2021.06.11

食事介助|配食サービスの活用と自力で食べてもらう工夫

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

家族を在宅で介護する方の中には、毎日の食事に不安を抱える方も多いのではないでしょうか。介護度が進むと、「口を開けない」「声かけに応じない」といった問題のほか、専用のスプーンや食器などが必要となる場合もあります。

こちらの記事では、在宅介護に関わる方に向け、介護負担を軽減する配食サービスや、高齢者の食事を支援する工夫などについて解説していきます。

配食サービスの活用

在宅介護_配食サービス

栄養バランスのとれた配食サービスの活用は、調理時間や手間を省けるだけでなく、在宅介護の負担軽減につながります。高齢者の食事は、身体状況や疾患によって、調理方法やカロリーなどを検討しなければいけない場合があるからです。

各自治体が実施する「高齢者向け配食事業」は、高齢者の栄養管理と見守り、安否確認を兼ねた民間の配食サービスです。実際に愛知県高浜市では、65歳以上の高齢者に「毎日型メニュー方式給食サービス」と呼ばれる配食事業を運営。サービス利用はチケット方式を導入し、利用者が摂取した栄養状況を把握できるようになっています。

在宅介護をしている方にとっては、それぞれのケースに応じて、以下のように配食サービスを利用するメリットが考えられます。

配食サービスを利用するケース

日中独居の場合

同居家族が仕事で家を空け、高齢者が日中にひとりになる場合には昼食の準備が必要です。多くの配食サービスは、高齢者の安否確認も目的としています。実際に、大阪市の生活支援型食事サービス事業では、高齢者が不在の場合は再配達を実施。再配達時にも安否が確認できなかった場合には、緊急連絡先への連絡が行くシステムとなっています。

遠距離介護の場合

遠距離介護をする家族にとって、配達業者が高齢者と直接対面する配食サービスは安心・安全につながります。特に、ひとり暮らしで外出が困難な高齢者の場合は、栄養バランスの偏りも心配です。自治体によっては費用の一部が補助される場合もあり、地域で暮らすひとり暮らしの高齢者を支援する配食サービスが広がっています。

自力で食べてもらう工夫

介護_食事_工夫

料理を自分の目で見て、選び、口へ運ぶ行為は、高齢者の自立支援につながります。介護の負担を軽減するためにも、食事介助の際は以下のような工夫を心がけてみましょう。

食べやすい食器と用具

曲がるスプーンとフォーク

麻痺の後遺症や握力の低下で箸の使用が困難な場合は、曲がるスプーンやフォークがおすすめです。柄の先が曲げられるため、高齢者が使いやすいように角度を変えることができます。

バネ付き箸

バネ付き箸は、根元がバネで固定されており、指先の細かな動作が苦手な方でも利用しやすい造りになっています。バネの力で開くため、つまむ動作ができれば箸を使った食事が可能です。

万能スプーン

食事介助用のスプーンには、前述したような先が曲がるもの以外にもさまざまな種類があります。柄の太いものや、スポンジで太さを調整するものは、握力が低下した方でも利用しやすいのが特徴です。やわらかいシリコン製のもの、くぼみが深いものなど、高齢者の身体状況に応じたスプーンを選びましょう。

傾斜の付いた食器

傾斜の付いた食器は、片手でも料理をすくいやすいのが特徴です。裏側にすべり止めが付いており、手で食器が固定できなくてもひっくり返す心配がないのがメリットとなります。

カフ

カフとは、手のひらに巻き付けて装着し、スプーンやフォークを差し込んで使用する介助補助具です。握力が弱く、手指が曲がらない方でもスプーンやフォークを使用できるようになります。

こぼれないコップ

口に入れた料理をスムーズに飲み込むためにも、食事中の水分補給は欠かせません。自分で水分摂取するためには、こぼれる心配のないフタのついたマグ型のコップがおすすめです。持ちやすい取っ手が付いているため、握力の弱い方でも簡単に使用できます。

手づかみで食べるのも良い

食が細くなった高齢者にとって、自分で食事を完食することは、満足感や達成感につながります。箸やスプーンが使いづらい時には、小さいなおにぎりや食材など、手づかみで食べられるメニューを用意するのもおすすめです。手軽に口へ運べることが、高齢者の「食べよう」という意欲を引き出してくれます。手づかみ食は口に詰め込みすぎないよう、少量ずつお皿に盛るのがポイント。介助者は横で一緒に食事をとり、席を外さないように心がけましょう。

食べてくれないときに試すこと

外食をする

「食事を食べてくれない…」と困った時には、外食で気分転換を図るのもおすすめです。普段とは違う環境やメニューに刺激され、食が進む場合もあります。家で過ごすことが多い高齢者であれば、外出意欲を引き出す効果も期待できるでしょう。

出前をとる

出前は食事を用意する手間を省けるため、家族の介護負担軽減にもつながります。普段自宅で食べることのないようなメニューを選べば、高齢者と家族双方にとって、日常生活の刺激のひとつとなるでしょう。

家族でパーティーを開く

クリスマスや年末年始などの季節のパーティーのほか、高齢者の誕生パーティーなどの華やかな料理は食欲を刺激してくれます。家族が集まって楽しそうにしている雰囲気も、高齢者にとって「食を楽しむ」ことにつながるでしょう。

食事介助でお悩みの方へ

食事介助

在宅介護の現場では、高齢者の食事は健康維持のための大切なポイントです。一方、身体状況によっては、家族とは個別の調理法やメニューが求められる場合もあります。

介護負担を軽減するためには、配食サービスの活用もおすすめ。適切な食事介助グッズを選べば、高齢者本人の食べる能力を引き出せます。

食べることの喜びと楽しさを忘れずに、在宅介護でも無理のない範囲で工夫をしていきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。