2021.06.22

筋持久力・バランス能力を維持したい方へ|介護予防運動④

最終更新日:2021.06.22
加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

筋持久力トレーニングによる効果

筋力トレーニングをする男性

筋持久力を高めると、筋肉を長時間使っても疲れにくくなります。とくに高齢者の場合は、加齢や運動不足で筋持久力が低下しやすいため、トレーニングで高めていく必要があるでしょう。筋持久力が低下している人は、疲れやすく筋肉痛になりやすい特徴があります。トレーニングで筋持久力が高まれば、長時間歩いても疲れにくい体になり、筋肉痛の軽減により足腰の痛みを予防できます。高齢者の場合は、毎日の散歩や階段の上り下りで、疲れにくい体にしたいときにおすすめです。少し歩いただけで息切れを感じやすい人にも、筋持久力アップがいいでしょう。また、筋持久力が高まると、生活習慣病予防にも役立ちます。疲れにくく体力がある体になると、積極的に体を動かしやすくなるためです。

筋持久力トレーニングの具体例(介護予防運動)

筋力トレーニンググッズ

筋持久力を上げるトレーニングは、複数のやり方があります。前身の筋持久力を高めるなら、ウォーキングや水泳など全身を使う有酸素運動がおすすめです。特定の筋肉の持久力を高めたいときは、部位ごとにトレーニングを行う必要があります。高齢者の介護予防の場合は、実践する人のレベルや身体の状態に合わせて調節してください。無理してトレーニングをすると、故障の原因となります。一般の人の筋持久力の高め方は、高負荷なものが多くあります。高齢者がやるなら、負荷を高めすぎないよう注意してください。

足踏み体操

足踏み体操は全身運動で、全身の筋持久力を高める際におすすめです。特別な器具は必要なく、天候も左右されません。天気の良い日は外にウォーキングに出かけて、雨の日は室内で足踏み体操を取り入れるのもいいでしょう。人が立てるくらいのスペースを確保してください。その場で足踏みするように、足を左右交互に上げ下げします。できるだけ膝は高く上げるようにしましょう。体力がある方なら、膝を90度まで曲げるようにすると効果的です。その場で足踏みするときは、両手も前後に振ります。足だけでなく手も振ることで、全身の血流がアップします。体も温まり、血流が良くなって、肩こりや腰痛などの解消効果も感じられるでしょう。全身運動にするため、手を振るときは肩甲骨が動くのを意識してください。

サイドウォークスクワット

高齢者で筋持久力を上げたいなら、下半身の筋肉を鍛える方法がおすすめです。加齢により下半身の筋肉量が減りやすいため、スクワットで筋肉量を増やしましょう。スクワットだけだと単調になりやすいと感じる方は、変化を付けたサイドウォークスクワットを試してみてください。両足を肩幅くらいに開き、お尻を突き出すように腰を落とします。両手は腰に当てて、バランスをとるようにしてください。腰を落としたままの姿勢で、片方の足をもう片方の足に近づけます。足を揃えた状態から、横に片方の足をスライドさせましょう。再び、片方の足をもう片方の足に近づけて、スライドさせる動きを繰り返します。このときに、頭がふらつかないようにします。リズミカルに左右に足を動かしながら、楽しんでトレーニングしましょう。

ウォーキング

筋持久力を高めたいなら、歩く際にインターバルトレーニングを取り入れます。インターバルトレーニングとは、ゆっくり歩きと早歩きを組み合わせた方法です。負荷の異なる動きを繰り返すことで、普通に歩くより筋持久力アップが期待できます。ゆっくり3分歩いたら、早歩きを3分続けます。両方を3分ごとに繰り返しながら、1回30分ぐらいを目安に歩きましょう。歩幅は少し大きめを意識すると効果的です。ゆっくり歩くときと、早歩きでは体にかかる負荷が変わってきます。時計を見ながら、3分ごとに歩き方を変えてください。早歩きを加えることで、ウォーキングが単調にならず、続ける楽しみがあります。メリハリがつきやすく、短時間でも達成感を味わいやすいでしょう。

