをレンタルする際は、要介護者はもちろんのこと介護者においても、スロープやリフトを使用する前に起こる危険を把握するとともに、起こらないために何ができるかを話し合って対策することが重要です。

また併せて、スロープやリフトを管理する福祉用具専門相談員が、レンタル品に不具合がないか適切に使用されているかを、定期的に点検し指導することも必要です。スロープやリフトの持つ特徴を理解して安全に活用し、要介護者の活動を広げるとともに介護者の負担も軽減しましょう。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。