2021.09.10

認知症かも?と感じる方へ 簡単な診断テスト

最終更新日:2021.09.10
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

家庭での介護者にとっては、もの忘れや問題行動はとても精神的に負担がかかります。始めは優しい気持ちで接する事ができても、繰り返す事で過度なストレスがかかります。また、介護協力者が少ないと抱え込んで介護うつになってしまう事もあります。その結果、高齢者虐待になってしまうという事もありました。これから、認知症の症状や認知症かもと感じた時に専門職でなくても家庭でできる簡単な診断テストを紹介します。辛いだけな介護生活から抜け出せるきっかけになればと思います。

認知症とは?

もの忘れイコール認知症ではありません。種類によってさまざまな症状があります。具体的には、この後説明します。もの忘れ・介護の拒否を含めた問題行動等が主な認知症状と言われています。すべての方に当てはまる訳ではないですが、新しい事(短期記憶)を覚える事に障害が出ます。一方、古い過去の記憶(長期記憶)は保たれている事もあります。問題行動で多いのが、徘徊・睡眠障害です。目を離すと家を出てしまい戻れなくて迷子になってしまうという事もあります。昼夜逆転で夜間も気が休まらないという事もあります。

認知症の症状

アルツハイマー型認知症

脳にタンパク質が異常に溜まり委縮をする事で発症する認知症と言われています。個人差はありますが傾向としては、ゆっくり進行します。若くして発症する若年性アルツハイマーもあります。もの忘れ・時間場所等の認識障害・言葉の障害等が見られます。その症状から、うつ病等の精神的な障害が起きる事もあります。食後に「ごはんまだかな。」、トイレ直後に「トイレに行かなくちゃ。」、仕事をしていないのに、「仕事に行かなくちゃ。」等混乱する事もあります。介護者は、その都度否定すると何回言えば分ってくれるのかとストレスを貯めてしまう事もあります。

レビー小体型認知症

脳の神経細胞のたんぱく質(レビー小体)が蓄積して怒る認知症です。認知機能の障害に加えて、幻覚・幻視・睡眠時行動異常・手足の震えや歩行等の動作が遅くなるのパーキンソン症状があらわれます。実際に無いものが見えるように感じたり、寝ている時に大きな寝言を言ったり暴れたりする事もあります。症状には、波があります。

脳血管性認知症

脳血管障害から起こる認知症です。ADL(日常生活動作)では、脳血管障害により麻痺が後遺症として残る場合もあります。脳血管障害の程度や起こった場所によって、急に症状が重くなったりする事もあります。再び脳血管障害が起こると、重度化を繰り返す事もあります。

自宅でできる簡単な診断テスト

認知症かも?と感じても、決めつけてはいけないと思いモヤモヤした中日常生活を送っている介護者も多いと思います。あくまで、医療診断では無いですが家庭でできる簡単な認知機能の診断テストを紹介します。

時間・場所を把握しているか確認するテスト(見当識の確認)

「今は何年ですか。今日は何月ですか。今日は何日ですか。今日は何曜日ですか。今は何時ですか。」という質問をしてみましょう。そして、ご本人の回答をメモに書き留め正解か間違いかを確認します。

新しいものを記憶する事が出来るか確認するテスト(短期記憶の確認)

新聞のチラシの商品に5個ほど分かりやすく○を付けてご本人に見てもらう。その後、チラシを見ずに○をつけた商品を思い出してもらう。思い出せなかったら、ヒントを出して思い出してもらう。ヒント無しで答えられた数と、ヒント有りで答えられた数を書きとめる。

簡単な計算(注意力や計算力の確認)

1桁の数字を3つほど伝え、逆から言ってもらいます。5回ほど繰り返して、正解の回数を記録します。
簡単な足し算と引き算を5問ずつくらい紙に書き、計算してもらいます。採点を行い正解の回数を記録します。この時に、ご本人の前で採点をして×と書いてしまうと自尊心を傷つけることにもなる為配慮が必要です。

これまで紹介したものは、あくまで認知症かもと思った時に行う簡単な診断テストです。

早期発見の必要性

認知症状が出て来たと感じたら、早いうちに医療機関への受信をお勧めします。自分で決めつけてしまうのは気が引ける場合は紹介した診断テストをやってみてその結果を持って医療機関に行くのも良いでしょう。認知症の診断がでなくても、安心できますし認知症の診断が出た場合は、早期治療を行う事ができます。紹介した認知症の症状や種類によっても処方や治療はさまざまです。症状が進行してしまったら、元に戻すのは難しい為早い段階から進行を遅らせる取り組みが必要です。介護者の負担を減らす為にもなりますし、一番はご本人の精神的・身体的にも少しでも長く安心して生活できるようになる為です。認知症扱いでは無く、ご本人の為と思い勇気を出して受診しましょう。

おわりに

認知症は、原因によって症状の進行や症状のあらわれかたはさまざまです。また、初期ではご本人ももの忘れが増えて来たな等自覚症状がある場合が少なくありません。受診しようと誘っても、「ボケ老人扱いしないで。」と言われるかもしれません。その時は、一人で抱えず家族に相談して医療機関へ相談してみましょう。介護サービスを受けている場合は、ケアマネジャーに相談すると、色々とアドバイスをしてくれます。介護者も、ご本人も出来るだけ長く楽しく日常生活を送りたいと思っているはずです。その為にも、紹介した簡単な診断テストをきっかけにして頂けたらと思います。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。