在宅介護していると「みんなで旅行に行きたいな」「でも介護が必要だし難しいかも…」と悩むこともあるのではないでしょうか。在宅介護を長く続けるためには、介護者、要介護者ともに上手に息抜きをすることが大切。そこで本記事では、在宅介護の現状を踏まえ要介護者との旅行プランの組み立て方について紹介します。車椅子の方と旅行に行くための準備や心遣いなどについても紹介するので、ぜひ参考になさってください。
目次
息抜きしづらい在宅介護の現状で要介護者との旅行プランの組み方
要介護者との旅行プランは、下調べが大切。特に、車椅子の介助が必要な場合には、宿泊先がバリアフリーに対応していることが基本となります。ただし、介護に一生懸命になるあまり、旅行が楽しめなくなってはいけません。要介護者や同行者の意見を尊重しながら、安全に旅行するためのプランを検討していきましょう。
車椅子の要介護者と旅行にいくための準備
外食セットとトイレセット
旅先で必要となるのが、外食セットやトイレセットです。バリアフリーに対応した飲食店であっても、介助用のコップやスプーンは用意されていないケースがほとんどのため、必要に応じて使い慣れたものを持参しましょう。食事の場面で利用できるように、ハンドタオルやウェットティッシュなども合わせて準備すると良いですね。また、車椅子の方が旅行で心配になるのがトイレ問題。万が一のときのことを考えて、オムツや尿とりパッドなどは多めに準備しておくと安心です。防水シートを持参すれば、ベッドでオムツ交換をするときにも役立ちます。また、旅行時に役立つのがジッパー付きのビニールバッグ。ゴミ袋として活用すれば、オムツの匂いがもれることなく、旅行中も快適に過ごすことができます。
ルートの調査
車椅子の方との旅行ルートは、余裕を持って組み立てることが大切です。車椅子は移動にも時間がかかるほか、思わぬトラブルが起こることも考えられるからです。要介護者の身体状況に合わせ、無理のないルートを検討することもポイント。旅行中に無理をして体調を崩しては、せっかくの旅行も台無しになってしまいますよね。そのうえで、車椅子でトイレに立ち寄ることができるか、食事ができる場所があるかといった点を重視しながらルートを調査します。特に、旅行日程が長い場合や海外の場合には、事前の下調べが重要となってくるでしょう。
乗り物の選択
乗り物の選択は、都市部か地方かによっても異なります。都市部であれば電車で移動可能でも、地方ではタクシーやレンタカーが必要です。そのため、車椅子で長距離を移動するためには、専用車両を手配しなくてはいけません。飛行機を利用する際は、事前に航空会社や空港に申告しておくことも大切。スムーズに乗り物への乗降を行うためにも、あらかじめ流れを把握しておくのがおすすめです。乗り物は選択肢によって費用も異なるため、早めに検討しておくと良いでしょう。
宿泊先の確保
宿泊は旅の楽しみのひとつ。移動疲れを癒しながら、家族とゆったり過ごせる宿を選びたいですよね。そのためには、バリアフリー対応型の宿を選ぶのが基本。宿泊先の玄関から部屋まで、車椅子で移動できるかも確認しておきましょう。近年は、バリアフリーに対応した家族で過ごせるプランを用意する宿も多く見られます。かつては和室は寝具が布団のため、車椅子の方が過ごすには不向きな面がありました。近年多い和洋室であれば、スペースも広くベッドが設置され、車椅子の方でも快適に過ごすことができます。食事は個室でも可能なのか、多目的トイレはどこにあるかなど、設備基準を把握しておくとさらに安心です。
在宅介護の現状 旅行プランを組む際の心遣いが重要
車椅子の旅行には、移動やトイレ、食事などさまざまな不安があるものです。しかし、せっかく旅行に行くのであれば、介護者、要介護者ともに楽しみたいもの。家族旅行であれば、子どもや孫と一緒に大人数で移動することもあるでしょう。介護に必要な設備や手順だけを重視するのではなく、「旅行を楽しむ」気持ちを大切にすることは、要介護者への心遣いにもつながります。介護施設や居宅とは異なる非日常的な空間は、日々の生活に大きなメリハリを与えてくれるでしょう。「どこなら泊まれるか」「どこなら行けるか」ではなく、まずは「どこに行って何がしたいか」という旅行者の気持ちを大切にしたいですね。
息抜きしづらい在宅介護の現状 旅行業者の利用もあり
近年は、多くの旅行業者が「バリアフリーツアー」や「介護旅行」といったプランを設けています。要介護者の介助を行うヘルパーが同行するもの、好みの行き先や希望に沿って、車椅子の方に合ったツアープランを組み立ててくれるものなど、内容は実にさまざまです。「自分たちだけでは介助が不安」「宿泊先に問題なく泊まれるか心配」という場合には、このような旅行業者に相談してみるのもおすすめ。要介護者の身体状況に合わせ、無理のない旅行プランを組み立てることができます。
閉塞感のある在宅介護の現状 目標を持とう
「毎日大変だけど、もうすぐ旅行だから頑張ろう」。車椅子の方でなくても、こう思うことは多いのではないでしょうか。同じように、日常の先に目標があることは、毎日の介護の励みとなります。在宅介護は、ときには精神的・身体的負担の大きなものです。相手が家族だからこそ、ストレスを感じたり苛立ったりしてしまうこともあります。車椅子で生活する方のなかには、旅行はもうあきらめたというケースもあるかもしれません。そんな毎日に張り合いを与えてくれるのが「旅行へ行く」という目標です。旅行を目標に、リハビリをがんばろうという気持ちが生まれることもあるでしょう。「車椅子だから無理」とあきらめる前に、医師や看護師、介護職やリハビリのスタッフなどにアドバイスを得ることがおすすめです。要介護者の方との旅行は、毎日を一緒に送る在宅介護だからこそ可能になるとも言えます。安全に旅行を楽しむためには、ルートや宿泊先についてよく下調べしておくことがポイント。コップやスプーンなどのアイテムを持参すれば、旅先でも快適に過ごすことができます。何より大切なのは「旅行に行きたい」という要介護者の気持ち。上手に息抜きしながら、笑顔で在宅介護を続けていきたいですね。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。