2021.08.04

高齢者の不調を発見する|尿失禁の対応について

最終更新日:2022.07.22
東海林 さおり
看護師

排尿しようとしていないのに尿が出てしまうことがあります。このような症状を「尿失禁」と呼びますが、高齢者にしばしば見られる状態です。尿失禁の原因は何か、また、尿失禁が見られるときの対応について紹介します。

高齢者の失禁について

高齢者_散歩

身体を動かした瞬間などのふとした折に、尿が漏れてしまうことがあります。高齢者は尿失禁をしやすい傾向がありますが、なぜなのでしょうか。原因別に尿失禁の種類を解説し、それぞれの対処法について紹介します。

腹圧性尿失禁

骨盤の下や尿道周りの筋肉が緩むと、尿道が締め付けにくくなり、くしゃみや咳などの刺激で尿が漏れるようになることがあります。このように腹部の筋肉の緩みから尿失禁が起こるようになることが「腹圧性尿失禁」です。腹圧性尿失禁により尿が漏れるようになった場合は、骨盤底筋を鍛えるトレーニングをおこない、尿道をしっかりと締められるように訓練します。尿漏れの量が多い場合などの重症度が高いケースでは、尿道を支えるテープを挿入する手術をすることもあるでしょう。

切迫性尿失禁

急に我慢ができないほど強い尿意が起こり、尿漏れしてしまうことを「切迫性尿失禁」と呼びます。これは膀胱にトラブルが起こっているために起こると考えられますが、膀胱を制御する脳に問題がある可能性もあります。切迫性尿失禁にかかった場合は、尿意が起こる前にトイレに行く習慣をつけることで尿漏れを防ぐことができるでしょう。ただし、脳や神経系のトラブルで尿漏れが起こっている場合には、尿意があっても尿があまり出ない可能性があるため、あえて我慢することで切迫性尿失禁を回避できることもあります。場合によっては薬物療法が有効なこともあるでしょう。まずは医療機関を受診して、医師に相談してください。

溢流性尿失禁

膀胱に尿が多量にあるにも関わらず、トイレに行くと尿が少しずつしか出てこないときは、「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁」の可能性があります。溢流性尿失禁は腎臓に負担がかかるため、医療機関で早めに治療を始めることが必要です。尿が出にくい原因はさまざまで、治療の方法も原因によって異なります。例えば男性は前立腺肥大が原因で、尿の出が悪くなっていることもあるでしょう。その場合には前立腺肥大の治療を行い、排尿の妨げとなっている原因を取り除きます。

反射性尿失禁

脊髄を損傷し、尿意とは関係なく膀胱が収縮して起こる失禁が「反射性尿失禁」です。ストレッチで膀胱周りの筋肉をほぐし、失禁が起こりにくいようにトレーニングできることもあります。また、脊髄の機能を回復させる手術で反射性尿失禁を改善できることもあるでしょう。脊髄の状態によって治療法が異なるので、医療機関を受診して相談することができます。

機能性尿失禁

膀胱や尿道、周囲の筋肉といった排尿に関わる器官に問題があるのではない尿失禁を「機能性尿失禁」と呼びます。例えば認知症を発症し、トイレの位置が分からなくなったために失禁してしまうことは機能性尿失禁です。また、身体に麻痺があり、トイレに行くのに時間がかかって尿漏れしてしまうことも、機能性尿失禁のひとつと言えるでしょう。機能性尿失禁の場合は、トイレの場所が近くなるように居室を変えたり、適切な介護を行ったりすることで尿漏れを防ぐことができます。高齢者の病状や環境によって対応法が異なりますので、一人ひとりに寄り添った提案をしていきましょう。

尿失禁だからといえ、おむつにしてはいけない

トイレ

尿失禁が頻繁に起こる場合、治療やトレーニングで改善できることもありますが、すぐに改善されないことや治療が困難なこともあるでしょう。その場合は、すぐにおむつをするのではなく、ほかに対応方法がないのか考える必要があります。状況にもよりますが、高齢者が失禁するとすぐにおむつで解決しようとするケースが多く、高齢者の自尊心を深く傷つけることにもなりかねません。まずは治療やトレーニングができないか医療機関で相談し、おむつにならない工夫を考えることが大切です。その後、どうしても治療が困難だということが分かってから、「尿意がなくてもトイレにいく習慣をつける」「尿意があるときは我慢せずにすぐにトイレに行く」などの方法で、尿漏れを防ぐ工夫を模索していきます。工夫をすれば、治療が困難な場合でも、長時間の外出などの特定の場合以外ではおむつに頼らなくても済むかもしれません。安易におむつを選択してしまうと、高齢者が内向的になったり外出を嫌がったりすることもあるので、高齢者が楽しく暮らせるように配慮していきましょう。

尿失禁よりも、危険な尿閉について

病院

尿閉(にょうへい)」とは尿がまったく出ない状態を指します。尿失禁が起こることは心理的に大きなダメージを受けますが、排尿自体は可能な状態です。一方、尿閉は排尿が一切できない状態のため、膀胱に尿が溜まると尿道にカテーテルを挿入して排尿を人工的に導く必要があります。強い痛みを伴うことがあるだけでなく、尿閉の原因が取り除かれるまで何度もカテーテルを挿入することになるため、身体的に大きな負担を強いることになるでしょう。尿閉の原因としては、膀胱をコントロールする神経に異常がある、もしくは前立腺肥大などの尿路の通過障害が起こっているなどが考えられるでしょう。また、心因性の尿閉もあります。手術後、ベッドに横たわったまま尿をしなくてはいけない状態になり、慣れていないために一時的に尿が出なくなる方も少なくありません。その他にも、尿意を我慢しなくてはいけない状態が続いて、いざ排尿しようとしたらまったく出なくなってしまったというケースもあります。尿閉を放置すると腎不全になったり恥骨付近に疼痛を感じたりすることもあり、症状が長引く可能性もあるでしょう。早めに医療機関を受診し、原因を突き止めて、適切な治療を受ける必要があります。高齢になると尿失禁が起こるのはよくあることです。治療やトレーニングによって改善できることもあるので、まずは医療機関を受診するようにしましょう。また、安易におむつを選択するのではなく、おむつを回避する方法を医師やケアマネージャーと相談してみましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。