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加齢に伴う骨と関節の病気
人の体は、加齢に伴いさまざまな変化をもたらします。筋力や運動能力はもとより、脳の判断能力も低下しますが、骨や関節にもさまざまなトラブルを生じることが少なくありません。本記事では、高齢者の骨折の好発部位や関節の病気、腰痛から疑われる病気などについて解説します。
骨粗鬆症
骨がもろくなる病気です。カルシウム不足やホルモンバランスの崩れなど、さまざまな原因で発症する病気で、高齢者がかかりやすいことでも知られています。骨粗鬆症のおそろしいところは、わずかな衝撃でも骨が折れてしまうことです。特に、太ももの付け根や手首、背骨、腕の付け根などの骨が折れやすく、転倒した際いとも簡単に骨折してしまうケースも珍しくありません。骨粗鬆症は、主に食事療法や運動療法、投薬治療などの治療法が採用されます。
変形性脊椎症
脊椎の変形が原因で引き起こされる病気のひとつです。脊椎は、加齢に伴い変形することがあり、それが原因で痛みやしびれなどを生じてしまいます。また、慢性的な負担が脊椎にかかっていたケースでも、変形性頚椎症を発症することがあります。痛みを発しやすい部位としては、股関節や背中、腕などが挙げられるほか、後頭部に痛みを感じることも少なくありません。また、手がしびれて力が入らなくなる、文字をうまく書けなくなる、といった症状もよく見られます。
椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアは、主に10~40代の方が発症しやすい病気です。ただ、高齢者が発症するケースもあるため、注意が必要です。この病気は、椎間板へ何らかのダメージが加わることで、内部の組織が飛び出し、神経を圧迫してさまざまな症状を引き起こします。わかりやすい症状としては、痛みが挙げられます。腰に強い痛みを覚えることが多く、足や臀部などが痛むケースも少なくありません。また、痛みだけではなく、手足のしびれを訴える方もいます。
変形性膝関節症
膝に強い痛みを生じる病気として知られています。膝の関節軟骨がすり減ることで生じる病気で、症状が進行すると強い痛みを生じるほか、日常生活にもさまざまな弊害をもたらします。変形性膝関節症の自覚症状がある方は、全国に約1,000万人いるといわれていることをご存じでしょうか。検査で兆候が見られる患者さんは、約2,500万人いるともいわれているため、決して他人事ではない病気です。50歳以降の方によく見られる病気で、特に女性の方が発症しやすいといわれています。
高齢者の骨折の好発部位
加齢とともに骨はもろくなる傾向があり、転倒や衝突などにより骨折してしまうケースも珍しくありません。ここでは、高齢者に多い、 上腕骨頸部骨折や 脊椎圧迫骨折、 橈骨骨折、 大腿骨頸部骨折など四大骨折について解説します。
好発部位1:上腕骨頸部骨折
肩に近い上腕を骨折することを、上腕骨頸部骨折と呼びます。転倒や衝突など、外部から強い衝撃が加わることで生じることが多く、骨がもろくなっている骨粗鬆症の方によく見られます。骨粗鬆症を発症している方の場合、上腕骨頸部骨折を頻発してしまうこともあるため、注意が必要です。衝撃を受け骨が折れた直後から強い痛みを生じてしまい、腕や肩を動かせなくなります。治療では、骨折合術と呼ばれる手術を行い、術後にリハビリを行うのが一般的です。
好発部位2:脊椎圧迫骨折
文字通り、脊椎を圧迫することで骨折してしまうことです。脊椎の上下方向から強い負担が加わったとき、骨折します。基本的には、よほど強い衝撃が加わらないと起こりませんが、骨がもろくなっている高齢者は注意しなくてはなりません。高齢者の場合、尻もちや転倒により、脊椎圧迫骨折を引き起こしてしまうことがあります。骨折してしまうと、腰や背中などに鋭い痛みを生じてしまい、体を思うように動かせなくなってしまうため注意が必要です。
好発部位3:橈骨骨折
