2021.10.08

高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは?|判断基準を紹介

最終更新日:2022.07.25
東海林 さおり
看護師

日常生活自立度とは、高齢者の身体状況を客観的な視点で分類したものです。要介護認定に必要な資料のひとつでもあります。こちらでは、日常生活自立度のくわしい内容や、要介護護認定を受ける際に気を付けたいポイントを紹介していきましょう。

目次

日常生活自立度(寝たきり度)とは?

介護_面談

食べる・起きる・着替える・排泄するといった日常生活動作(ADL)は、自立した日常生活を送るために欠かせないものです。これらの動作をどのくらい自分の力で行えるのか、段階分けしたものを日常生活自立度と呼びます。介護サービスを利用するための、要介護認定にも必要な指標です。また、日常生活自立度は、認定に必要な主治医意見書でも用いられます。高齢者に必要な介護サービスを見極めるうえでも、日常生活自立度は重要な役割を担っていると言えるでしょう。

障害高齢者の日常生活自立度と認知症高齢者の日常生活自立度がある

看護師

日常生活自立度には、障害高齢者または認知症高齢者を対象とした2つのタイプがあります。障害高齢者の日常生活自立度とは、高齢者の屋内外での自立度を判定するものです。認知症高齢者が対象のタイプは、細かく9段階に分類されます。自立度によって必要と思われる介護サービスも異なるため、くわしい内容を確認していきましょう。

障害高齢者の日常生活自立度の4段階

障害高齢者の日常生活自立度は、以下の4段階にランク分けされます。自立度により、各項目がさらに細かく分類されるのが特徴です。

ランクJ(生活自立)

「歩行に不安はあるが、家族の介助は必要ない」「買い物や通院は見守りなしでもできる」といった状態は、ランクJにあたると考えられます。バスや電車といった交通機関を利用できる場合には、さらに「J-1」に分類されます。「交通機関の利用には不安があるが、隣近所までなら自分で外出できる」というケースは、「J-2」です。

ランクA(準寝たきり)

「外出はひとりでは不安」「屋内では横になることが多い」という高齢者はランクAにあたる状態です。屋内での生活を基本とし、介助されながら外出する高齢者は「A-1」と判定されます。食事や排泄の際だけ起きて、あまり外出をせずに過ごしている状態は「A-2」です。

ランクB(寝たきり)

「寝たきり」と呼ばれる横になって過ごす状態は、「B」と「C」2つに分類されます。「ランクB」は、1日の大部分をベッドで過ごす状態です。日常生活に介助が必要であり、座った姿勢が保てる方が対象となります。食事や排泄のときにベッドから離れる場合は、「B-1」にあたります。さらに、車いすへの乗り移りに介助が必要な状態は、「B-2」です。日常生活で介助が必要な場面が多く、さまざまな介護サービスが求められる状態だと言えるでしょう。

ランクC(寝たきり)

着替えや食事、排泄などに介助が必要な状態です。食事もベッド上でとることが多く、トイレでの排泄も困難であると考えられます。同居する家族が介助する場合、体力も必要です。「ランクC」のなかでも「C-1」は自力で寝返りが打てる場合で、寝返りを打つために介助が必要な状態は「C-2」です。

認知症高齢者の日常生活自立度の9段階

認知症高齢者の自立度は、症状や行動、意思疎通の度合いによって9段階の評価基準があります。

Ⅰ)何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内および社会的にほぼ自立している状態

認知症であっても、食事や更衣などを自分で行える状態です。家族内だけでなく、周囲との関わり合いも問題ない状態を意味します。

Ⅱ)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られるが、誰かが注意していれば自立できる状態

認知症の症状が進行すると、記憶力が低下したり、自分のいる場所が理解できなくなったりすることもあるでしょう。症状による困難を感じていても、周囲のフォローによって自立できる場合は、「Ⅱ」であると判定されます。家庭内と家庭外での状況により、さらに細かく分類される項目です。

Ⅱa)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で見られるが、誰かが注意していれば自立できる状態

「買い物ができない」「外出先で道に迷う」といった問題が起こるのも、認知症の特徴です。認知機能が低下し、これまでできていたような事務作業や金銭管理も難しくなります。「Ⅱa」は、周囲のフォローがあれば、これらの問題があっても自立できる状態です。

Ⅱb)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭内で見られても、誰かが注意していれば自立できる状態

認知症の症状に対し、屋内でのサポートが求められる状態です。服薬管理にも、声かけや確認が必要となります。電話対応や訪問者の対応も難しく、1人で家にいることに不安を感じることも多いケースです。

Ⅲ)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする状態

日常生活が困難となり、介護が必要な状態です。症状が出る時間帯によって、さらに「a」と「b」に分類されます。徘徊や大声、暴言といった症状も見られ、家族の介護負担も大きい状態だと考えられるでしょう。

Ⅲa)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが日中を中心に見られ、介護を必要とする状態

「声をかけないと食事の時間が認識できない」「自分では着替えや排泄が難しい」など、特に日中に介護が必要な状態です。多くの日常動作に家族の見守りが必要となります。基本が在宅生活とする場合も、訪問介護や通所介護といった、介護サービスを検討する必要があるでしょう。

Ⅲb)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが夜間を中心に見られ、介護を必要とする状態

夜間時にも問題行動が見られる場合は、「Ⅲb」と判定されます。生活リズムが昼夜逆転し、夜間も活動的なケースもあるでしょう。鍵を開けて外出してしまう夜間徘徊も考えられます。

Ⅳ)日常生活に支障をきたすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする状態

「Ⅳ」と判定される場合は「Ⅲ」の状態が進行し、常に介護が必要になったときです。グループホームや特別養護老人ホームといった、施設サービスが必要と思われる状態です。

M)著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする状態

妄想やせん妄、自傷行為と言った精神症状が持続している場合は「M」に該当します。周囲の人や自分自身を傷つけてしまう恐れもあるため、専門医による診断や治療が必要です。

要介護認定調査の流れ

介護_面談

要介護認定調査は、以下のような流れで行われます。家族に介護が必要になり、介護サービスを利用したいときは、まずは市区町村の担当窓口に相談してみましょう。

● 窓口への申請
● 訪問調査
● 一次判定
● 二次判定
● 結果通知

訪問調査は、市区町村の担当者が高齢者と直接面談をするものです。その後、調査結果をもとに、コンピューターが一次判定を実施。要介護状態を7つの区分に分類します。二次判定は、介護認定審査会が行う判定会議です。一次判定の結果と主治医意見書の内容を参考に「要支援1~2」または「要介護1~5」に介護度を判定します。自治体によって異なるものの、申請から30日以内に、認定結果と介護保険被保険者証が郵送されるケースが多いでしょう。

介護認定調査の際に注意すること

介護認定調査を受ける際に心がけたいのが、普段どおりの状況を伝えることです。特に、認知症の症状は日によって異なります。身体状況に応じた介護認定を受けるためにも、普段の様子や介護の内容はメモしておきましょう。本人や家族が困っていることを、メモにまとめておくのもおすすめです。事前に介護認定の基準を把握しておけば、介護サービスを相談する際の目安にもなります。

家族の介護状態を把握しておこう

車イス

日常生活自立度は、高齢者の介護度を判定するためのものです。介護度を客観的に捉える判定基準は、家族の介護状態を知る目安のひとつにもなります。「思うような判定結果が得られなかった」という結果にならないためにも、それぞれの基準を理解したうえで認定調査にのぞみ、高齢者の生活をサポートしていきましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。