仕事と介護の両立が難しいと、介護離職という選択を余儀なくされることがあります。実際に介護離職者は増えており、年に数万人もの方が介護や看護を理由に離職を選んでいます。介護離職を防ぐために働きながらで出来る事を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
介護離職を防ぐための働きながら介護するコツ
介護離職を防ぐためにも、介護が始まる前に家族会議をして介護をどのように分担するか話し合っておくことが重要です。また、地域の医療・介護サービスがどこにあるか、どのように利用できるかを確認しておくことも、介護の負担軽減に役立ちます。どのような介護を希望するか、親や義父母に尋ねておくことも大切です。自宅介護を希望するのか、施設への入所を希望するのかいくつか選択肢を検討しておきましょう。
働きながらできることをチェック
状況にもよりますが、仕事と介護を両立できることもあります。働きながら何ができるかを知り、現在の自分の状態を把握しておきましょう。
親がまだ元気な状態
介護が始まる前にできることを紹介します。いずれも今すぐ始められることばかりなので、時間があるときに準備しておきましょう。
仕事と介護の両立への意識を持つ
働きながら介護をするためには、家族で協力し、介護の負担が特定の人に偏らないようにすることが必要です。どのようなスケジュールで動くことができるのか、できる範囲でシミュレーションしておきましょう。後述しますが、通院の付き添いが必要なときなどは「介護休暇」、数週間、数か月単位の集中的な介護に関しては「介護休業」を利用できることがあります。
仕事と介護の両立支援制度を知る
職場によっては、介護が両立しやすくなる独自の制度を実施していることがあります。どのような制度が利用できるのか、一度、就業規則を確認しておきましょう。また、独自の介護支援制度がない場合でも、介護休暇や介護休業を利用できることがあります。介護休暇は年に5日まで介護を目的とした休みを取得できる制度で、介護休業は被介護者1人につきトータルで93日まで休業できる制度です。介護休業を取得する際には、介護休業給付金を受け取れます。上限額はありますが、原則として休業開始時の賃金日額×休業日数×67%を受給することが可能です。
職場の相談窓口を確認する
介護が必要になったことを会社へ報告をする際、あるいは両立支援制度や休業給付金制度を利用する際の相談窓口を確認しておきましょう。介護が始まる前に利用できる制度について尋ねておくならば、いつのタイミングで両立支援制度を取得することがベストか等についてのアドバイスを受けられることがあります。
介護の情報や知識を得る(事前に行うべきことの把握)
介護が始まる前に、現状を把握しておくことが大切です。家族の誰がどの程度介護を行えるのか、ケアマネージャーとの連絡はどう取ることができるのか、確認しておきましょう。また、地域で利用できる高齢者施設や介護サービスについての確認も必要です。
業務の効率化・見える化を心掛ける
自分自身や家族の業務についても把握しておくことが大切です。介護が始まってからではスケジュール調整が難しく、つい最初に介護を担当した人が中心となって介護を進めていき、負担に偏りが生じかねません。日ごろから各自の担当業務を周知し、家族同士で介護分担を相談しやすいように連絡経路を作成しておきます。
親や家族とのコミュニケーション(親の意思や連絡方法を確認し、整える)
突然の介護に備えるために、日ごろから親の意思を確認しておくことが重要です。親がどのような介護を望んでいるのか、また、どのような交友関係を持っているのか、かかりつけの病院や通所施設等についても把握しておきましょう。万が一のためにも、エンディングノートの作成を勧めることができるかもしれません。どのような資産があるのか、管理や分配についてどのような希望があるのか、加入している民間保険についてもエンディングノートを使って整理できるでしょう。
親の生活状況をよく観察し、さりげなく見守る
親の生活状況を観察することでも、介護に備えることができます。日常生活でどのような点がしづらくなっているのか、忘れやすいことが増えたのか等を観察することで、介護が始まるタイミングを予想できるかもしれません。親の介護や生活に関わる事柄を「ケアノート」にまとめておくことができます。いざというときにスムーズに対応するためにも、親が希望する介護・医療、生活パターン、交友関係、治療歴が誰にでも分かる状態にしておきましょう。
自分のワーク・ライフ・ケア・バランスをイメージする
仕事と介護を両立することを「ワーク・ライフ・ケア・バランス」と言います。要介護の状態によって、職場の介護支援制度や介護休業制度をどのように利用するか、また、家庭生活にどのような変化が必要かをシミュレーションしておきましょう。
介護が必要な状態
すでに介護が必要な状態になったときは、どのように対応することができるでしょうか。働きながらできることをリストで紹介しますので、ぜひお役立てください。
職場の窓口や上司に相談する(両立課題の共有)
仕事と介護を両立するためには、職場での理解が不可欠です。具体的な状況や個人的な要望等を整理し、職場の相談窓口や上司に両立のためにどんな工夫ができるのか相談してみましょう。
上司や人事部署への継続的な報告
介護が続いている限り、定期的に上司や人事部署に進捗を報告することで、理解を得られやすくなります。密なコミュニケーションを忘れず、継続的な報告を実施していきましょう。
仕事と介護の両立支援制度の活用(仕事介護の両立プランをたてる)
職場で利用できる両立支援制度を確認したら、次のステップとして、どう活用するのか具体的なプランを立てることが必要になります。利用できる日数や回数に制限があることも多いので、できるだけ効果的に活用できるように工夫しましょう。
働き方の工夫を行う
自分自身の働き方を見直し、介護との両立がしやすい形を模索していきます。例えば、短時間勤務、就業・始業時間の繰り上げ・繰り下げ、フレックスタイム、テレワーク等を利用できるかもしれません。
社内外のネットワーク作り(孤立しない)
社内はもちろん、社外にもネットワークを持ち、孤立しないことが重要です。公的サービスや民間サービスを活用することで介護の負担を軽減するようにしましょう。
自分自身の心身の健康管理
介護する人が健康を損ねることがないよう、自分自身の心身の健康管理を務めていきます。例えば、誰かに相談することや完璧を目指しすぎないこと、チームで介護を行うこと等で健康を維持しやすくなるでしょう。
介護と仕事を両立しよう
介護も大切ですが、仕事も大切です。親がどのような介護を望むか、介護をどのように分担できるのか家族で話し合い、公的制度や民間サービスについて知っておくことができるでしょう。また、親の状態や自身の職場の制度なども知っておくことが必要です。ワーク・ライフ・ケア・バランスを実現するためにも早めに準備を始めましょう。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。