2023.06.19

介護うつとは?原因や予防方法、なりやすい人の特徴を解説

最終更新日:2023.06.19
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

介護うつになると、気持ちが沈みがちになったり、夜眠れなくなったりといった症状が現れます。高齢者等の介護のストレスで起こる介護うつは、日頃から正しい予防法を理解しておくことが大切です。今回は、介護うつとうまく付き合うための方法と、介護うつになりやすい人の特徴や治療法を解説していきます。

介護うつとは

介護うつとは、介護が原因で発症する「うつ症状」です。介護うつはうつ病のなかでも改善しやすいといわれており、日頃の心がけしだいでは回避できる可能性もあります。

「家族の介護で気が休まらない」「仕事と介護の両立で心身ともに疲れている」という人こそ、介護うつにならないよう注意する必要があります。自分は大丈夫と過信せず、予防法や治療法について確認しておくことが大切です。

介護うつの症状

介護うつ

介護うつになると、主に以下のような7つの症状が現れます。

食欲不振

鬱病になると意欲の減退をきたすため、食事に対する意欲も減退します。以前においしいと感じていた食べ物がおいしく感じられなくなったり、自律神経の乱れから胃腸の動きが悪くなり、すぐにお腹が一杯になり、食事量が減ったりしてしまいます。食事自体を口にしたくない気持ちになることもあります。

 疲労感や倦怠感

鬱病になると疲労感や倦怠感が目立つようになります。服を着替えたり、短い距離を歩いたりするだけでも疲れてしまうことがあり、休憩しても漫然と倦怠感が続いてしまうことがあります。日常生活の動作もしんどいと感じることがあり、生活に支障をきたします。また、どこか身体が悪いのではと、内科を受診してしまうケースもあります。

睡眠障害

鬱病により、睡眠障害が生じることはよくあります。なかなか寝付けない(入眠障害)、夜中に途中で起きてしまう(中途覚醒)、または早朝に起きてしまう(早朝覚醒)などといった症状で睡眠不足になります。また、寝られたとしても睡眠自体が浅くなることが多く、睡眠時間の割には熟睡した感じが得られなかったり、朝の起床時に倦怠感を感じたりすることがあります。睡眠障害により鬱病自体が悪化したり、様々な内科疾患を発症したりすることがあります。

無気力、気分の落ち込み

無気力や気分の落ち込みも鬱病でよくみられる症状です。意欲の減退から、何をするにも億劫に感じ、やる気がなくなってしまいます。以前には好きだった趣味なども起きる意欲が失せてしまい、人に会うのも億劫になってしまいます。また、悲観的になるのも症状の一つです。些細なことも大げさに悪い方向に考えてしまったり、特別な理由もないのに「自分はダメだ」と自身を責め、過小評価してしまったりすることがあります。

自殺願望

鬱病で特に気を付けなければいけないのが、自殺願望です。先に述べたように、鬱病になると悲観的に物事を考え、自分を責めるようになります。自分の現状に悲観的になった結果、自殺願望が生じる場合があります。特に、鬱病の初期や回復期は注意が必要です。

不安や焦燥感

不安や焦燥感も鬱病の症状の一つです。健康な方でも、きちんとした理由があれば一時的に不安や焦燥感を抱くことはあります。ただ、ほとんどの場合で一時的であり、原因が解消すれば消失します。一方、鬱病の場合、明らかな原因がないにも関わらず、不安や焦燥感を抱いてしまうことがあります。はっきりとした原因がないため、不安や焦燥感が続いてしまい、不安に伴って動悸や身体の震えといった身体症状も合併することがあります。また、焦燥感が強く出てしまい、いたずらに歩き回ったりすることもあります。

思考障害

鬱病では思考障害も起きます。思考障害とは、思考の過程において異常が生じる状態であり、考えが先に進まなくなったり、事実に基づかない考えを正しいと思ってしまったりする(妄想)ことがあります。具体的には、話をしている際、急に頭の中にある考えが止まってしまい、会話が続かなくなってしまうことがあります。また、病気ではないのに病気になったと思い込んだり、悪いことをしていないにも関わらず、自分が行ったことに対して罪悪感を抱いたりする微小妄想が生じます。