転倒しそうになり、思わず手をついたときに骨折してしまうケースが多いようです。橈骨とは、前腕を構成する骨の一種であり、それが手首の近くで折れてしまうことを 橈骨骨折と呼んでいます。高齢で骨がもろくなっている方や、骨粗鬆症を発症している方、女性の方によく見られる骨折です。骨折した患部に強い痛みを生じ、動かすことも困難です。骨折の状態が酷いケースでは、周辺の神経にもダメージを与えてしまい、運動麻痺を生じてしまうおそれもあります。
好発部位4:大腿骨頚部骨折
太ももの付け根周辺にある大腿骨頚部が骨折してしまうことを指します。転倒により骨折してしまうケースが多く、それほど強い衝撃が加わらなくても大腿骨頚部骨折を起こしてしまうことがあるようです。大腿骨頚部骨折すると、大腿骨頭を人工骨頭に取り替える「人工骨頭置換術」などを実施することも少なくありません。日本整形外科学会が、1998~2001年に行た調査では、立っているくらいの高さからの転倒が、受傷原因の第一位とのことでした。骨粗鬆症も発症している寝たきりの方の場合、おむつ交換時に骨折してしまうこともあるため注意が必要です。
骨折後の生活について
もっとも大切なことは、ムリをしない、させないことです。ただ、処置を施したあとは、日常生活に戻れるよう早期にリハビリを開始する必要もあります。リハビリも、医師や看護師に相談のもと、正しい方法で行うことが大切です。介護者が注意すべきことは、リハビリでムリをさせないことのほか、自宅での転倒、衝突などです。リハビリでムリをさせ、回復が遅れては本末転倒です。また、高齢者は骨がもろくなっていることを理解し、安心して暮らせる環境に改善してあげることも大切です。必要に応じて、自宅のバリアフリー工事も検討してみましょう。高齢になると、些細な段差でつまづいてしまい、転倒してしまうケースが少なくありません。段差を解消し、スロープや手すりの設置をすれば安全な環境下で快適な生活を送れるでしょう。
腰痛から疑われる重大な病気
消化器や泌尿器、ウイルス系の病気などが挙げられます。詳しく見ていきましょう。
消化器の病気
代表的なところでは、胆石症が挙げられます。胆のうの中に胆石ができてしまう病気で、突然強い痛みを生じてしまいます。高齢の方をはじめ、コレステロール値の高い方、肥満の方にも生じやすい病気です。治療では主に手術が採用されますが、症状によっては薬物治療が行われることも少なくありません。
泌尿器の病気
腎盂腎炎がよく知られています。腎臓の内側にある、腎盂が細菌に感染してしまうことで発症します。腰の痛み以外にも、吐き気や発熱、倦怠感などの症状が生じるケースが多く、重症化してしまうことも少なくありません。症状が進行し、菌血症に陥ってしまった場合には、一刻も早い治療が必要といわれています。
ウイルスの病気
代表的なものとしては、帯状疱疹が挙げられます。帯状疱疹ウイルスにより引き起こされる病気で、皮膚に痛みを伴う湿疹が生じます。一度かかると免疫ができ、しばらく発症することはありませんが、加齢に伴い免疫力が低下すると再び発症してしまうケースがあります。
骨折や腰痛の予防について
骨がもろくなる骨粗鬆症を予防するには、健康的な生活習慣を身につけることが大切です。カルシウムやビタミンDを含む食材を積極的に食べ、飲酒や喫煙をしている方は控えることを考えましょう。定期的に医療機関での診察を受けることも大切です。定期的な検診で骨粗鬆症の状態を把握し、医師のアドバイスを受けながらケアを続けましょう。骨粗鬆症が発症しているのなら、治療で進行を押さえながら生活習慣の改善を行ってください。また、適度な運動をすることも大切です。筋力が低下すると、転倒しやすくなり、それが原因で骨折してしまいます。普段から、ムリのない程度にウォーキングやランニングなどを生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。自宅での転倒リスクを軽減するため、バリアフリーリフォームも検討してみましょう。
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看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。