2021.06.07

家事が大変な方におすすめな福祉用具・介護用品

最終更新日:2022.08.18
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

加齢や疾病などで身体が不自由になると、いままでできていた家事が大変だと感じるようになります。特に調理や洗濯などは、握力や手先の微妙な動きを伴うため工夫が必要です。また日常生活に関わる家事を行うことは、介護予防にも効果的だと言われています。そこで今回は、家事が大変な方におすすめの、家事を補助してくれる福祉用具や介護用品をご紹介します。

炊事用具・調理器具

家事_料理

認知症の方や身体の不自由な方が包丁や火を使うような調理を行うことは危ないからと、自然と台所から遠ざかってしまうこともあります。しかし介護施設では、レクリエーションとしてあえて調理を行うことがあります。その理由として、調理は先を使うため、五感を刺激し脳トレーニングに効果があるからです。また自ら調理した料理が目に見えるため、達成感を得ることもできます。そして何よりも「食べる」という行為が生きる喜びへとつながります。さらに認知症の方において調理動作は、手続き記憶として保持されるため、調理を行うメリットが大きいと言えます。また在宅においても、ありがとうやおいしかった、また作ってという家族のひとことが、本人のやる気や自信を引き出すきっかけにもつながります。ここでは認知症の方や身体の不自由な方でも調理を安易に行うことができる炊事用具や調理器具の種類や使い方をご紹介します。

まな板・調理台

まな板には、板から釘が突き出たものや、板の角にエッジが付いたものなどがあります。釘が突き出たまな板は、釘に野菜などを刺して固定し、ピーラーなどで皮をむくことができます。また板の角にエッジが付いたまな板は、エッジに食パンを固定し、切ったりジャムを塗ったりすることができます。調理台には、台の上でボウルやお皿を固定することができるバーや固定板がついたものがあります。調理台の上にボウルを固定し、片手で材料を混ぜることができます。また調理台の底面には吸盤も付いているので、調理台自体もしっかりと固定できます。どちらも片手での操作が可能なため、より効率的に調理が行えます。

包丁・皮むき器

包丁を扱うには、持ち手をしっかりと保持する握力とともに、食材をカットするために手首の関節を動かす必要があります。そのような場面で便利なのが、介護用の包丁や皮むき器です。包丁には、自由な角度に持ち手を調整することで、手首への負担を軽くして包丁に力が入れやすいものや、まな板の下にフックの金具を差し込み、そのフックに専用の包丁の穴を引っ掛けて押し下げて使用する、いわばテコの原理によって軽い力で切ることができるものがあります。持ち手を調節できる包丁は、手の不自由な方や車椅子を使用している方などが、扱いやすい向きに変えて包丁を使えるため便利です。またテコの原理によって軽い力で切ることができるものは、カボチャやサツマイモのような硬い食材も片手や車椅子に座った状態でも切ることができるためとても便利です。テーブルに固定して使用するものがあります。野菜を押し付けて動かすだけなので、握力が弱い方でも皮むきが可能です。

その他のキッチン用品

その他にも、片手や握力の低下した方が調理を行いやすいようサポートしてくれるキッチン用品があります。瓶やペットボトルを開けるときに便利なのが、専用のオープナーです。缶ジュースや缶詰のプルトップも開けることができます。ペットボトルを持つ力が弱い方に便利なのが、電動のオープナーです。オープナーを固定し、ボタンを押せば、自動的にキャップが開きます。手洗いに便利なのが、ハンドブラシです。吸盤で固定できるハンドブラシは、片手の不自由な方でも爪先の手入れや入れ歯の洗浄なども可能です。またブラシが固めにできているものであれば、野菜の洗浄にも使用できます。調理全般で使用するのに便利なのが、腰部分にワイヤーのはいったエプロンです。紐を結ばなくてもワンタッチで装着が可能で、撥水加工がされているものであれば、汚れを心配せず調理することができます。

洗濯・裁縫など

裁縫

毎日心地よく過ごすためにも、衣類は手入れの行き届いたものを着用したいものです。次に洗濯や裁縫などに便利な介護用品の種類と使い方をご紹介します。

物干しハンガー

握力の弱い方や片麻痺のある方にとっては、洗濯物を干す作業が困難です。そこで、洗濯物を持った手で洗濯バサミに挟める洗濯ハンガーが便利です。カゴを持ったまま洗濯物が干せるとともに、開放バーを握ると一度に洗濯物が外れます。また握るだけで洗濯物を掛けたり外したりすることができる簡単なハンガーも便利です。手先が不自由になると衣類をハンガーにかけることが不便に感じます。コンパクトに畳めるハンガーであれば、片手でも操作が可能です。畳んだ状態で衣類の首に通し、ワンタッチで広げれば簡単にハンガーにかけることができます。洗濯のときだけでなく、衣類を着脱するときにはとても便利です。

糸通し器

裁縫には、細い糸から太い糸までワンプッシュで糸が簡単に通せる糸通し器が便利です。糸と針をセットしボタンを押すだけで針穴に糸が通せます。視力が弱かったり手先の微妙な動きが難しかったりする方でも裁縫を続けることができます。

ハサミ

ハサミは、持ち手が輪のようにつながったユニバーサルデザインのハサミが便利です。立てて置けるうえに、持ち手を上から押すだけで紙が切れるため、握力が弱い方や手指が動かしづらい方でも簡単に使用できるハサミです。
また利き手が不自由な方にも便利で、菓子の袋を開けたり封筒を開けたりといった場面でも活用できます。

まとめ

洗濯

家事が大変な方におすすめの、家事を補助してくれる福祉用具や介護用品をご紹介しました。できる家事が増えることは、生活の質の向上にもつながるとともに、本人にとって大きな自信にもなります。身体が不自由になったからと家事を諦めるのではなく、さまざまな福祉用具や介護用品を上手に取り入れながら、できることを増やしていきましょう。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。