2021.10.12

安全にご自宅のお風呂に入るための介護用品の種類と特徴‼

最終更新日:2022.04.29
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

一緒に暮らしている高齢者の身体状況に合わせ、手すりやいすといった介護用品を検討する方も多いのではないでしょうか。近年は入浴のための福祉用具が多数登場しており、介護保険を利用したレンタルや購入が可能となっています。こちらの記事では、自宅で安全にお風呂に入るための、介護用品の種類や特徴を紹介していきます。

日々の生活の中でのお風呂の重要性とは

介護士

日常生活の中で、お風呂の時間は身体を清潔に保つだけでなく、心身を癒す重要な役割を担っています。清潔が保たれないと、皮膚の病気や感染症の原因にもなるため注意が必要です。筋肉を温めることで血流の流れをよくし、関節の痛みをやわらげることもできます。

高齢者のお風呂での事故に注意

厚生労働省の人口動態調査によると、高齢者の「不慮の溺死および溺水」による死亡者数は高い水準で推移しています。平成23年以降、その数は「交通事故」による死亡者数を上回るまで増加。令和元年の入浴中の死亡者数は4,900人となり、平成20年の3,384人と比べると、約10年間で1.5倍近く増加していることになるのです。入浴中の事故は冬場に起こりやすく、居室とお風呂場との温度差が「ヒートショック現象」を引き起こします。心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすヒートショック現象を防ぐには、入浴前に脱衣所や風呂場を温めておくことが大切です。湯温は41℃以下を目安とし、長湯にならないよう普段から家族が声かけを意識しましょう。
【出典】消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故にご注意ください!」

安全・快適にお風呂に入るために介護用品を使用しましょう

お風呂

安全安心で快適な入浴のためには、介護用品を使用するのがおすすめです。介護用品の使用は介護を受ける高齢者だけでなく、介護する側にとっても以下のようなメリットを生み出してくれます。

介護を受ける方のメリット

介護用品を使うと、身体や頭を洗ったり、浴槽をまたいだりといった入浴動作がラクになります。お風呂場は段差が多く濡れているため、転倒のリスクが高い場所です。そのため、スムーズに動作できればより安全な入浴が可能となります。介助は最小限ですむため、プライバシーを守りながら快適な入浴ができることもメリットのひとつだといえるでしょう。

介護をされる方のメリット

限られたスペースで行う入浴介助は、介護者にとっても負担の大きなものです。介護用品を利用し高齢者が自分で入浴できるようになれば、介護者の負担はその分軽減されます。転倒リスクが軽減されるという、安心感を得られることもメリットのひとつです。日常生活に欠かせない入浴介助の時間を、介護する側も快適に過ごすことができます。

介護保険を活用して購入できる介護用品があります

介護士

福祉用具には、介護保険を利用して購入できるものと、レンタルできるものが定められています。車いすや介護用ベッドといった、介護保険を利用してレンタルできるものは「福祉用具貸与」。ポータブルトイレや入浴用品のように、利用者の肌に直接触れるものは「特定福祉用具」と呼ばれ、介護保険を利用した購入が可能となっています。購入の上限額は、毎月のレンタル利用上限額とは別に年度ごと10万円までです。価格の1割から2割の負担額で「特定福祉用具」を購入できます。ただし、給付対象となるのは、都道府県から指定を受けた事業者から購入したものに限られるため注意しましょう。入浴時の介護用品のなかで「特定福祉用具」に指定されているのは、浴槽への出入り出を安全にしたり体制を保ったりするために必要なものです。ここからはそれぞれの入浴用品の特徴について見ていきましょう。

入浴時間を安全にする介護用品

浴槽へまたぐ動作は、高齢者にとって身体的負担の大きなものです。浴槽から立ち上がるときは血圧の変動もしやすく、ふらつきの危険性もあります。しかし、湯船につかる行為には血行を良くするだけでなく、リラックス効果も期待できるなどメリットもたくさんあります。お風呂が好きな方にとっては、楽しみのひとつでもあるでしょう。安心で安全な入浴を実現するためには、必要な入浴補助具を見極め、適切に使用することがポイントです。

浴槽用手すり(特定福祉用具)

介護用品 お風呂

浴槽をまたぐ動作は片足を大きく持ちあげるため、身体をしっかりと安定させる必要があります。その際に利用できるのが、浴槽のふちに固定するタイプの手すりです。「ユクリア コンパクト130 PN-L12211」は、取り付けタイプのため、利用者自身が握りやすい場所に設置が可能です。第三者の手を借りることなく、安全に浴槽に出入りできるようになります。慣れるまでには介助者が付き添い、最も適した場所を一緒に検討するとよいでしょう。

浴槽台(特定福祉用具)

介護用品 お風呂

アロン化成 軽量浴槽台 すべり止めシートタイプ」は、浴槽内に設置し、洗い場との高低差を軽減する補助用具です。浴槽内が深く大変なときにも、またぐ動作がラクになります。お湯の中に沈めるだけなので、簡単に利用できることもポイントです。底にはゴムや吸盤が付いているものが多く、浴槽内のすべりも防止できます。また、浴槽台最軽量クラス2.0kgで高齢者や女性でも持ち上げが楽になり、お風呂からの出し入れの負担が軽減します。

すべり止めマット

介護用品 お風呂

ダイヤタッチ すべり止めマット」は、浴室内の転倒を防止する福祉用具です。お湯の中にしずめ、浴槽内のすべりを防ぐこともできます。お湯のなかは浮力でお尻が持ち上がってしまい、座った状態がキープできない場合もあります。すべり止めマットを敷いていれば、浴槽内でも安定した姿勢が保てるので安心です。浴槽に出入りする際の転倒リスクも軽減することができるでしょう。