これらの症状が2週間以上続く場合は、うつの可能性が高くなります。仕事と介護を両立して忙しかったり、介護が必要な家族と二人暮らしだったりする場合は、自分で自分の症状を見落としてしまうこともあります。「なんだか疲れがとれない」「気分が落ち込んでやる気がわかない」と感じたときは、日々の生活をあらためて振り返ってみましょう。

介護うつになりやすい人の特徴や原因

介護うつになりやすい人の特徴

介護うつになりやすい人の特徴

介護うつになりやすい人には、以下のような5つの特徴があるとされています。

・真面目で完璧主義
・責任感が強い
・経済的な不安がある
・心身ともに不調なことが多い
・身近に頼れる人がいない

真面目で完璧主義

仕事もプライベートも、真面目で完璧主義の人は介護もがんばりすぎてしまう傾向にあります。家族の体調が悪くなったり、他者に心配させたりすることを「自分が至らないからだ」と自分のせいにすることもあるでしょう。

責任感が強い

責任感が強い人は、無意識のうちに「他人には頼らない」という考えを持ちます。そのため、身体や心が疲れていても、ぎりぎりまでがんばってしまうケースも少なくありません。

経済的な不安がある

経済的な不安を抱えていると、介護以外の物事に対しても悲観的に考えがちです。介護サービスを利用したくても選択肢が狭まり、介護負担が大きくなることもあるでしょう。

心身共に不調なことが多い

気が弱かったり、健康面で不安を抱えていたりする人も介護うつになりやすいタイプです。気が弱い場合は、家族からの暴言や、介護休暇をとることへの負い目がストレスへとつながります。介護は体力が必要なため、体調面で不安を抱えている場合は介護疲れに注意する必要があります。

身近に頼れる人がいない

身近に頼れる人がいるかどうかで精神的な負担が左右されるため、介護うつのになりやすくなってしまいます。親戚や友人に相談したくても疎遠だったり知らない地域で友人が少なかったりする場合もあるでしょう。また親の元気なときを知っている方ばかりだと、介護が必要になったと言いにくく、一人で抱え込んでしまう場合もあります。

本来であれば、地域包括支援センター(地域により名称が違います)や市町村役場の介護課などが住民の介護問題に対して相談窓口になります。また近くにある訪問看護ステーションやデイサービスなどの介護事業所でも相談には対応してもらえますので、介護に関して困っている場合はどのようなことでも気軽に相談してください。

介護うつの原因

介護うつの原因

介護うつにはさまざまな原因があります。代表的なのが「精神的負担」「経済的負担」「肉体的負担」です。それぞれ、小さなことの積み重ねで介護うつが発症してしまいます。

介護うつを予防するためには、この3つの負担を軽減する必要がありますが、どのようにすれば軽減や解消ができるのでしょうか。

精神的負担

介護うつは精神的な負担が原因の1つに大きくあります。介護は終わりが見えず、いつまで介護をしていかなければならないのか、不安になります。また孤独感を感じながら辛い気持ちを誰にも相談できず、抱え込んでいる場合もあるでしょう。

仕事や趣味を辞めて自分の時間を確保できないため、精神的なストレスが積み重なって介護うつに発展する場合もあります。

経済的負担

介護うつになる原因は経済的な負担も挙げられています。介護費用が両親の年金でまかなえればいいですが、全員がまかなえるわけではありません。施設に預けるにしても、それなりの金額が月々かかります。また、毎月の介護サービス費やおむつ、医療費と出費が多くなってきます。

しかし出費が多いからと費用を支払わないことはできず、介護をしている方の貯金や収入から介護費用を負担しなければならないため、家計を圧迫し負担となってしまっています。

肉体的負担

最後に肉体的な負担は計り知れません。入浴介助や移乗介助など体に直接触れてケア(直接介助)を行うためには、どうしても身体を使う必要があります。無理な体勢で介護を行うことで、腰や膝、肩などを痛めることがあります。仕事や家事、育児にも体力を使うため、

休むことなく介護を行っていると疲労は蓄積されていきます。

介護うつのセルフチェック

介護うつになってしまう方は一生懸命に介護を行っているため、自分では危険なサインを見逃しやすいです。定期的に冷静になってセルフチェックを行い、自分の状況を振り返ってみましょう。
早く気が付けば、症状が軽いうちに治療ができ、うつの重症化を防ぐことができます。

