2021.11.02

働きながら介護をする方へ|介護の進め方を紹介 介護導入期

最終更新日:2021.11.02
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

親が入院し突然介護が必要になった場合、多くの人は働きながら介護をすることになります。いつかはと考えていても、身内の介護は突然やってくるものです。今回は、導入期と言われる介護が必要になった時期を中心に、介護の進め方を紹介していきます。

ステップ1現状の確認

介護

働きながら介護をする場合、まずは現状を確認する必要があります。特に、突然介護が必要になったときには、身体状況を参考に介護サービスを検討しなくてはいけません。親や家族が突然入院し、介護が必要になった場合の流れを確認していきましょう。

ADLを把握

ADLとは、自立した暮らしに必要な、次のような8つの生活動作を指します。

● 起居動作(ききょどうさ)
● 移乗(いじょう)
● 移動
● 食事
● 更衣
● 排泄
● 入浴
● 整容(せいよう)

起居動作とは、ベッドや布団から寝起きする動作のことです。移乗とは、ベッドから車いす、車いすからトイレの便座などに乗り移る動作を意味します。普段何気なく行う更衣や食事も、日常生活には欠かせません。身なりを清潔に保つ整容も、ADLに含まれます。家族に突然介護が必要になった場合、これらのADLがどれくらい維持できているのか把握することが大切です。日常生活の自立度により、利用できる介護サービスは異なるからです。病院に入院した場合、ADLはリハビリスタッフを中心に、医療全体がチームとなって評価します。介護する家族としても、ADLが今後の介護に大きく関わることを覚えておきましょう。

病気がある場合

家族に病気がある場合は、病状に合わせて先を見据える必要があります。退院が見込めるのであれば、リハビリの目標を立てることも大切です。「自分で歩けるようになる」「手すりを使用して移動する」など、在宅生活を想定したゴールを設けます。介護度が高く、働きながらの介護が難しいと思われる場合は、介護施設への転所を検討しなくてはいけません。いずれも大切なのは、病気である家族の心身状態を把握することです。「本人がどう過ごしたいのか」という意思を尊重しながら、介護の方向性を決定していきましょう。

専門職と連携

介護には、専門スタッフとの連携を欠かすことはできません。担当医師や看護師のほか、リハビリスタッフも重要な存在です。突然の入院で介護が必要になると、誰もが不安になったり動揺したりするものです。入院生活や退院後の介護に不安を感じたときは、医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。医療ソーシャルワーカーは、医療機関に所属し、患者や家族の悩みに対応する相談員です。「働きながらの介護に不安がある」「どんなサービスを利用したらよいか分からない」といった悩みにも、柔軟に対応してくれます。また、すでに担当のケアマネジャーがいる場合は、医療スタッフから得た情報を共有します。利用中の介護サービスの内容を変更する必要もあるため、なるべく早く連携を図るように努めましょう。

ワンポイントアドバイス

働きながら介護をするときには、早い段階で以下のポイントをおさえることが大切です。特に、休暇については早めに会社に相談しましょう。

休暇を取得するタイミング

介護休暇は、仕事と介護の両立を目的に設けられている休暇です。家族1人に対し、年5日まで取得できます。1日または数時間単位で利用できるため、急な入退院への対応が必要な時期に適した休暇です。有給か無給か会社の規定によるため、詳細はよく確認しておきましょう。

パーソナルデータの記録

パーソナルデータとは、氏名や年齢、住所といった基本情報に、普段の生活習慣や既往歴などを加えたデータのことです。これらをまとめておくと、緊急時に医師や看護師に情報を伝えられます。介護が必要になった段階でまとめるのも効果的ですが、おすすめは普段からパーソナルデータを記録しておくことです。一緒に暮らす家族の情報は、身近であるほど見落とす点が多いもの。特に、突然の入院時にはうろたえてしまいがちです。遠方に住む家族の場合は、定期的にパーソナルデータをまとめることで、状態確認できるというメリットもあるでしょう。

ステップ2地域包括支援センターで情報収集

女性

介護が必要な家族の状況を把握したら、次は地域包括支援センターで情報収集をしましょう。地域包括支援センターは介護予防の役割も担うため、普段から情報をチェックしておくのもおすすめです。

地域包括支援センターとは?

地域包括支援センターは、各市町村が設置主体となる介護福祉の相談窓口です。保健師や社会福祉士、主任介護支援専門員などが配置され、高齢者やその家族の暮らしを支援します。地域包括支援センターの利用対象者は、その地域に住む65歳以上の高齢者と支援活動に関わる人です。そのため、遠方に暮らす親の介護を相談したい場合には、親の住所を対象とした地域包括支援センターが問い合わせ先となります。遠方で出向くことができない場合は、電話相談も可能です。地域包括支援センターでは、働きながら介護をするための介護サービスを紹介してもらうことができます。介護サービスを利用するためには、計画書であるケアプランの作成が必要です。地域包括支援センターには、ケアプラン作成を担当するケアマネジャーも所属するため、長期的な視点で家族の介護を相談することができるでしょう。

ステップ3家族の体制作り

家族

働きながら介護をするためには、家族の体制作りが重要です。役割分担の必要性と合わせ、ふたつのポイントを確認していきましょう。

役割分担を決め、介護体制を整える

突然の介護ほど、家族間の役割があいまいになり、後のトラブルにつながりやすくなります。介護をすると引き受けたものの予想以上に負担が大きく、介護疲れを引き起こす可能性もあるのです。働きながらする介護こそ、事前に家族間で役割分担し、体制を整えることが大切です。近くに頼れる兄弟姉妹がいるのであれば、週末や通院のみの介護を担当してもらうだけでもずいぶん助かります。地域の介護サービスを利用することも含め、介護はチームで行うものです。つらいのは当たり前と、ひとりで抱え込まないようにしましょう。

ワンポイントアドバイス

家族の介護体制を整えるときは、以下のポイントを重視してみましょう。意見に相違が生まれたり悩んだりしたときにも、お互いの立場を尊重し合うことができます。

介護する人を支える視点を忘れない

介護が長くなると、介護者の負担も大きくなっていきます。そのときに忘れてはいけないのが、介護をする人を支える視点です。家族の誰かに疲れが見られる場合には、レスパイトケアの検討もおすすめです。要介護者が福祉サービスを一時利用するレスパイトケアは、介護する人の心と身体の休息を支援します。家族の介護は身内がするものと、がんばり過ぎるのは逆効果です。お互いが支え合いの心を持つようにしましょう。

ケアノートの活用

家族間で介護の情報を共有するには、ケアノートの活用がおすすめです。ケアノートには、病状の経過報告のほか、医師からの注意点やケアマネジャーからの伝達事項などと記載します。離れて暮らす兄弟姉妹が親を介護する場合には、なくなりそうな日用品など、細かなことを伝え合うのも効果的です。ささいなすれ違いによる衝突を防ぐことができます。

1人で抱え込まず、まずは周りの人の力をかりよう

家族

働きながらの介護は、周囲と連携を取りながら進める必要があります。医療や看護、介護のスタッフはもちろん、地域の支援者や家族も強力なサポーターです。必要なときには適度に休息を取りながら、家庭内に笑顔を生む介護方法を検討していきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。