バスボード(特定福祉用具)

介護用品 お風呂

利用者さんの身体状況によっては、浴槽をまたぐことが難しい場合もあります。フタのように浴槽にかぶせる「サテライト 福浴 回転バスボード」は、上に座った状態で浴槽へと体を移動できるのがポイントです。端にはグリップがついているため、安定した姿勢を保持することも可能。入浴のためだけでなく、体を洗うときにも腰かけたラクな状態で使用できます。バスボードは浴槽のサイズと合っていないとぐらつきの原因になるため、購入時はよくサイズをチェックするようにしましょう。

入浴用リフト

介護用品 お風呂

TOTOエムテック バスリフト EWB100SR」は、自分で入浴できない方の浴槽への出入りを支援する介護用品です。歩行が困難な状態でも自宅で入浴でき、介助者の負担が軽減されるというメリットがあります。入浴用リフトの種類は、簡単に設置できるものから工事が必要なものまでさまざま。購入時は、利用者さんの身体状況や浴室の環境に合わせて選ぶことが大切です。浴室のタイプによっては設置できるものが限られるため、実際に介護用リフトを扱うメーカーや施工先、ケアマネジャーなどとよく相談しながら利用を検討しましょう。

身体を洗う動作を快適にする介護用品

身体を洗うときには、状態が倒れないように安定した姿勢を保つ必要があります。立ち上がり時にも、ふらつかないようにサポートしてくれるものがよいでしょう。介護用品は高齢者の安全な入浴を支援するものですが、介助はそのすべてに手を貸せばよいわけではありません。あくまでも高齢者本人の「できる部分」を活用することが大切です。身体を洗うという行為も可能な限り自分でできるよう、うまく介護用品を利用していきましょう。

シャワーチェア

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幸和製作所 ユニプラス コンパクトシャワーチェア」は、安定した姿勢で身体を洗うための風呂イスです。背もたれだけでなく、ひじかけがついたタイプであれば、より一層座った姿勢が安定します。立ち上がり時にも、ひじかけにつかまりふらつきを防ぐことができるでしょう。おりたたみ式のものであれば、収納スペースにも困りません。よりスムーズに移動できるよう、座面が回転するタイプのものもあります。

洗体ブラシ

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ビューティーボディーウォッシュクロス」は、腕が不自由な方でも、無理なく身体を洗うことのできるブラシです。柄の先が曲がった状態となっているため、手が届かない場所でも無理せず洗えます。今まで洗身はすべて介助されていたという方にも、おすすめしたい福祉用具のひとつです。利用者が持つ本来の力を活用しながら、快適な入浴を支援することができます。

浴室の中の移動を安全にする介護用品

浴室内は濡れているため、転倒リスクの高い場所です。特に、自宅の浴室はスペースが限られているため、移動時には気をつけなくてはいけません。段差や障害物を解消し、スムーズに動作できる環境を意識しながら介護用品を選びましょう。

浴室すのこ

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TOTOエムテック 浴室すのこ」は、浴室と洗い場との段差を解消するために使用します。ポイントは、洗い場の一面に敷き詰め、すのこが動かないようにすること。高齢者にとっては、わずかな段差でもつまずく恐れがあるからです。材質は、濡れた状態でもすべらないものを選ぶようにしましょう。近年はユニットタイプになっており、浴室のスペースに合わせて自由にサイズを変更できるすのこも販売されています。

お風呂用車いす

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ウチエ シャワーラクV U型シート」は、普段の車いすから移乗し、そのまま入浴できる車いすです。入浴用車いす、シャワー用車いすとも呼ばれています。狭い浴室内でも移動しやすいよう、車輪は小回が効くコンパクト設計です。スペースが限られた居宅のお風呂でも、安心して洗髪・洗身が可能となります。折りたたみタイプも多く、収納場所に困らないこともポイントのひとつ。車いすで在宅生活をおくる方にとって、自宅でも安心安全に入浴できることは大きな喜びにつながるでしょう。

お風呂での介護用品のチェックポイント

介護士

お風呂で使う介護用品は、利用者の身体状況に合わせて選ぶことが大切です。手の不自由な方が利用する洗身ブラシや、バランスを保つ手すりのように、介護用品によって今までできなかったことが可能となるケースもあります。あれもこれもと揃えるのではなく、あくまでも症状に合わせた介護用品を選ぶように心がけましょう。そのためのアドバイスをしてくれるのが、「福祉用具専門相談員」です。福祉用具専門相談員は、福祉用具貸与事業を行う事業所に配置が義務つけられているほか、近年はさまざまな場で活躍しています。介護保険で福祉用具を利用する場合に必要な、福祉用具サービス計画書を作成する役割も担当しています。選定や使用方法の説明だけでなく、定期的な見直しまでしてくれるのが特徴です。

浴室の環境は家庭によってさまざまに異なるため、出入り口の広さや段差の高さ、浴槽の大きさなどの寸法を調べることも大切です。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員のような専門職と連携しながら、必要な道具を選んでいきましょう。居室から脱衣所、脱衣所で服を脱いでから浴室への移動など、利用者と一緒に一連の動作を確認してみるのもよいですね。利用者の意思を尊重しながら、お風呂の介護用品を選びましょう。入浴は「清潔を保つ」という尊厳の維持にも大きくかかわる行為です。健康を維持するためにも、日々の入浴を欠かすことはできません。自宅で安心安全に入浴するためには、必要に応じた介護用品を使用することがポイントです。介護保険を利用すれば、費用負担を軽減することもできます。介護する側、介護される側ともに心地よいお風呂の時間となるように、介護用品をうまく活用していきましょう。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。