セルフチェックの10項目

・選択肢を提示されても決められない
・介護をすることに対してネガティブな気持ちになる
・食欲が減退して食事が楽しくなく、体重が減ってきている
・休養をしても疲れが取れない
・感情が抑えられず、涙が出てしまう
・他人とのかかわりを断ってしまう
・肩こりやめまい、頭痛などの症状が治らない
・夜に寝たくても寝付けない
・集中ができない、または持続しない
・周囲の人から受診を進められる機会が多くなった

介護うつの治療法

介護うつの治療法

介護うつは、適切に治療することで症状を改善できます。主な治療法は、以下の3つです。
・休養
・精神療法
・薬物療法

どの治療法を用いたとしても介護うつはすぐに改善するものでありません。良くなったり悪くなったりといった症状を繰り返しながら、徐々に改善していきます。服薬をしている場合は自己判断で薬をやめたりせず、主治医の指示に従うよう心がけましょう。

休養

介護で心と身体が疲労を感じているときは、しっかりとした休養が必要です。「自分が休むと家族の介護者がいなくなる」というときは、ショートステイのレスパイトケアを活用しましょう。「レスパイト」という言葉には、休息や息抜きという意味があります。レスパイトケアは、介護者が一時的に介護からはなれ、休息をとるための介護サービスです。長く続く介護こそ、小休止をはさみながら心と身体を整えていく必要があります。

精神療法

精神療法はカウンセリングで介護うつの原因を取り除く治療法です。専門医が患者とともに問題解決をはかります。

薬物療法

薬物治療では主に抗鬱剤を用い、気分の落ち込みをおさえます。抗鬱剤の効果はすぐに出るわけではないため、ゆっくりと時間をかけて治療することが大切です。

介護うつの予防方法

介護うつの予防法

介護うつを予防するためには、介護負担をひとりで抱え込まないことが大切です。具体的には、日頃から次のように意識する必要があります。
・活用できるサービスを検討する
・ 悩みや不安は他者へ相談する
・自分の楽しみも大切にする
・ 介護負担を分担する

活用できるサービスを検討する

介護うつにならないためにも、介護の負担を一人で抱えることはよくありません。介護保険を適用して、デイサービスやショートステイ、ホームヘルパーを活用することがおすすめです。まずは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談をしてみましょう。

悩みや不安は他者へ相談する

介護の悩みや不安をひとりで抱えていると、解決策に気付かず過ごしてしまいます。「こんなことは誰もががまんしている」と思っていても、他者へ相談すれば自分ががんばりすぎていることに気付けるかもしれません。友人に打ち明けることはもちろん、地域の介護相談会や交流会へ参加してみるのもおすすめです。市区町村の地域包括支援センターでは、開催情報を提供しています。

自分の楽しみも大切にする

介護うつになりやすい人ほど家族のために一生懸命になってしまいますが、自分自身の時間も大切です。忙しい間にも「楽しい」「うれしい」と感じられることを見つけ、自分の心を大切に過ごすように心がけましょう。

介護負担を分担する

介護はそばにいる誰か一人が負担するのではなく、地域や家族の協力を得ながら進めるものです。近くに家族や兄弟姉妹がいる場合には、介護の分担を提案しましょう。自分が介護うつになり家族と共倒れにならないためには、周囲を素直に頼る姿勢も必要です。

介護うつで仕事に悩んでいる方へ

人はみんな平等に与えられた時間は24時間です。その中で仕事もしなければ収入がなく、生活に困ってしまうでしょう。しかし介護もしなければならないとなったときに両立が難しく感じる場合もあります。

仕事をしている方は雇用保険制度の中で、「介護休業」や「介護休暇」というものが取得できるようになっています。上手に制度や会社の福利厚生を利用しましょう。

関連記事:介護休暇とは?介護休業との違いや取得条件、賃金の有無を解説

親の介護でお困りの方は介護の広場へ相談しよう

家族

介護うつは、家族のためにとがんばり、自分を後回しにするからこそ起こる症状だともいえます。「できないことは無理をしない」と、ときには自分を甘やかすことも必要です。周囲の人やサービスを頼りながら、家族だけでなく自分の生活も大切にしていきましょう。

身近に相談できる相手がいない場合は、Q&A方式で質問できる「介護の広場」がおすすめです。介護のお悩みを投稿するだけで、介護経験者や専門職から回答を得ることができます。ぜひ一度アクセスしてみてください。

介護の広場
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。