2022.03.17

福祉用具のレンタル前に知っておこう!介護ベッドや車椅子でのヒヤリハット

最終更新日:2022.08.18
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具によるヒヤリハットとは

車椅子

皆さんは、「ヒヤリハット」をご存知でしょうか。ヒヤリハットとは、仕事などで「危ない!」「もう少しでケガをするところだった」といった、危険なことが起こったけれど幸い災害や事故に至らなかった事例や事象のことです。

ヒヤリハットを解説する際、よく「ハインリッヒの法則」という言葉が出てきます。ハインリッヒの法則とは、ハインリッヒというアメリカの技師が労災事故を調査していく中で導き出した法則で、1件の重傷事故が起こるまでには29件の軽い事故があり、さらに300件のヒヤリハットが隠れているというものです。また同時に、事故を防ぐためには1件の事故だけを調査しても防ぐことはできないということです。

この法則を福祉用具に当てはめると、ベッドの柵で手や足を挟んでケガをしたり、また車椅子が勝手に前進して周囲の人に衝突したりなど、さまざまな事故が起きてしまう危険があります。

介護用ベッドによるヒヤリハット事例

介護ベッド

介護用ベッドについて、ヒヤリハット事例を交え解説します。介護用ベッドとは、ベッドの周囲に柵や手すりのほか、ベッドの高さ調整をはじめ背上げや脚上げなどの機能が付いているベッドです。柵や手すり、背上げや脚上げといった機能が付いていることで、要介護状態であっても自力で座位や起き上がり、立位や車椅子への移乗などが行いやすいとともに、介護者の身体の負担を軽減できます。

では実際に、介護用ベッドで起こるヒヤリハットにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な事例としては、背上げの際に要介護者の手を巻き込みそうになったり、ベッドの操作を間違えてベッドが上がってしまったり、寝位置がずれてしまったり、ベッドの脚上げの際、ベッド用のテーブルが外れたりなどがあります。

事例1.背上げの際に要介護者の手を巻き込みそうになる

介護者がベッド上で食事介助をするために介護用ベッドの背上げを行った際、要介護者の手が柵の間に巻き込みそうになることがあります。起きる原因としては、介護者がベッド周辺の状況や要介護者の身体の位置を把握していないことです。このようなことが起こらないためには、介護者は、スイッチ操作の前に要介護者の身体の位置を確認すること、ベッドの下や柵など、ベッド周辺を十分にチェックすることが必要です。

事例2.ベッドの操作を間違えて上がっていく

介護者がベッドから起きあがろうと思い背上げするつもりが、スイッチ操作を誤りベッドが上がってしまうことがあります。起きる原因としては、要介護者がスイッチ操作の正しい使用方法を理解していないことです。このようなことが起こらないためには、要介護者に対し正しいスイッチ操作の方法を指導すること、 スイッチ操作を介護者に依頼することが必要です。

事例3.寝位置がずれる

要介護者が介護用ベッドで背上げを行った際、寝位置がずれてしまい、気道が狭くなったり呼吸がしにくい体勢になったりすることがあります。起きる原因としては、背上げを行う際、背上げ機能のみを使用していることです。このようなことが起こらないためには、寝位置がずれないよう、背上げの前に脚上げを行うことが必要です。

事例4.ベッドの脚上げの際、ベッド用のテーブルが外れる

要介護者が介護用ベッドで脚上げを行った際、膝がベッド用のテーブルに当たり、そのままテーブルが外れてしまい、テーブルの上に置いてあった、熱いお茶でやけどを負ったり、パソコンが落下しケガをしたりすることがあります。起きる原因としては、介護用ベッドにテーブルを付けたまま脚上げを行っていることです。このようなことが起こらないためには、ベッド用テーブルを外してから脚上げを行うことが必要です。

車椅子によるヒヤリハット事例

介護ベッドと車椅子

次に、車椅子について、ヒヤリハット事例を交え解説します。車椅子には、使用する人自身が操作する自走式や介護者が押して操作する介助式、電動モーターと手元の操作レバーで移動できる電動式などのタイプがあります。どちらのタイプも、脚を支えるフットサポートや肘が置けるアームサポートを付属しているのが特徴です。では実際に、車椅子で起こるヒヤリハットにはどのようなものがあるのでしょうか。具体的な事例としては、乗り降りする際に足をぶつけて転びそうになったり、移乗する際に転倒しそうになったりすることがあります。

事例1.乗り降りの際に足をぶつけて転びそうになる

要介護者が車椅子から乗り降りする際、早く別の場所に移動したいという気持ちが先走り、フットサポートで足をぶつけて転びそうになることがあります。起きる原因としては、車椅子から乗り降りする際、フットサポートを跳ね上げていないことです。このようなことが起こらないためには、フットサポートが確実に跳ね上がっていることを確認して車椅子から乗り降りすること、介護者が要介護者の乗り降りの動作をよく観察することが必要です。

事例2.移乗時、転倒しそうになる

移乗とは、車椅子からベッド、ベッドから車椅子などへ移ることをいいます。要介護者が移乗の際、フットサポートを下げ踏み台にして立ち上がり、転倒しそうになることがあります。起きる原因としては、フットサポートを踏み台にして移乗しようとすることです。このようなことが起こらないためには、移乗する際は、フットサポートを確実に跳ね上げて自身の足で接地し移乗を行うこと、介護者に移乗の手助けを依頼することが必要です。

ヒヤリハットの再発防止に努めよう

車椅子の男性と介護士の女性

今回は、福祉用具をレンタルする前に知っておきたい、介護用ベッドや車椅子でのヒヤリハットについて、起きる原因や防止策を交えてご紹介しました。介護用ベッドや車椅子をレンタルする際は、要介護者はもちろんのこと介護者においても、介護用ベッドや車椅子を使用する際に起こる危険を把握するとともに、起こらないために何ができるかを話し合って対策することが重要です。また併せて、介護用ベッドや車椅子を管理する福祉用具専門相談員などが、レンタル品に不具合がないか適切に使用されているかを、定期的に点検し指導することも必要です。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。