2022.06.17

その腰痛、内臓や血管の病気が原因かも?|腰痛の原因について詳しく解説

最終更新日:2022.07.25
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

原因が特定できる腰痛とは

腰痛

腰痛には非特異的腰痛と特異的腰痛があります。非特異的腰痛とは 原因が特定しきれない腰痛のことです。従来MRIなどの画像診断は、画質や制度も悪く、原因を見つけられないことがありました。 医療と科学の進歩により 原因が明らかとなる腰痛も増えてきましたが現在でも非特異的腰痛が 85%程度を占めると言えます。今回は、原因が特定できる特異的腰痛についてご紹介するとともに、非特異的腰痛にはどのような可能性があるのかも併せて説明していきます。

神経を圧迫する脊椎の病気が原因の腰痛

腰痛

腰痛の中には日常生活や、仕事など姿勢や動きの中で神経を圧迫することで腰痛になる病気があります。その代表的なものが「腰椎椎間板ヘルニア」と「腰部脊柱管狭窄症」です。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアは腰痛の中でも診断されやすい病気です。椎間板の中の髄核が外圧により突出し神経を圧迫することで痛みが発症します。原因の多くは重いものを持ち上げる、過度なスポーツ、肉体労働などです。継続的に腰に大きな負荷をかけ続けることで発症することが多いです。男女問わず20~40代の方に発症します。MRIを撮ることで発覚するので比較的診断の付きやすい病気です。痛みの特徴としては、腰を前屈させることで痛みを感じることが多く、下肢にも痺れなどの症状が出ることがあります。下肢の症状は片側だけでるのが特徴で両側に出た際には違う病気を疑います。筋力の低下がみられ、頻尿や尿閉、失禁などの膀胱直腸障害を併発することがあります。

腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症は脊髄の通り道(脊柱管)が加齢によって脊髄神経の後ろにある靱帯や骨に厚みが出てくることで通り道が細くなり神経を圧迫して起こる腰痛です。加齢とともに起こるため、高齢者の腰痛はまずこちらを疑うでしょう。症状としては下肢の痛みや痺れ、場合によっては筋肉のけいれんが起こることがあります。高齢者に多いため合併症を引き起こす可能性も高くなります。予防のためには日常的に適度な運動をし、体重管理、筋力の維持、柔軟性の保持などが必要です。

内臓や血管の病気が原因の腰痛

腰痛になる病気と注意点

腰痛が命に関わることはほとんどありませんが まれに 内臓や血管の病気が原因で 発症する腰痛があります。その場合 姿勢を変えても痛みが軽くなりません。 安静にしていても 痛みが 変わらない場合は 内臓や 血管の病気による腰痛の可能性があるので要注意です。具体的にどのような病気が腰痛を引き起こす可能性があるのかをご紹介します。

消化器系

消化器系が原因で腰痛になる病気として「胃・十二指腸潰瘍」「膵炎」「胆石」「胆嚢炎・胆管炎」などがあります。

胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、胃粘膜が傷つき、胃液によって胃や十二指腸の壁に炎症が起きる状態です。原因としては喫煙や、過度な痛み止めの接種、ストレスなどが挙げられます。症状としてはみぞおちの痛みを訴える方が多く、ひどくなると吐血、血便などの症状を引き起こす場合があります。

膵炎

膵炎とは、膵臓が作る消化酵素の影響で膵臓に炎症が起き、細胞が正常な機能を失い、石灰化などを生じる状態です。原因としては大量の飲酒、や過剰な自己免疫が挙げられます。胆石によって膵液の流れが悪くなり膵炎を引き起こすこともあります。症状は、上腹部から背中の痛み、体重減少、下痢、嘔吐などがあります。

胆石

胆石(胆石症)は胆のうの中に砂の塊ができる状態です。脂質異常の方や、40代、女性、出産回数が多い方などが発症しやすいとされています。症状としては食後の右脇腹の痛み、吐き気、嘔吐、食欲不振などがあります。

胆嚢炎・胆管炎

胆嚢炎は胆嚢内で細菌が感染したり、その周辺の炎症が胆嚢に達する状態です。胆管炎は胆管の中で細菌が繁殖してしまう状態です。胆嚢炎は胆石がある方や、敗血症を起こしている方に発症しやすく、胆管炎は胆嚢結石が胆管で詰まり、流れが悪くなることで細菌が繁殖しやすくなります。症状としてはともに、発熱、吐き気、腹痛などがあります。

