2021.11.25

親が突然倒れた!入院・介護・自分の生活への影響等の心配事を解説

最終更新日:2022.06.21
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

親が突然入院した場合、入院時の手続きだけでなく、退院後の介護や自分の生活への影響を考える必要があります。退院前より身体機能が衰えることを考え、介護へ備えることも大切です。今回は、親の入院に備えた準備や心構え、倒れた時の対応や退院後の生活について解説していきます。

親の入院に備えた準備

健康保険証

親の入院に備えた準備品には、以下の2種類があります。

● 入院手続き時に提出するもの
● 入院生活に必要なもの

緊急時に対応できるよう、入院手続きに必要なものは、普段からどこにあるか把握しておくことが大切です。倒れた親の状況によっては、意思疎通がはかれない可能性もあります。具体的には、以下のような書類や証明書が入院時に必要です。

● 健康保険証
● 診察券
● 入院申込書
● 連帯保証書
● 印鑑

健康保険証は、入院時の治療費にかかわるものです。搬送先の診察券があればあわせて提出しましょう。入院申込書や連帯保証書は病院側から渡されます。必要事項を記入し提出するほか、場合によっては捺印が必要です。連帯保証書には、連帯保証人の氏名や連絡先を記入します。緊急時の連絡や入院費の支払い、遺体や身柄の引き取りなどを保証するためです。病院によっては、保証人は2名求められる場合があります。入院保証金はすべての病院で求められるものではありませんが、現金で10万円程度必要な場合があることも覚えておきましょう。いざ入院生活が始まったら、以下のような生活用品が必要です。

● 洗面用具
● 着替え
● 筆記用具
● 茶碗、スプーン、湯呑
● ティッシュペーパー
● スリッパ

これらの生活用品は、その日のうちに準備できるものです。病院に併設されたコンビニエンスストアでも購入できます。また、入院費用を支払うため、銀行の通帳や印鑑、加入している医療保険や生命保険について、なるべく本人が元気なうちに話し合っておきましょう。

親が倒れた!まず何をすればいい?

救急車

目の前で親が倒れた場合、倒れた拍子に頭を打ち、脳が損傷していることも考えられるため、むやみに動かさないよう心がけます。衣服をゆるめ、119番通報し救急車を手配しましょう。症状を伝え、救急隊員の指示を仰ぎます。倒れていなくても、意識障害を起こしていたり、半身がしびれたりといった様子が見られる場合は、緊急的な対応が必要です。ろれつが回らない場合は、脳になんらかの障害が起こっている可能性もあるため、自己判断しないように注意しましょう。

親が入院中の対応について

入院する女性

入院中は、身の回りの世話や付き添いが必要です。兄弟姉妹がいる場合はローテーションを組み、対応しましょう。手術や検査には同意書へのサインが求められますが、親が対応できない場合は家族が代行します。介護サービスを利用していた場合、入院中はサービスが受けられないので、ケアマネジャーに連絡し必要な手続きをとらなくてはいけません。退院後は、以前より身体機能が低下している可能性もあります。医師や看護師やケアマネジャーと連携を図りながら、退院後の生活について検討を重ねていきましょう。

親の様子が入院中に変わってしまったら

看護師

親の心身状態は、入院をきっかけに大きく変化する可能性があります。認知症を患っている場合、入院前にできていたことが出来なくなってしまうこともあるでしょう。立ったり歩いたりといった身体機能が低下するほか、元気な人でも認知機能が低下する場合もあります。また、せん妄は入院患者の10~30%に発症するといわれる症状です。それぞれの具体的な症状と対処法を確認しておきましょう。

認知症の進行

骨折や肺炎をきっかけに入院すると、認知症が進行する可能性があります。また、入院をきっかけに突然認知症が発症するケースもあります。入院中の親の様子が変わっていくのは、子どもにとって不安の大きなものです。退院後の生活への不安は、病院の相談窓口である医療ソーシャルワーカーに相談できます。入院前から介護サービスを利用している場合はケアマネジャーと連携し、退院後に利用するサービス内容を検討していきましょう。

身体機能の低下

高齢者は、病気やケガをきっかけに寝たきりの状態が続くと「廃用症候群」に陥りやすくなります。「廃用症候群」は生活不活発病とも呼ばれ、身体能力が大幅に低下した状態です。「廃用症候群」を防ぐためには、入院中もなるべく体を動かす機会を設けることが大切です。着替えや排泄といった生活動作も、体を動かすきっかけのひとつとなります。症状に応じ、医師や専門スタッフと連携しながらリハビリテーションも実施していきましょう。

知的機能の低下

普段使う機能を使用しないままでいると、人間の機能は衰えるといわれています。入院中は寝ている時間が長く、自分で物事を判断する機会が少ない状態です。人との会話も少なく、脳への刺激が行きわたらなくなります。そのため、高齢者の知的機能は衰えやすく、歩けなくなったり、認知症を発症したりといった問題につながります。入院生活は高齢者の知的機能を低下させ、退院前とは異なる状態になる可能性があることも覚えておきましょう。

入院せん妄症状

せん妄とは、なんらかの疾患や脳神経疾患の影響により、一定の精神症状が現れる病気です。入院せん妄は、入院後や手術後に急におかしなことを言ったり、幻覚が見えたりといった症状が現れます。認知症と似ていますが、せん妄は時間とともに症状が変化するのが特徴です。せん妄の予防法や治療法は確立されていないため、安心できるように声をかけたり、環境を整えたりといった対応が求められます。

親の退院後について

病院のベッド

退院後の親に介護が必要な場合、在宅介護か施設へ入所するのか検討する必要があります。家族や本人の希望はもちろん、実際にどのようにケアできるか考えて決定することが大切です。家族に仕事や育児がある場合、24時間体制で介護するのは難しい場合もあります。同居する家族だけでなく、兄弟姉妹や親戚も含めたケアを検討しましょう。

もしもに備えた準備や心構えをしておこう

高齢女性

親の体調はいつ変化するか分かりません。入院時は思いのほか、手続きや準備すべき物が多くなります。親が倒れたときスムーズに対応するためには、元気なうちに備えることが大切です。退院後は介護が必要になる可能性とあわせ、親が元気なうちにもしもに備えておきましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。