2021.09.03

小規模多機能型居宅介護とは?サービス内容や料金を解説

最終更新日:2022.06.23
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

「介護サービスは種類がたくさんあって契約や事業所選びが大変」。在宅介護をしているとそのように感じる方も多いのではないでしょうか。小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所を中心に複数のサービスを受けられるのがポイント。在宅生活を送る要介護者、介護者それぞれを支援します。こちらの記事では、小規模多機能型居宅介護のサービス内容や料金、メリット・デメリットについて解説していきます。

小規模多機能型居宅介護とは

老人ホーム

小規模多機能型居宅介護とは、「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスを組み合わせた地域密着型の介護保険サービスです。介護を必要とする方の在宅生活を支援するため、1つの介護事業者が複数のサービス内容を提供していることが大きな特徴となります。在宅介護では、利用者さんやご家族の状況に合わせた介護サービスを検討しなくてはいけません。小規模多機能居宅介護では、その都度サービスを変更したり事業所を探したりする必要がなく、ニーズに合わせたサービスを組み合わせて利用できます。

サービスの内容

小規模多機能型居宅介護では、「通いサービス」を中心にサービスを展開します。通いサービスは通所介護とも呼ばれ、利用者さんが自宅から通い、食事や入浴、機能訓練といった介護サービスを利用するものです。宿泊は、在宅で介護ができないときに一時的に利用できるサービス。介護者の仕事や冠婚葬祭といった理由のほか、レスパイト(息抜き)のために利用することもできます。また、訪問サービスは介護職員が利用者の居宅を訪れ、身体介護や生活援助を行うサービスです。利用者の状況に応じ、入浴や排せつの介助を受けたり、調理や洗濯をお願いしたりできます。

要支援の方は、介護予防小規模多機能型居宅介護

要介護度認定で要支援1または2と判定された方は「介護予防小規模多機能型居宅介護」の対象となります。介護予防小規模多機能型居宅介護は、利用者の生活機能の維持または向上を目的とするものであり、小規模多機能型居宅介護と同様に3つのサービスを組み合わせて利用することができます。

メリット・デメリットについて

レクリエーション

1つの事業所を中心に展開する小規模多機能型居宅介護は、利用者の状態を常に把握できるというメリットがあります。また、同一事業所のサービス利用となるため、スタッフの顔ぶれが変わらないことは利用者の安心感へとつながるでしょう。利用料は月額定額制のため、複数のサービスを利用しても介護保険支給限度基準額からはみ出す心配がないとも考えられます。一方、小規模多機能型居宅介護は他の事業所のデイケアや訪問介護との併用利用ができません。月額定額制のため利用回数に制限はありませんが、各サービスには定員数が決まっており、必要なときに利用できない場合があることもデメリットとしてあげられます。

料金は月額制

介護

小規模多機能型居宅介護の利用料は、月額定額制です。料金は地域によって異なるものの、主な目安は以下のとおりとなります(1割負担)。

要支援1 3,438円
要支援2 6,948円
要介護1 10,423円
要介護2 15,318円
要介護3 22,283円
要介護4 24,593円
要介護5 27,117円

介護保険サービスの自己負担額は原則1割ですが、所得によっては2~3割負担になる場合もあります。また、サービス内容によって「認知症加算」や「訪問体制強化加算」が加わります。宿泊サービスを利用する場合には宿泊費やおむつ代なども必要になるため、事前に事業所やケアマネジャーによく確認しておきましょう。

実際の利用料の目安

要介護度3の方が以下のようにサービスを組みわせた場合、利用料の目安は次のようになります。

●1か月の利用状況(目安)

通所サービス 12回(3回/週)
訪問サービス 4回(1回/週)
お泊まり 4回(1回/週)

●1か月の利用料(目安)

定額料金 22,283円
宿泊費(お泊まり) 8,000円(2,000円/回)
食費(お泊まり) 5,600円(1,400円/回)
食費(通所サービス) 6,000円(500円/回)
合計 41,883円

※宿泊費や食費は施設によって異なります。

このほか、初めて利用する月には「初期加算」、認知症で支援や介護が必要な場合には「認知症加算」などが追加されます。各サービスでおむつや歯ブラシといった日常生活品を利用した場合にも、別途料金が必要です。

こんな方におすすめ

夫婦

小規模多機能型居宅介護は、住み慣れた土地で在宅生活を送りたい要介護者におすすめのサービスです。「サービスのたびに新しい環境に対応するのは大変」という方でも、安心して利用できるでしょう。契約も一度で済むため介護者の負担を軽減できることもポイント。仕事と介護を両立しているご家族にもおすすめのサービスとなります。ひとつの事業所がさまざまなサービスを提供する小規模多機能型居宅介護は、在宅介護を支援するものです。月額定額制のため、利用者やご家族の状況に合わせて柔軟に利用することができます。利用者の自立した生活のため、介護者の負担を軽減するためにも、このサービスを上手に活用していきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。