2021.06.07

薬の服用が大変な方におすすめな福祉用具・介護用品

最終更新日:2022.08.18
長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

薬の正しい服用は、高齢者の健康維持に欠かせないものです。一方で、心配されるのが薬の飲み忘れや飲みすぎ。服薬をサポートする介護用品は、家族の服薬管理に悩む方にもおすすめです。こちらでは、高齢者の服薬をサポートする介護用品を紹介していきます。

薬ケース

薬ケース

薬の種類が増えると、服薬のタイミングや回数が異なり、管理が難しくなってしまいます。「どの薬をいつ飲むのか、わからなくなってしまう」という方におすすめなのが、1回分の薬をまとめて管理できる薬ケースです。薬ケースは卓上型のほか、壁にかけるものや携帯用などさまざまなタイプがあります。

箱型

箱型の薬ケースは、1日4回、1週間分の小分けケースがひとまとめになったものです。1回分の薬を仕分けしておくことで、そのとき飲む薬をさっと取り出すことができます。その日、そのとき飲む薬を一目で判断できるため、飲みすぎ予防にも効果的です。ケースごとに色が違うものや、シールがついているものであれば、視力が低下した高齢者でも簡単に手に取ることができるでしょう。また、箱型ケースは認知症の方の介護にも効果的です。認知症の方は、薬を飲んだこと自体を忘れ、服薬を何度も要求することがあります。そのようなときにも、空になったケースを見てもらえば薬を飲んだことを納得してもらえるのです。空になったケースは別の場所へ片付けるようにすれば、服薬の有無が一目瞭然。およそ1週間分の薬をまとめてセットできるため、家族が遠方で暮らす方にとっても心強い介護用品となるでしょう。

壁掛け型

壁掛け型の薬ケースは、場所をとらないことが大きなポイントです。朝昼晩と寝る前の薬をポケットに入れ、1週間分管理できます。ポケットをマジックテープで着脱できるタイプなら、取り扱いも簡単。手先が不自由な方でも、小さな薬をこぼすことなく手に取ることができます。予定を自由に書きこめるタイプは、壁掛けカレンダーのように使うこともできるでしょう。

携帯型

外出先での服薬に便利なのが携帯型の薬ケースです。仕切りのついているものは、複数の薬を管理できます。手に取りやすいコンパクトサイズで、持ち運びしやすいこともポイント。フタが開け閉めしやすいものであるほど、高齢者の方は扱いやすいでしょう。ボタンを押すとケースから薬が出てくるタイプであれば、小さな薬を取り出すのも簡単です。外出先でも薬を落とすことなく、必要なときに必要な量を適切に服用できます。

ペンダント型

薬には、常用するものだけでなく、発作時に服用するタイプのものもあります。首から下げるペンダント型の薬ケースは、発作時の薬を身につけたい方におすすめです。ニトログリセリンのような、狭心症の発作に必要な薬も、すぐに取り出すことができます。ひとりで過ごすことが多い方にとっても、安心感の強い薬ケースです。

お薬アラーム

お薬アラーム

服薬の時間を知らせてくれるお薬アラームは、飲み忘れ防止に効果的です。アラームの設定によって、薬の飲み過ぎを防いでくれるタイプもあります。

音声・振動型

音声型のお薬アラームは、自分や身内の声を吹き込めることが大きなポイントです。音だけでは何の予報が忘れてしまう方にも、「薬の時間ですよ」と服薬を知らせることができます。振動がセットになっているものであれば、飲み忘れ予防により効果的。携帯サイズのアラームは、ポケットに入れて持ち運ぶことも可能です。

点滅型

服薬時刻を視覚で認知できるのが、点滅型のアラームです。タイマーをセットしておくと、服薬の時間をライトの点滅信号で知らせてくれます。ライトを止めずにいると、最後はブザーがなるため飲み忘れ防止により効果的です。薬を飲み忘れたことを、ライトの色で知らせてくれるタイプもあります。薬ケースや薬袋にセットしておけば、アラームを止めた手でそのまま薬を手に取ることができるのでおすすめです。

一体型

薬ケースと一体型になったアラームは、外出先に薬を携帯したいときに役立ちます。アラームを止めた手でケースのフタを開け、すぐに服薬できるのがポイントです。中が小分けになっているものであれば、1日分の薬を持ち運ぶこともできるでしょう。

服薬支援機

薬

「身内がそばにいないとき、ひとりで服薬できるか心配」「薬の管理のために、遠方の親を訪問するのが負担」など、服薬管理は家族にとって気がかりなものですよね。服薬支援機は、在宅生活を送る高齢者をサポートする介護用品。薬の管理、アラーム、服薬記録を1台で行うことができます。まずは、1回分ごとの薬をケースにセット。次に、朝昼晩、寝る前などに分け、1週間から1か月分のケースをカートリッジに入れます。時刻設定とともに、本体にカートリッジを装填。カートリッジは色ごとに区別されており、時刻の違うものは装填できないシステムになっています。服薬の時間は、わかりやすく聞きやすい声でお知らせ。ボタンを押すと、本体から1回分の薬が出てきます。薬は一度しか出てこないため、間違えて飲みすぎる心配もありません。内蔵されたUSBメモリーには、服薬状況が記録されます。薬を取り出した時間も記録されるため、家族の生活状況を確認したい方にもおすすめです。履歴をもとに、医師や看護師、ケアマネジャーなどと健康管理について連携を図ることもできるでしょう。また、介護現場でも活用されている服薬支援機は、高齢者の自立支援に役立つとされています。これまで声掛けによって服薬されていた方も、自分で服薬できるようになったと言われているのです。これまで遠方の家族に服薬を促されていた方も、ひとりでの服薬が可能となるでしょう。さらに、近年は同様の機能を持つ、かわいらしいロボット型の支援機も開発されています。気温を検知する機能も搭載され、高温になると熱中症を心配するよう声をかけてくれることもポイントです。アプリケーション機能もあるため、薬の在庫や服薬履歴などを遠方の家族が確認することもできますよ。

まとめ

高齢者

さまざまな疾病を抱え薬の種類が多くなると、飲むタイミングや量の管理が難しくなります。服薬をサポートする介護用品を使えば、飲み忘れや飲み過ぎを防ぐことが可能です。自分で服薬できるようになることは、自立を促し、介護負担軽減にもつながります。自立度や服薬回数に合わせ、1人ひとりの状況に応じた便利なサポート用品を選んでいきましょう。

長谷川 大祐
介護福祉士、福祉用具専門相談員、住環境コーディネータ2級

福祉用具貸与事業所に勤務し、住み慣れたご自宅での在宅生活で、お客様が安全・快適に過ごしていただけることをミッションとして福祉用具・住宅改修業務を通して携わる。また地域包括支援センターと連動して地域の老人会や自治会に向けて、住環境整備の大切さを啓発する勉強会を開催するなど、地域に根付いた活動に力を入れている。