2021.10.05

フレイルとは?サルコペニアやロコモとの関係、予防対策方法まで

最終更新日:2022.06.22
東海林 さおり
看護師

近年、フレイルという言葉を耳にする機会が増えてきました。フレイルとは簡単に言えば「加齢によって心身が衰えた状態」のことで、フレイル予防をすることが健康に若々しく生きていくことにつながると考えられています。フレイルとは何か、またどのように予防対策ができるのか、同じく健康に生きていくために予防したいサルコペニアやロコモについても見ていきましょう。

フレイルとは?

高齢者

フレイルとは英語の「虚弱であること」や「老齢になって弱っていること」を示すfrailtyから作られた言葉ですが、単に虚弱や老齢による衰えを表しているのではありません。フレイルにはさまざまな定義がありますが、一般的には「老齢により心身が衰えてはいるものの、適切な介入を行うことで生活機能を向上させることが可能な状態」のことです。つまり、自分で自分のことができる健康な状態と、サポートが必要な介護が必要な状態の中間的な位置づけともいえます。フレイルの厄介な点は、心身機能が衰えるだけでは終わらないことです。世界の最新研究でも、フレイルになると病気にもかかりやすくなることがわかっています。すなわち、比較的若いうちからフレイル予備軍になった人は、早々に病気にかかって、機能的な不健康と病気という「不健康2セット」が揃ってしまいます。要介護状態で人生の後半を生きていかなくてはならない危険があります。だからこそ、まずは現在フレイルであるのかチェックして、運動や食事なども見直していきましょう。

フレイルかどうかの診断基準

フレイルかどうかの診断基準

フレイルの定義は成果で200種類以上ありますが、大まかにいうと「身体の縮み、疲れやすさ、活動の少なさ、動作の緩慢さ、力の弱々しさ」の5つが一般的なフレイル要素です。フレイルを判断する基準は多数ありますが、その中でもシンプルにチェックできる「簡易フレイルインデックス」を紹介します。3つ以上に該当する場合はフレイル、1つないし2つに該当する場合はプレフレイル、つまりフレイルの前段階と判断することができるでしょう。

 

評価基準

1

(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがしますか?

2

1階から2階までのひとつづきの階段を上までのぼりきることができますか?

3

400メートル(1区画)を歩けますか?

4

5つより多い種類の病気にかかっていますか?

5

最近6か月間で2~3㎏以上(5%を超える)体重の減少がありましたか?

【参考】ヘルスプロモーション研究センター

サルコペニアとは?

サルコペニアとは

サルコペニアとは、主に加齢や疾患によって筋肉量が減っている状態を指す言葉です。フレイルは加齢による心身の衰え、指標によっては加齢による社会性の衰えを指す言葉なので、サルコペニアが生じて身体的に衰えると、結果的にはフレイルにもつながるでしょう。サルコペニアになると、転倒リスクが高まります。また、転倒から寝たきりになり、要介護状態になることもあるでしょう。サルコペニアは加齢だけでなく、運動量の低下や栄養不足からも引き起こされることがあるので、普段から定期的に運動の機会を持ち、タンパク質を豊富に含む食事をしっかりと摂ることを心がけましょう。

原因別によるサルコペニアの分類

サルコペニアの分類

主に加齢によるサルコペニアを「一次性サルコペニア」、加齢以外を原因とするサルコペニアを「二次性サルコペニア」と区分けすることもあります。それぞれについて見ていきましょう。

一次性サルコペニア

加齢以外に筋肉量が減った原因が見当たらない場合は、一次性サルコペニアと判断します。加齢は誰にでも起こる自然現象なので、一次性サルコペニアも誰にでも起こり得る状態といえるでしょう。

二次性サルコペニア

加齢以外に筋肉量が減る原因がある場合は、二次性サルコペニアと判断します。二次性サルコペニアの原因は、主に活動と疾患、栄養の3つです。例えば不活発な状態が続くと、活動を原因とする二次性サルコペニアが起こることがあります。本人の意思で不活発になることもありますし、病気やケガが原因で寝たきりになったことで、やむを得ず不活発になることもあるでしょう。また、心臓や肺に疾患が生じ、運動を制限されることで二次性サルコペニアになることがあります。その他にもリウマチや、がんなどにより動きづらくなることもあるでしょう。食事の摂取量を意図的に減らしたために筋肉量が減るならば、栄養を原因とする二次性サルコペニアと考えられます。本人の意思とは関係なく、消化管に疾患を生じて栄養吸収がしづらくなったことや、服薬等の副作用により食欲不振になって栄養状態が悪化するケースもあるでしょう。

