2021.11.24

介護鬱の症状あなたは知っていますか?上手く付き合うにはどうしたらいいの?

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

介護鬱(うつ)になると、気持ちが沈みがちになったり、夜眠れなくなったりといった症状が現れます。高齢者等の介護のストレスで起こる介護鬱は、日頃から正しい予防法を理解しておくことが大切です。今回は、介護鬱とうまく付き合うための方法と、介護鬱になりやすい人の特徴や治療法を解説していきます。

介護鬱とは何か

医師

介護鬱は、介護が原因で発症する「鬱症状」です。しかし、鬱病のなかでも介護鬱は改善しやすいといわれています。また、日頃の心がけしだいでは回避できる可能性もある鬱病です。「家族の介護で気が休まらない」「仕事と介護の両立で心身ともに疲れている」という人こそ、介護鬱にならないよう注意する必要があります。自分は大丈夫と過信せず、予防法や治療法について確認しておくことが大切です。

介護鬱になりやすい人の特徴

悩む女性

介護鬱になりやすい人には、以下のような4つの特徴があるとされています。

● 真面目で完璧主義
● 責任感が強い
● 経済的な不安がある
● 心身ともに不調なことが多い

仕事もプライベートも、真面目で完璧主義の人は介護もがんばりすぎてしまう傾向にあります。家族の体調が悪くなったり、他者に心配させたりすることを「自分が至らないからだ」と自分のせいにすることもあるでしょう。また、責任感が強い人は、無意識のうちに「他人には頼らない」という考えを持ちます。そのため、身体や心が疲れていても、ぎりぎりまでがんばってしまうケースも少なくありません。経済的な不安を抱えていると、介護以外の物事に対しても悲観的に考えがちです。介護サービスを利用したくても選択肢が狭まり、介護負担が大きくなることもあるでしょう。また、気が弱かったり、健康面で不安を抱えていたりする人も介護鬱になりやすいタイプです。気が弱い場合は、家族からの暴言や、介護休暇をとることへの負い目がストレスへとつながります。介護は体力が必要なため、体調面で不安を抱えている場合は介護疲れに注意する必要があります。

介護鬱の症状

介護うつ

介護鬱になると、主に以下のような症状が現れます。

● 食欲不振
● 倦怠感
● 不眠
● 無気力、気分の落ち込み
● 自殺願望

食欲がなくなったり、疲れがとれなかったりといった症状は、いつものことだからと見過ごしてしまいがちです。しかし、これらの症状が2週間以上続く場合は、鬱の可能性が高くなります。仕事と介護を両立して忙しかったり、介護が必要な家族と二人暮らしだったりする場合は、自分で自分の症状を見落としてしまうこともあります。「なんだか疲れがとれない」「気分が落ち込んでやる気がわかない」と感じたときは、日々の生活をあらためて振り返ってみましょう。

介護鬱の原因

手

介護鬱は、介護が原因で発症します。介護は身体的な負担だけでなく、精神的ストレスも大きなものです。自宅で家族を介護している場合、介護負担はさらに大きなものになるでしょう。しかし、原因がはっきりしているからこそ、介護鬱は予防できる症状であるといえます。介護でストレスをためないためにも、次から解説する予防法を心得て日々生活するのがおすすめです。

介護鬱の予防法

女性

介護鬱を予防するためには、介護負担をひとりで抱え込まないことが大切です。具体的には、日頃から次のように意識する必要があります。

● 悩みや不安は他者へ相談する
● 活用できるサービスを検討する
● 介護負担を分担する
● 自分の楽しみも大切にする

介護の悩みや不安をひとりで抱えていると、解決策に気付かず過ごしてしまいます。「こんなことは誰もががまんしている」と思っていても、他者へ相談すれば自分ががんばりすぎていることに気付けるかもしれません。友人に打ち明けることはもちろん、地域の介護相談会や交流会へ参加してみるのもおすすめです。市区町村の地域包括支援センターでは、開催情報を提供しています。また、活用できるサービスを検討し、介護負担の軽減を図ることも大切です。経済的な不安があるときには、利用できる支援制度を検討しましょう。レスパイトケアのように、自分の息抜きのために活用できる介護サービスも取り入れる必要があります。介護はそばにいる誰か一人が負担するのではなく、地域や家族の協力を得ながら進めるものです。近くに家族や兄弟姉妹がいる場合には、介護の分担を提案しましょう。自分が介護鬱になり家族と共倒れにならないためには、周囲を素直に頼る姿勢も必要です。介護鬱になりやすい人ほど家族のために一生懸命になってしまいますが、自分自身の時間も大切です。忙しい間にも「楽しい」「うれしい」と感じられることを見つけ、自分の心を大切に過ごすように心がけましょう。

介護鬱の治療法

問診をする女性

介護鬱は、適切に治療することで症状を改善できます。主な治療法は、以下の3つです。

● 休養
● 精神療法
● 薬物療法

介護で心と身体が疲労を感じているときは、しっかりとした休養が必要です。「自分が休むと家族の介護者がいなくなる」というときは、ショートステイのレスパイトケアを活用しましょう。「レスパイト」という言葉には、休息や息抜きという意味があります。レスパイトケアは、介護者が一時的に介護からはなれ、休息をとるための介護サービスです。長く続く介護こそ、小休止をはさみながら心と身体を整えていく必要があります。また、精神療法はカウンセリングで介護鬱の原因を取り除く治療法です。専門医が患者とともに問題解決をはかります。薬物治療では主に抗鬱剤を用い、気分の落ち込みをおさえます。抗鬱剤の効果はすぐに出るわけではないため、ゆっくりと時間をかけて治療することが大切です。また、どの治療法を用いたとしても介護鬱はすぐに改善するものでありません。良くなったり悪くなったりといった症状を繰り返しながら、徐々に改善していきます。服薬をしている場合は自己判断で薬をやめたりせず、主治医の指示に従うよう心がけましょう。

介護鬱について

家族

介護鬱は、家族のためにとがんばり、自分を後回しにするからこそ起こる症状だともいえます。「できないことは無理をしない」と、ときには自分を甘やかすことも必要です。周囲の人やサービスを頼りながら、家族だけでなく自分の生活も大切にしていきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。