歩行に困難を覚えるようになってきた方は、歩行を補助してくれる福祉用具・介護用品を利用することができます。歩行をサポートするものや歩行訓練に用いられるもののうち代表的な用品を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。介護保険を利用してレンタルすることができる商品もあるので、ぜひケアマネジャーとも話し合ってみましょう。
杖

杖は、歩くときに身体を支える棒状の介護福祉用品です。形状によって次の4つのタイプに分かれます。
杖の種類①ステッキタイプ
シンプルな棒状の杖をステッキタイプと呼びます。身体を支えるという目的だけでなくおしゃれ目的でも持つことができるので、初めて杖を使う方にも抵抗感が少ないでしょう。

杖の種類②T字タイプ
ステッキタイプとは異なり持ち手が横になっているため、体重をかけやすい杖です。また、しっかりと握ることができるので、手を離しにくいというメリットもあるでしょう。現在、杖の中でももっとも多く使用されているのがT字タイプと言われています。おしゃれなデザインも豊富にあり、好みや使用感によって選ぶことが可能です。

杖の種類③多脚タイプ
ステッキタイプもT字タイプも、地面につく脚部分が1つしかないため、不安定さを感じることがあるかもしれません。特に体重をしっかりと杖にかけて使いたいという方なら、ステッキタイプやT字タイプは不安になるでしょう。一方、多脚タイプは地面につく部分が3つないしは4つあり、力をかけても滑る恐れは低いです。また、杖自身が自立するので置き場に困らないというメリットもあります。

杖の種類④折り畳みタイプ
旅行のときなどに杖を持っていきたい場合には、折り畳みタイプのものを選択できます。折り畳みタイプは伸ばすとT字タイプになることが多く、しっかりと握って歩行の補助具として使用することが可能です。ただ、折り畳むという構造上、どうしても細く耐久性に欠けてしまうことが少なくありません。日常的に使用するときは、折り畳めないタイプのものを選ぶほうが良いでしょう。

シルバーカー

シルバーカーは、椅子や買い物かごになる部分に手すりと車輪がついた構造の歩行補助用品です。歩行器としても使用でき、また、外出中に疲れたときは椅子としても使用できるものもあります。
シルバーカーの種類①コンパクトタイプ
コンパクトタイプとは、車やバスなどに乗せる機会が多い方におすすめな軽量で動かしやすいタイプです。
メリット:
・軽量かつコンパクトなため持ち運びしやすい
・狭い場所での歩行や、車・電車などへの持ち込みが便利
デメリット:
・荷物の収容量が少ないため、買い物したものや荷物が多いと収納できない
・座面が比較的小さい
・軽量なため、安定性がミドルサイズ以上に比べると少ない

シルバーカーの種類②ミドルタイプ
コンパクトタイプと大容量タイプの中間サイズで、両タイプのいいとこどりをしたバランスの良いサイズ。
メリット:
・大きすぎず、小さすぎないサイズ。
・適度な荷物収納量。
・重すぎず、軽すぎない車体重量

③ボックスタイプ
収納量が多く買い物した商品を収納したり、座面も広いため安定して座ることができるなどを考えて使用したい方にはおすすめのサイズ。
メリット:
・大容量の荷物収納
・ゆったり座れる幅広座面
・しっかりとした安定性
デメリット:
・車体が大きい分小回りが利きにくい
・車体重量も重く、狭い場所ではかさばりにくい

歩行器(室内用)

室内で使用する歩行器には、3つのものがあります。いずれも形状や目的が異なるので、最適なものを選びましょう。
歩行器(室内用)の種類①交互歩行タイプ
腕を支える横のフレームと脚部から成る歩行器です。車輪がついていないので、左右のフレームを片方ずつ前に動かしながら進みます。折り畳みできるものとできないものがあり、いずれも歩行訓練に使用されることが多いです。

歩行器(室内用)の種類②持ち上げ歩行タイプ
持ち上げ歩行タイプも、腕を支える横のフレームと脚部から成り立ち、車輪がなく、歩行訓練に使用されることが一般的です。フレーム全体を持ち上げて少し前方に置き、少しずつ前に進みます。

歩行器(室内用)の種類③車輪タイプ
脚部に車輪がついている歩行器は、歩行訓練だけでなく歩行補助具としても用いられます。フレームに体重をかけたりグリップ部分を握ったりすることでストッパーがかかる構造です。

歩行器(外出用)

一方、外出用の歩行器は、歩行訓練用のものではなく歩行補助を目的とするため、すべてのタイプに車輪がついています。室内用と比べて車輪が大きく、少しの段差なら進めるように工夫されていることが一般的です。
玄関で便利な福祉用具・介護用品

玄関が利用しやすいと、外出しやすくなるため、行動範囲が広くなります。玄関に設置できる便利な福祉用具や介護用品を紹介します。
①手すり
手すりがあると、玄関の段差を越えやすくなるので、外出する際も帰宅した際も動きがスムーズになるでしょう。手すりには壁に直接取り付けるタイプのものと、床置きタイプがあります。
②踏み台
玄関の段差が高いときは、踏み台を置くことで便利になります。靴を脱げる程度の大きさがあれば、踏み台でつまずく可能性も減らせるでしょう。
③椅子
立ったまま靴を履くことが難しい場合は、玄関に椅子があると便利です。椅子を置くことで、体勢を崩しにくくなるだけでなく、玄関の段差解消にも活用することができます。
④スロープ
玄関から門までに段差がある場合は、スロープを簡易的に設置することで転倒を予防することができます。つまずく恐れを解消するだけでなく、車いすでの出入りも楽になるでしょう。段差がいくつもある場合には、スロープを設置するのではなくリフォーム工事も検討できます。壁面に沿って手すりも取り付けるなら、より一層、門から玄関まで移動しやすくなるでしょう。
⑤段差解消機
段差が大きなときには、スロープをつけると勾配が高くなり、より転倒しやすくなることがあります。そのようなときはエレベーターのようにその場で上下する段差解消機を取り付けることもできるでしょう。段差解消機は玄関だけでなく縁側などにも取り付けられます。庭に下りるときの段差の不安を解消できるので、行動範囲が広がるでしょう。
屋内歩行を補助してくれる福祉用具・介護用品

屋内での歩行を補助してくれる用品を紹介します。
①手すり
玄関だけでなく廊下やリビングなどに手すりがあると便利です。動線に沿って手すりを取り付けることができるでしょう。
②多脚タイプの杖
家の中でも杖をつくと、転倒を防ぐことができます。特に廊下やフローリングは滑りやすいので、杖を使って歩行することがおすすめです。家の中では多脚タイプの杖が使いやすいでしょう。自立させられるので、いつも手元に置いておくことができます。
③歩行器
歩行器があると、家の中の移動がスムーズになります。屋内用の歩行器は屋外用と比べて小回りが利き、車輪が小さく省スペースのものが多いです。介護用品や福祉用品を使用することで、生活がより便利に楽しくなります。要介護認定を受けている方はケアマネジャーに相談するならば、ライフスタイルや希望に合った商品を一緒に選ぶことができるでしょう。
まとめ

介護用品の中には要介護度によって介護保険が適用される場合もあるので、少ない負担で導入できるものもあります。また、要介護認定を受けていない場合も、介護用品・福祉用品を使うことで歩行の不便さを感じにくくなるでしょう。歩行に不便さを感じると、どうしても外出するのが億劫になり、家にいることが増え、行動範囲が狭くなるだけでなく、体力が低下してしまうこともあります。外出する楽しみを減らさないためにも、必要に応じた用品を導入していきましょう。
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福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。