循環器系

循環器系が原因で腰痛を引き起こす病気には「腹部大動脈瘤」「末梢動脈疾患」「静脈血栓症」「肝炎・肝硬変」などがあります。

腹部大動脈瘤

腹部大動脈瘤とは、体の中で最も太い血管が通常2cmほどですが、太い血管のお腹に位置する血管が3cm以上に瘤状に腫れた状態をいいます。主な原因は動脈硬化によるものです。血管の内側がもろくなってしまうことで発症します。これは、破裂しない限り自覚症状がほぼなく、気づかないことが多いです。

末梢動脈疾患

末梢動脈疾患とは動脈硬化の進行によって、足の動脈が狭くなったり閉塞したりして、血液の循環が悪くなる病気です。原因はアテローム動脈硬化によって発症することが多く、血液中のコレステロールが原因で流れが悪く血管が狭くなることで引き起こされます。症状は歩行時の足やお尻の痛み、末端の冷えなどが現れます。

静脈血栓症

通常、人は傷口から血液が出てもしばらくすると「凝固」し血は止まります。しかし、血管内で固まることはありません。しかし、手足の静脈の中で血液が凝固してしまうことがあります。その凝固した血液の塊が肺の動脈に詰まることがあります。血液が凝固し、肺の動脈に詰まることを静脈血栓症と言います。原因は長時間同じ姿勢のまま下肢を動かさないことです。これにより血栓ができ肺の動脈で詰まることがあります。症状としては下肢の腫れ、皮膚の潰瘍などが現れます。

肝炎・肝硬変

肝炎とは、肝細胞が長期にわたって壊れ続ける病気です。肝細胞が壊れた後に線維が沈着し肝臓が硬くなります。これが進むと肝硬変になります。原因、生活習慣にあることが多く、アルコールの過剰摂取、肥満などです。症状としては肝炎にはほとんど症状はなく血液検査でわかることが多いです。肝硬変は進行すると浮腫、腹水、黄疸などの症状が現れます。

泌尿器系

泌尿器系が原因の腰痛には「腎盂腎炎」「尿管結石」「腎下垂・遊走腎」などがあります。

腎盂腎炎

腎盂腎炎とは細菌感染によって腎盂と腎臓に炎症が起きることです。もともと、健康的な人の尿路には細菌はほとんどいません。しかし、何らかの原因で細菌が侵入し繁殖して炎症を起こし、尿路感染を起こします。それが腎臓や腎臓で作られた尿が集まるところで起こったものを腎盂腎炎といいます。症状としては悪寒を伴う高熱があります。

尿管結石

尿路結石とは、尿の通り道である尿道に石ができることです。尿路とは、腎臓から尿管、膀胱。尿道全てをさします。結石は腎臓または尿管で見つかることがほとんどです。尿路結石は激痛を伴うイメージがついていますが、必ずしも激痛が伴うわけではなく結石ができる場所によって症状は違います。症状としては、激しい痛みと血尿が多いです。その他にも吐き気や嘔吐などがある場合があります。

腎下垂・遊走腎

腎臓は呼吸により上下します。立った時に、自然な呼吸性の動きを超えて下がる状態を腎下垂または遊走腎といいます。通常、立つと寝ているときよりも4~5cm腎臓が下がります。しかし、腎下垂は10cm程度下がります。腎臓周りの脂肪組織の発育が悪いことや、腎臓への血管が異常に長いことで起こります。症状としては、無症状のこともありますが、長時間立っていることで尿管が屈折し、尿が流れなくなり、脇腹の痛みが起こります。また、腎血管がねじれるため、むかつき、嘔吐、食欲不振などが生じることもあります。

産婦人科系

産婦人科系が原因で腰痛を引き起こす病気には「子宮筋腫」「子宮内膜症」「卵巣嚢腫」などがあります。

子宮筋腫

子宮筋腫は小さなものを含めると30歳以上の女性でも20~30%以上の方に見られ珍しくない病気です。原因ははっきりしていませんが、女性ホルモンの作用によって腫瘍が大きくなると言われています。症状には過多月経、過超月経、月経痛、不正出血、頻尿などがあります。

