30代から50代の方必見!ダブルケアとは?起こる原因とその弊害について
親のダブルケアは、30代から50代の子育て世代が、同時期に育児と介護を担うことを意味します。少子高齢化の現代社会で、今後ますます増加すると考えられる問題です。いつかはと思っていても、介護はある日突然始まり、「いつか」が子育て期と重なると、ダブルケアが発生します。今回は、ダブルケアに関する原因や弊害についてくわしく解説。実状を知り、身内の介護に備えましょう。
ダブルケアとは
ダブルケアとは、子育て中に親の介護が必要になった世帯を指します。小さな子どもの世話をしてくれていた両親が、突然の病気で介護が必要になるケースも少なくありません。ダブルケアの当事者は、育児と介護の両立を迫られることになります。介護に専念したくても、保育園の空きがなく子どもを預けられない場合もあります。兄弟姉妹や親戚が近くにいない場合は、世帯家族だけで介護を負担しなくてはいけません。子育てに専念できない親は、自分の手が子どもに行き届いていないのではと不安を感じることもあります。現代社会はダブルケアへの認知度は低く、当事者が孤独感を感じるケースも発生しています。
ダブルケアの現状と発生原因
内閣府の調査によると、ダブルケアをする人は全国に約25万3千人いるといわれています。そのうち、女性は約16万8千人と全体の6割以上にのぼる数です。この数は着替えやトイレ、食事の手助けといった身体介護を捉えたものであり、介護費用の負担や安否確認を含めるとさらに増加するとされています。ソニー生命の調査によると、ダブルケアの経験率は年齢が上がるほど高くなっています。「ダブルケアを経験した」と回答した女性は、30代の24.4%に対し50代が41.1%です。また、30代男性が26.4%であるのに対し50代は33.1%と、男女ともに50代がもっとも多いのが特徴です。このようにダブルケアが発生する原因には、以下の2点があげられます。
● 女性の社会進出による晩婚化
● 少子化による家族関係の変化
厚生労働省の調査によると、男女ともに平均初婚年齢は上昇傾向にあります。1985年から2018年までの33年間で、男性は2.9歳、女性は3.9歳上昇し、第1子平均出産年齢も引きあがっています。
平均初婚年齢(単位:歳) | |||
1985年 | 2000年 | 2018年 | |
男性 | 28.2 | 28.8 | 31.1 |
女性()内は第1子出産年齢 | 25.5(26.7) | 27.0(28.0) | 29.4(30.7) |
1985年に26.7歳だった第1子平均出産年齢は、2018年には3歳上昇し30.7歳です。つまり、以前は育児がひと段落した頃に始まっていた介護が、子育てと同じ時期にやってくるといえます。また、少子化とともに、社会では高齢化も進んでいます。介護者自身に兄弟姉妹が少ないことも、ダブルケアが発生する要因です。2025年には、団塊の世代全員が75歳以上の年齢を迎えます。ダブルケアは、今後多くの人が直面する課題になっていくと考えられるでしょう。
参考:ソニー生命「ダブルケアに関する調査」
参考:厚生労働書「令和2年版 少子化社会対策白書」
ダブルケアの問題
ダブルケアが引き起こす問題点は、以下の5つがあげられます。
● 介護負担が大きくなる
● 子育て中の女性の負担が大きくなる
● 介護離職者が増加する
● 教育費と介護費のダブル負担になる
● 介護に関わる家族が孤立していく
前述したように、ダブルケアが発生する背景には少子化が影響しています。近くに頼る親族がいないため、1人あたりの介護負担が大きくなる傾向にあります。その負担を受けやすいのが、子育て中の女性です。保育士不足で子どもの預け先も懸念されるなか、介護をする女性は社会復帰を断念し、離職するケースも見受けられます。介護を理由に仕事を辞める「介護離職」の数は、2006年のから2017年の10年間で約2倍に増加。2017年の介護離職者数約9万人のうち、7割以上が女性を占めます。子育て中は、ただでさえ体力が必要です。育児と介護、両方をがんばらないというプレッシャーは、女性にとって精神的な負担になります。介護のイライラやストレスを、子どもにぶつけてしまうこともあるでしょう。両親に預貯金がない場合は、教育費と介護費をダブルで負担することになります。経済的な負担は、家族にとって大きな不安感へとつながります。また、ダブルケアは社会的認知度が低く、支援制度が未整備なのが現状です。子育て支援や介護支援の窓口はあっても、ダブルケアへの支援や制度は地域によって異なります。「介護は女性が担わなければ」「家族がしなければ」という家族の思いが、当事者を孤立させてしまう恐れもあります。
ダブルケアへの各種支援と相談窓口
公的支援制度として「育児休業制度」や「介護休業制度」は設けられていますが、これらはあくまでも労働者が仕事と介護、子育てを両立させるために利用できるものです。前述したように、ダブルケア専門の支援制度や相談窓口は、全国的に少ないのが現状です。しかし、地域によってはダブルケア当事者に向けた取り組みが進められています。大阪府堺市では、各役所内の包括支援センターに「ダブルケア相談窓口」を開設。保健師や看護師、社会福祉士といった子育てや介護の専門職が相談に応じています。名古屋市の子ども・子育て支援センターも、同様にダブルケアについての相談受け付けが可能です。一般的な場合は、「子育て」と「介護」それぞれの側面から支援を求めることになりますが、子育ても介護も、地域の理解や協力を得て進めるものです。困ったときや不安なときはひとりで抱え込まず、地域の専門家に相談しましょう。
ダブルケアに伴う問題解決にむけて
少子高齢化や晩婚化、介護離職などが関係するダブルケアは社会の問題でもあります。ダブルケアに伴う問題を解決するためには、より一層の社会の理解や協力が必要だといえるでしょう。また、ダブルケアは当事者だけでは解決できない問題です。いざ介護が始まってから困らないためにも、早い時期に家族や親戚と話し合っておく必要があります。介護は女性がするものでも、家族だけが負担するものでもありません。ダブルケアで困ったときは周囲に相談し、協力を得るように心がけましょう。
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多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。