2021.09.17

親の介護で悩んでいる方必見!意外と知られていない介護休暇のメリット!

最終更新日:2022.11.01
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

親の介護のためにどのように時間を捻出すれば良いのかと悩んでいる方は、「介護休暇」を検討することができます。介護休暇とはどのような制度なのか、また、介護休業との違いや取得条件、申請する方法などについて詳しく見ていきましょう。

介護休暇とは何か

介護

要介護状態にある家族の介護のために取得する休暇を「介護休暇」といいます。有給休暇とは別個に取得できる休暇なので、介護のために有給休暇を使い切った方も、検討することができるでしょう。介護休暇の対象となる家族は、親や祖父母、義父母、配偶者、兄弟姉妹、子、孫までです。また、子については法律上で親子関係のある方なので、養子でも構いません。

介護休暇と介護休業の違い

仕事をする女性

介護休暇は介護のために年間最大5日間の休暇を取得することです。家族の中に介護を必要とする人が2人以上いる場合は、年間最大10日間の休暇を取得できます。1日単位で取得できるだけでなく、時間単位で取得することも可能です。家族の通院に付き添うときや、退院する日に仕事を早退して送迎をするときなど、必要に応じて時間を調整することができるでしょう。一方、介護休業は介護を必要とする家族1人につき3回(年間ではなく通算)まで、合計93日までしか取得できません。そのため、1日、2日などの短期間の介護が必要な際に使うことには向いていない制度です。常時介護が必要で施設入所希望だが、希望する施設が空くまで自宅で療養する必要があるときなどには、介護休業が適しているでしょう。また、病院から自宅療養に切り替えるように言われたときなども、ほかの家族とも協力しながら、介護休業を取得して介護に専念することができます。

介護休暇を取るための条件

介護

介護休暇を取得するためには、休暇を取得する人と介護をされる人それぞれが条件を満たしている必要があります。休暇を取得する人は、次の条件をすべて満たしているか確認してみましょう。

● 日々雇用ではないこと
● 現在の職場に入社してから6か月を経過していること
● 1週間のうちの所定労働日数が2日を超えていること

次は介護される人の条件です。以下のすべてを満たしている必要があります。

● 2週間以上の介護が必要とされている人
● 介護が常時必要とされている人

介護休暇の賃金の有無

介護休暇の賃金

介護休暇の間、賃金が支給されるかどうかは、会社によって異なります。賃金の支給が取り決められていない場合は、介護休暇を取得する前に有給休暇を利用するほうが良いかもしれません。介護休暇は有給休暇とは別に取得できる制度です。そのため、有給休暇を取得したからという理由で介護休暇の日数が減ることはありません。また、反対に、介護休暇を取得したという理由で有給休暇を減らされることもないので、安心して取得してください。

介護休暇の申請方法

女性

介護休暇の申請は、書類で行わなくてはいけないという決まりはありません。口頭で休暇を取得したいと伝えることも可能です。家族が入院して、急に介護休暇を取得しなくてはならないときや、入院先の病院などで急変したといった連絡がきたときなど、さまざまな状況で使用できます。一方、介護休業の場合は休業を開始する予定日の2週間前までに指定された書面を使って、上司などに伝える必要があります。また、休業を終える日についても予め書面で伝えておかなくてはいけません。事情により予定していた休業期間を延ばさなくてはいけなくなったときは、当初予定していた終了日の2週間前までに申し出る必要があります。また、延長は1回のみなので、本当にスケジュール的に無理がないのか確認してから申し出るようにしましょう。なお、事業所が独自に休業申請する期限を2週間よりも短い日数にすることは可能です。反対に2週間よりも長くすることは認められていませんので、介護休業を申請する人は遅くとも休業を始める予定の2週間前までに伝える必要があります。このように介護休業の場合は手続きが少し複雑です。そのため、さまざまな手間や負担を考慮し、まずは介護休暇をとることからはじめてみてはいかがでしょうか。

介護休暇を使うタイミング

介護相談

介護休暇制度を使うタイミングはいろいろな場面が想定されます。ただし介護が必要な家族1人の場合は年に5日まで、2人以上の場合は年に10日までしか取得できないので、計画的に利用するようにしましょう。時間単位でも取得できるので、1日家族と一緒にいる必要がないときは最低限の時間だけ取るというのも良いです。

病院の付き添い

いつもは施設に入居している家族も、病院に行くときは家族がついていくほうが良いこともあります。家族の病状を詳しく知ることができるだけでなく、医師に気になることを相談する機会にもなるでしょう。

ケアマネジャーとの面談

家族の介護計画についてケアマネジャーと相談するときも、介護休暇を利用できるかもしれません。通常、ケアマネジャーはいくつもの案件を抱えているため、ケアマネジャーが指定した日時に合わせて時間を用意する必要があります。面談は通常1時間以内なので、ケアマネジャーとの面談のときは、1日まるごと介護休暇を取得する必要はないでしょう。

介護サービスの手続き

デイサービスなど施設を初めて利用するときには、施設スタッフから「ご家族と会いたい」という要請がある可能もあります。介護を必要とする家族の状態を詳しく知ってもらうためにも、また、施設の利用方法や特徴、スタッフの様子などを知るためにも、介護休暇を取得して時間を取りましょう。

急変が起こった場合

施設や病院に入所・入院している家族が急変する可能性もあります。連絡を受け取ったら、すぐに介護休暇を取得することができるでしょう。介護休暇は口頭でも申請できるので、営業等で外にいるときに急変の連絡を受けたとしても、会社に電話を1本入れるだけで休暇取得の手続きを行えます。 

介護休暇について

カレンダー

介護休暇は短時間あるいは1日、2日ほどの介護が必要なときに利用できる制度です。賃金があるかどうかは会社によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。有給休暇とは別に取得できるため、賃金支給がない場合は有給休暇を優先的に取得することを検討するというのも選択肢の1つです。日数が少ないので、計画的に利用しましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。