2021.08.03

高齢者の虐待の防止と気づきのポイント

最終更新日:2021.08.11

超高齢化とともに問題としてあげられるのは「高齢者の虐待」です。テレビやニュースなどで、実際に虐待が起こった例を耳にする方も多いのではないでしょうか。高齢者の虐待は施設で発生すると思われがちですが、実際には在宅での件数が多いのが特徴です。こちらの記事では、高齢者の虐待の気付きのサインや、防止のためのポイントについて解説していきます。

高齢者の虐待

高齢者_足

超高齢化が進む現代社会で、高齢者の虐待は年々増加傾向にあります。厚生労働省の調査によると、要介護施設事業者による虐待件数は644件。26年度の300件と比較すると、その数は倍以上まで増加しているのです。また、養護者による虐待件数はさらに多く、令和元年度には16,928件の虐待が報告されています。

養護者の態度から見られる気づき

前述したように、高齢者を介護している家族や親族、同居人による虐待件数は年間16,000件以上にのぼります。その背景には、在宅生活を送る高齢者の増加が関係していると考えられるでしょう。介護士やケアマネジャーなど、介護や福祉に携わる専門家は、高齢者の身体状況や養護者の態度から虐待を察知し、適切な対応をとらなくてはいけません。例えば、通所介護に訪れる利用者さんの身体にアザや傷がある場合には「身体的虐待」が疑われます。また、訪問介護に訪れた先で、養護者が介護に関わる意思を見せないときに疑われるのが「介護放棄(ネグレクト)」です。そのほか、養護者が常に怒鳴っていたり、利用者さんのいる前で暴言を吐いたりしている場合に疑われるのが「心理的虐待」。失禁を放置している形跡があれば、「性的虐待」の可能性もあります。また、正当な理由なく高齢者に金銭を与えない養護者は「経済的虐待」を行っている恐れがあります。

虐待を受けている高齢者が示すサイン

高齢者の虐待は、高齢者が示すいくつかのサインによって判断できるケースもあります。「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」「介護放棄(ネグレクト)」それぞれの虐待のサインについて確認していきましょう。

身体的虐待

高齢者が身体的虐待を受けている場合には、身体にあるアザや傷から暴力行為を疑うことができます。「通所介護を利用している利用者さんの体にアザがある」「訪問介護で更衣を介助した際、身体に縛られたあとを見つけた」というときには、介護士はケアマネジャーに相談しなくてはいけません。また、暴力への不安から「家にいたくない」「蹴られる」といった声が本人からあがるケースもあります。何かを聞かれるたびに家族の顔色をうかがう場合にも、身体的虐待の可能性が疑われるでしょう。状況によっては、警察や救急に連絡したり、利用者さん本人を緊急避難させたりする対応が求められます。

心理的虐待

高齢者を怒鳴りつけたり、威圧的な態度で威嚇したりする心理的虐待は、家族のストレスが原因で起こりやすい行為です。特に、認知症の方の介護では、同じ話を毎日されたり昼夜逆転したりすることが、介護疲れの要因となります。介護と仕事を両立している方にとっては、在宅精神的・身体的にも負担の大きなものとなるでしょう。心理的虐待を受けている高齢者には、よく泣いたり、投げやりな態度をとったりするサインが見られます。身体的なサインとしては、食欲不振や過食、拒食が現れる場合もあります。常に心理的虐待を受けている高齢者にとって、不満やつらさを口に出すことは難しいものです。そのため、介護や福祉の専門職が、さまざまなサインを総合的に判断する必要があります。

性的虐待

本人との間で合意が形成されていない性的な行為やその強要は、「性的虐待」にあたります。排泄を失敗した罰として、下半身を裸にする行為も性的虐待にあたるものです。性的虐待を受けている高齢者のサインとして考えられるのが、肛門や生殖器の出血や傷です。また、座った状態や歩行が不自然なほか、困難な場合にも虐待を疑わなくてはいけません。性的虐待を受けたショックから、突然入浴やトイレの介助を拒否するケースもあります。

経済的虐待

日常生活に必要な金銭を理由なく制限したり、本人の財産を無断で売却したりする行為は「経済的虐待」にあたります。経済的虐待が進むと、本人に必要な受診や介護サービスへの支払いが滞り、生活の質自体が低下する恐れもあります。「預貯金がなくなっている」「年金を子どもに取り上げられる」と本人から訴えがある場合には、介護士はケアマネジャーを通し、家族に事実関係を確認しなくてはいけません。状況に応じて、専門職の介入が必要となるケースもあるでしょう。利用者さんの衣食住にお金がかけられていないと思われたり、本人が急に現金を持たなくなったりした場合にも、経済的虐待を疑い状況を判断する必要があります。

介護放棄(ネグレクト)

「介護放棄(ネグレクト)」とは、家族が介護を放棄し、生活環境や身体的、精神的状態を悪化させる行為を意味します。ネグレクトを受けている高齢者のサインとしてあげられるのが、伸びっぱなしの髪やひげ。身体からは異臭がし、自宅を訪れると部屋が非衛生的なケースも多々見られます。「高齢者と同居している家族が、コンビニやスーパーで頻繁に一人分の弁当を買っている」といった、地域からの声でネグレクトが発覚する場合もあります。

高齢者虐待防止法とは

介護

「高齢者虐待防止法」は、平成18年4月1日に成功された法律です。高齢者の権利利益の擁護を目的に、高齢者虐待の防止と早期発見・早期対策の施策を、公的に促進することとしています。高齢者虐待防止法で「高齢者」の対象となるのは、65歳以上の方です。ただし、65歳未満であっても、要介護施設に入所又は利用し、必要なサービスを受けている障がい者の方は高齢者虐待防止法の対象となります。また、高齢者虐待防止法における「養護者」とは、高齢者の金銭の管理や食事、介護などをしている方を意味します。同居人も対象となるため、必ずしも親族である必要はありません。さらに、市町村には、高齢者の虐待が疑われる場合に必要な援助を行うことと義務付けられており、「身体的」「介護・世話の放棄・放任」「心理的」「性的」「経済的」の5つの虐待についても、細かく定義づけられています。

虐待を防ぐために、介護者が気をつけること

介護

高齢者の虐待は、どんな人にも起こりうる身近な問題です。寝たきりの方や認知症の方の介護には、専門的な技術や知識が必要になることもあるでしょう。しかし、実際に介護する方のなかには「家族の介護は限界まで身内がしなければ」と問題を抱え込んでしまうケースも多くみられます。結果、ストレスがたまって暴言を吐いたり、拘束したりといった虐待へとつながってしまうのです。高齢者の虐待を予防するためにも、家族の介護は地域や医療、介護のサポートを利用することが大切です。家族と自分自身を守るためにも、決して無理をしてはいけません。介護が必要になったときには地域の担当窓口にまず相談し、利用できるサービスは何なのか、今後どんなケースが考えられるのか、専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、「介護」は地域全体で取り組んでいかなくてはいけません。高齢者虐待もそのひとつです。地域で暮らす一人ひとりが早期発見・早期防止の意識を持ち助け合うことが、介護者と要介護者を支える未来へとつながっていくでしょう。