2021.05.26

ロコモティブシンドロームのチェック方法と予防法

最終更新日:2022.06.23
東海林 さおり
看護師

「最近なんだか足腰が弱った気がする」「外出の機会が減り、下肢筋力に自信がない」。このような状態は、ロコモティブシンドロームが始まっている可能性が考えられます。ロコモティブシンドロームの予防は、健康的な日々を過ごしたい高齢者に効果的。こちらでは、ロコモティブシンドロームのチェック方法や予防法について解説していきます。

ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは?

女性

健康な方であっても、筋力は年齢を重ねるごとに低下していきます。ロコモティブシンドロームとは、このような筋力低下や関節などの疾患により、運動機能が低下した状態を意味します。ロコモ自体は病気ではないものの、立ったり歩いたりといった移動動作が困難になってしまうのです。そのため、ロコモチェックをしてロコモティブシンドロームを予防をしていくことで、寝たきりや要介護状態への移行を阻止することにつながると言われています。

ロコモティブシンドロームの3大要因

ロコモティブシンドロームの3大要因としてあげられるのが「筋力の低下」、「バランス能力の低下」、「運動器の疾患」です。前述したように、正常な身体活動を行うための筋力は、年齢とともに徐々に低下していきます。思わぬところでつまずいたり、階段の上り下りが苦痛になったりするのも筋力の低下によるものです。また、筋力とともにバランス能力が低下することで、転倒の危険性も高くなります。骨がもろくなった高齢者が転倒すると、思わぬ怪我へとつながる可能性もあるのです。怪我が原因で運動不足となり、ロコモティブシンドロームが悪化するケースもあるでしょう。さらに、関節や骨、筋肉といった運動器の疾患もロコモティブシンドロームの要因となります。変形性関節症や関節リウマチなどは、年齢を重ねるごとに発症率が高まる疾患です。痛みが生じるだけでなく、骨の変形を引き起こすため、運動をしたくても思うように体を動かせなくなってしまいます。結果、運動不足へとつながり、ロコモティブシンドロームが進行していくと考えられるのです。

ロコモティブシンドロームとフレイルの関係

「フレイル」とは、健康な状態と要介護状態の中間にあり、身体機能や認知機能に低下が見られる状態を表す言葉です。「Frailty(虚弱)」を意味し、適切な治療や予防で状態が改善する可能性もあります。フレイルは身体的、精神・心理的、社会的の3つの要素によって構成されます。フレイルを治療および予防するためには、3つの側面から総合的にアプローチすることが大切です。ロコモティブシンドロームは、フレイルの中でも特に身体的要素と深い関わり合いを持ちます。ロコモティブシンドロームによる運動機能の低下を予防することで、基礎代謝をアップさせ、エネルギー消費を活発にし食欲増進へとつなげることができるでしょう。身体的機能が向上すれば社会的交流も可能となり、認知症や引きこもりの予防にもつながると考えられています。

ロコモかどうかチェックする ロコモ度テスト

記入

年齢を重ねたり外出の機会が少なくなったりすると、「もしかしてロコモティブシンドロームかも?」と不安になることもあるのではないでしょうか。ロコモティブシンドロームは立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25の3つのテストによって進行度合いを判定します。ロコモティブシンドロームが始まっている初期の段階は、ロコモ度1。ロコモ度2は、ロコモが徐々に進行している状態です。ロコモ度3になると、社会生活に支障をきたし、自立できなくなるリスクが高まっていると考えられます。

立ち上がりテスト

立ち上がりテストは、下肢筋力を測定するためのテストです。台に腰かけた状態から、片足、または両足で立ち上がれるかによってロコモ度を判定します。台の高さは10cmから40cmまで4種類あり、低くなるほど下肢筋力が必要となるのがポイントです。テストは、まず40cmの台から始めます。両腕を前に組み台に腰かけ、両足は肩幅に広げた状態が基本姿勢です。反動をつけずに立ち上がり、3秒間姿勢を保持できれば片足でのテストへ移ります。40cmの台を片足で立ち上がれなかった場合には、30cmから両足の立ち上がりにチャレンジしましょう。最終的に立ち上がりが可能な台の高さが、ロコモ度の判定基準となります。

2ステップテスト

加齢により筋力が低下すると、すり足になり歩幅も小さくなっていきます。2ステップテストでは、歩幅から下肢筋力やバランス能力を判定することが可能です。両足を揃えた状態からできる限り大幅で2歩歩き、2ステップ値と呼ばれる測定値を算出します。

2ステップ値の算出方法は、「2歩幅(cm)÷身長(cm)」です。

2ステップ値が1.1以上1.3未満の場合は、ロコモ度1にあたる状態。0.9以上1.1未満になると、移動機能の低下が進行したロコモ度2にあたります。2ステップ値が0.9未満になるとロコモ度3の状態と考えられるため、整形外科の専門医による治療も必要となってくるでしょう。

ロコモ25身体状態・生活状況判定方法

ロコモ25とは、身体の状態や生活状況などからロコモ度を判定するテストです。全部で25問の質問に回答し、点数によってロコモ度を調べます。質問内容は、直近1カ月間の身体の痛みや移動動作の困難度などです。回答は5段階に分かれており、各項目によって点数が異なる仕組みとなっています。「親しい友人との付き合いを控えているか」「転倒や今後歩けないのではという不安があるか」など、ロコモティブシンドロームによる心理状況の変化についてチェックしていることもポイントです。

ロコトレでロコモティブシンドロームを予防

ストレッチ

ロコモ度3と判定された場合には、運動器の疾患があることが多いため専門医による診療が必要です。ロコモ度1から2の場合には、筋力やバランス力をトレーニングしながらロコモティブシンドロームの進行を予防していくと良いでしょう。また、ロコモティブシンドロームではなかったというときにも、筋力トレーニングをしながらロコモティブシンドロームを予防するのが効果的です。ここからは、ロコモティブシンドローム予防に役立つ「ロコトレ」の具体的な方法についてチェックしていきましょう。

片足立ち

片足立ちは、バランス能力を高めるためのトレーニングです。床に足がつかない程度に片足を持ち上げた状態を、左右それぞれ1分間ほどキープします。回数の目安は、左右それぞれ1セットを1日に3セットです。前かがみにならないよう、姿勢はまっすぐ保ちながら行いましょう。同時に、転倒しないよう安全確保のため、必ずつかまるものがある場所で行うことも大切。安定したテーブルや椅子、壁などの近くで行い、身体状況に応じて手をつくなど無理をしないことも必要です。

スクワット

下肢筋力アップに効果的なロコトレが「スクワット」です。両足を肩幅に広げた状態から、2~3秒間かけ、ゆっくりと膝を曲げていきます。両手は前へつきだし、お尻は後ろへ引くように意識しましょう。ひざはつま先よりも前に出さないこともポイントです。目安となる回数は、5~6回を1セットに1日3セット。スクワットができない場合には、椅子に腰かけた状態から机に手をつき、ゆっくり立ち座りの動作を繰り返すだけでも効果的です。動作中は息を止めないように気を付け、状態に応じて回数やセット数を増やしても良いでしょう。

まとめ

ストレッチ

ロコモティブシンドロームは、なるべく早い段階でチェックをして発見し、適切な運動や治療を行うことが大切です。ロコトレによりロコモティブシンドロームを予防することは、「健康寿命」と呼ばれる元気な状態を維持することへとつながります。無理をせずできることからコツコツと取り組み、運動機能を維持向上させていきましょう。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。