子宮内膜症

子宮内膜症とは、子宮の内側を覆う子宮内膜に似ている組織が、腹膜、卵管、卵巣、腸などにできてしまう病気です。原因ははっきりしていませんが、月経血が卵管からお腹の中に逆流してしまい、そこにとどまってしまうというのが現時点では有力なようです。子宮内膜症は痛みがあるのが特徴で月経痛以外にも下腹部痛、排便痛、性交痛などがあります。

卵巣嚢腫

卵巣嚢腫は卵巣に発生する腫瘍のひとつです。こちらの原因ははっきりとわかっていません。症状としては初期段階ではほとんどなく、徐々に下腹部の張りや、性交痛などの症状が現れます。

がん

がんが原因で引き起こす腰痛の病気として「腎細胞がん」「膵臓がん」「子宮がん」「がんの脊椎転移」が挙げられます。

腎細胞がん

腎細胞がんは腎臓にできるがんのなかで、腎実質の細胞ががん化し、悪性腫瘍になったものをいいます。原因は喫煙、肥満、高血圧などが挙げられます。腎細胞がんは多くの場合、早期は無症状です。がんが大きくなってくると血尿や腹部の痛み、体重減少などが現れることがあります。

膵臓がん

膵臓がんは膵液が通る、膵管という部分に発生することが多いです。原因は家族歴や遺伝子異常で、他にも糖尿病や膵炎、加齢なども関係していると考えられています。膵臓がんは膵臓が体の奥深くに位置していることから早期発見が難しく、進行していくと腹痛や黄疸、体重減少などの症状が現れることがあります。

子宮がん

子宮がんは子宮体がんと子宮頸がんに分類されます。子宮体がんは、子宮内膜にできるがんで、子宮頸がんは子宮の入り口の子宮頸管部にできるがんです。子宮体がんは生理不順や閉胸後の女性に多く、不正出血などの自覚症状がありますが、子宮頸がんは初期における初期症状がほとんどないのが特徴です。

原因が特定できない腰痛とは

腰痛

冒頭に説明した通り、腰痛のうち85%の方は非特異的腰痛(原因がはっきりわからない腰痛)です。腰痛の方で、「急性腰痛症」と診断されることがあります。これはつまり、原因がわからないということです。そのうち、90%以上の方は2~4週間で治ってしまいます。

ストレス

ストレスが腰痛の直接的な原因になるといえるのは血行不良が一つの原因になるからです。心理的なストレスがあることで一時的に痙攣起こし腰の筋肉の血流が悪くなることによって腰痛を引き起こすことがあります。人は痛みを感じるとドーパミンという神経伝達物質が放出され脳内で痛みを感じにくくします。しかし、ストレスの影響でドーパミンが放出されにくくなりすこしの痛みでも強く感じることがあります。自分の腰痛がストレスが原因なのではないか感じている方は下記の項目をチェックしてみてください。
・寝つきが悪い
・イライラする
・不安を感じる
・食欲不振
・疲れやすい
・気分によって痛みを感じたり感じなかったりする

上記のリストに当てはまっているからと言って、自分の腰痛の原因はストレスだと決めつけてしまうのは危険です。しかし、環境面でリラックスできるように工夫することは有効です。

長時間の同じ姿勢

長時間同じ姿勢でいることで腰痛を引き起こすことがあります。これは、金軸や靱帯が委縮し血行が悪くなることによって腰痛が引き起こされる状態です。特にこの症状になりやすいのはデスクワークをされている方です。座っている姿勢が長い人にとって腰痛とは常に隣り合わせです。姿勢が悪い人は腰痛になりやすいというイメージがありますが、いくら姿勢が良くても同じ姿勢を長時間とっていると腰痛になってしまいます。少なくても30分に1回は姿勢を変え、体をほぐすことが必要です。その他にも血行促進のため冷えを防止するのも有効な手段です。

重大な病気を見逃さないようにしよう

腰痛

腰痛は命に関わる病気ではないと、軽く見てしまいがちですが、その反面原因がはっきりしない方がほとんどであることも事実です。特に、長期間続く腰痛には我慢できる程度の痛みだとしても様々な可能性を考え専門医に受診することをおススメします。

加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

資格取得後は整形外科におけるリハビリテーション部の立ち上げに従事。その他、中学や高校の野球チームでトレーナーとして携わる。現在は介護サービスにおいて、お客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事している。その他、地域リハビリテーションに力を入れており、静岡市を中心に介護予防教室を30回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対して、福祉用具の選定方法などの講演を行う。