サルコペニアかどうかの診断基準

サルコペニアかどうかの診断基準

サルコペニアは加齢以外を原因として生じることもありますが、日本では65歳以上の高齢者において筋肉量が減っている状態をサルコペニアと判断することが一般的です。以下の条件全てに該当する場合は、サルコペニアと判断できるでしょう。

  • ●65歳以上である
  • ●普段の歩行速度が1秒あたり1m未満、もしくは男性で握力が25kg未満あるいは女性で握力が20kg未満であること
  • ●BMIが18.0未満であること、もしくは下腿囲が30cm未満であること

なお、BMIとは体重(kg)を身長(m)の二乗で割った数値です。体重が48kg、身長が160cmならば、BMIは48÷(1.6×1.6)=18.75となります。

サルコペニアとフレイル、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の関係

ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドローム(ロコモ)とは、移動機能が低下してきた状態を示す言葉です。片足あるいは両足で立ち上がる際に困難を感じたり、大股で歩くことが難しくなったりしてきたときは、ロコモと判断されることがあります。進行すると将来、介護や介助が必要になる危険性が高いと定義されており、寝たきり生活の第1歩を踏みだした状態とも言えます。フレイルとサルコペニア、ロコモはそれぞれ密接な関係があります。フレイルによって心身ともに衰えた状態になることで、運動量が減りサルコペニアやロコモになることもあります。反対にロコモがきっかけで動くことが困難となり、運動量の減少とともに筋肉も衰えサルコペニアに繋がります。外出する機会が減ることにもなるため、社会的にも身体的にも衰え、結果的にフレイルになることもあるでしょう。

フレイル対策

フレイル対策の食事

フレイル対策には、運動と食事に注意をすることが大切です。適度なトレーニングで筋肉量を維持し、何事にも偏った食べ方をせずに、それぞれの食品を少しずつ食べましょう。

フレイル予防の運動

フレイル予防の運動フレイル予防の運動

「トレーニング」というと、多くの人が始めるのがジョギングです。しかし、ジョギングはひざや足首に負担がかかり、関節を痛めるリスクがあります。そのため、フレイル対策として筋肉を鍛えるには、筋トレがおすすめです。過度なバーベル体操のようなものは避け、きつくない筋トレを細く長く続けることが大切です。体幹と下肢を鍛えることで、サルコペニアの予防につながることがあります。同時に、無理のない範囲で、有酸素運動を行うとより良いです。例えば、軽いウォーキングやポールウォーク、買い物などです。1日10分以上はストレッチを行うか、20分以上のウォーキングを行うことで、筋肉量の低下を予防していきましょう。毎日運動することが難しい場合は、週に2、3回でもしっかりと運動する機会をつくります。筋力トレーニングやスポーツを行い、身体を動かす習慣を身につけていきましょう。

フレイル予防の食事

さあにぎやかにいただく

【参照】東京都健康長寿医療センター研究所「いろいろ食べポ」

フレイル対策の食事に『さあにぎやか』に『いただく』という言葉があります。「さ(魚)あ(油)に(肉)ぎ(牛乳、乳製品)や(野菜)か(海藻)」に「い(芋)た(卵)だ(大豆製品)く(果物)」。10の食品群すべてを毎日食べ続けるのは大変な為、7群を毎日食べられれば良いとされています。バランスよくいろいろなものを食べる習慣が、フレイル予防には不可欠です。さまざまな栄養素をまんべんなく摂取するためにも、豊富な食材を使った和食をしっかりと食べましょう。また、食品数だけではなく、量についても配慮が大切です。例えば、「朝ごはんの味噌汁にわかめが少しだけ入っていたら、海藻類は食べたことになるのか」といった疑問があります。フレイル予防には、エネルギー量もある程度確保する必要があります。そこで、この10種類に加えて、ご飯や麺類、パン類のいずれかを毎日食べるようにしましょう。

健康的な生活を送ろう

フレイルは要介護や要支援の前段階とも言われます。いつまでも健康で元気に生活するためにも、普段から食事や運動に意識を払う必要があるでしょう。ボランティアや趣味など、外出の機会を増やすことも、運動面や社会面で必要なことです。まずは定期的にスポーツやウォーキングをする習慣をつけ、筋肉量の減少の予防をすることから始めてみてください。

東海林 さおり
看護師

看護師資格修得後、病棟勤務・透析クリニック・精神科で『患者さん一人ひとりに寄り添う看護』の実践を心掛けてきた。また看護師長の経験を活かし現在はナーススーパーバイザーとして看護師からの相談や調整などの看護管理に取り組んでいる。