バランストレーニングによる効果

筋力トレーニングをする男性

高齢者が筋持久力アップと合わせてやりたいのが、バランス感覚を鍛えるトレーニングです。下半身の筋力がしっかりしていても、バランス感覚が悪いとふらつきやすくなります。バランス感覚は歩く、登る、走るなどの動作に必要です。ふらつきやすいと不安感からすり足になり、足が上がらずつまづきやすいため注意が必要です。高齢者がバランストレーニングをする場合は、転倒の恐れのない安全な方法を取り入れてください。バランスボールのような不安定な器具は、家庭ではおすすめできません。特別な器具を使わず、手軽に取り組める方法を選びましょう。高齢者がバランス感覚を鍛えると、素早い体の動きに対応できるようになります。足を高く上げても不安感が少なく、転倒防止にもなるでしょう。普段やっている運動のパフォーマンスも上がりやすくなり、運動効果アップが期待できます。

バランストレーニングの具体例(介護予防運動)

アヒルのおもちゃ

バランストレーニングの方法は、複数のやり方があります。高齢者の場合は、その人のレベルに合った方法を選ぶようにしてください。簡単なものでは、その場で片足を上げる方法があります。基本的に下半身を鍛える方法のため、足腰の強化にもおすすめです。つま先上げや、かかと上げなどを通して、バランス感覚を鍛えるようにしてください。家族のサポートが得られるときは、バランスディスクなど専用道具を使う方法もあります。道具を使う方法は転倒の恐れがあるため、専門家と一緒のトレーニングがおすすめです。

片足立ち

バランス感覚を鍛えるトレーニングに慣れていない方は、片足立ちから取り入れましょう。その場で、片足を上げて10秒~70秒くらいキープさせます。最初は、長くキープすることが難しいかもしれません。何度も繰り返しトレーニングを行うことで、バランス感覚が鍛えられていきます。また、年齢によってもキープできる秒数は短くなる場合があります。目標は、60代なら70秒くらいです。70代や80代になってくると、10秒~50秒くらいが目安になります。20秒以下しか片足で立てないと、転倒リスクがあるとされています。ふらつきやすい方は、短時間で足がついても構わないので、何度も繰り返しトレーニングすることが大切です。

つま先上げ

普段の生活で、つま先を上げてバランスを取ることが少ないため、ふらつきやすくなります。つま先を上げて、できる範囲でトレーニングしていきましょう。両手を胸の前に組みながら、つま先を上げていきます。股関節や足関節の柔軟性が少なくなっていると、バランスがとりにくいと感じられます。同時に、足の筋肉も鍛えられるためおすすめです。1日に10回2セットくらいを目安に続けてみてください。ふらつきやすい方は、家族のサポートがあると安心です。手すりの近くでトレーニングをすれば、転倒しそうになってもすぐに掴むことができます。周りに物がないか確認しながら、安全な場所でトレーニングをしてください。

かかと上げ

つま先上げとは逆に、かかとを上げるバランストレーニング方法です。同じく両腕を胸の前で組み、かかとを上げながらバランスを取っていきます。バランスを取ろうとして、かかとが上げ下げされるため、筋力アップにもおすすめです。ふらつきやすい方は、前方に倒れやすいため注意しましょう。不安な方は、手すりの近くでトレーニングをするか、家族の補助があると安心です。周りに物を置かないようしながら、安全にトレーニングをしてください。1日の目安は、10回を2セットくらいです。ふらつきやすい方は、かかとを高く上げず、無理のない範囲で行ってみてください。筋力がアップしてバランス感覚が鍛えられてくると、かかとを上げやすくなるでしょう。

筋持久力を高めよう

高齢者の介護予防では、筋持久力とバランス感覚を取り入れてみてください。どちらのトレーニングも、その人に合った方法を取り入れましょう。短期間で効果が現れるものではなく、毎日少しずつ続けて介護予防の効果が得られます。筋持久力が高まれば、買い物や趣味なども楽しめるようになるでしょう。バランス感覚を鍛えると、日常生活で不安が和らぎます。その人に足りない部分を補うため、無理のない範囲で少しずつトレーニングしてみてください。

加藤 隆三
理学療法士 地域リハビリテーション推進員"理学療法

資格取得後は整形外科におけるリハビリテーション部の立ち上げに従事。その他、中学や高校の野球チームでトレーナーとして携わる。現在は介護サービスにおいて、お客様の生きがいや生活の質を高めることをコンセプトとした生活リハビリの業務に従事している。その他、地域リハビリテーションに力を入れており、静岡市を中心に介護予防教室を30回以上開催し、自立支援型ケア会議に参加している。その他、福祉用具専門相談員に対して、福祉用具の選定方法などの講演を行う。