2021.07.09

排泄介助|おむつを外す工夫とポータブルトイレの活用

最終更新日:2022.07.25
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

おむつを外すためには

おむつ

退院したときや長期間施設で暮らしていたお年寄りのほとんどは、おむつを当てられたまま自宅に帰宅します。このとき、介護者や支援者は「おむつなしでも生活できるだろう」と考える人も多いでしょう。お年寄りが自立的な生活をするためには、排泄介助を通じておむつ外しの実践が必要です。長期間おむつを使っていたお年寄りは、ベッドの上などでもそのまま用を足してしまう癖がついている可能性があります。いきなりおむつを外しても上手くいかないので、自立排泄ができるようになるまで段階的に排泄介助を進めていく必要があります。ただし、家族だけではおむつ外しの実践は難しく、上手くいかないケースがあります。そのため、おむつ外しに積極的な介護事業者と連携しながら、排泄介助に取り組んでいきましょう。

おむつを外すための大事な感覚

おむつを外して自立排泄ができるようになるためには、排泄の感覚を取り戻さなければなりません。排泄に大事な感覚とは、尿意・皮膚感覚・尿意感覚の3つです。

尿意

長期に渡りおむつをつけていると尿意感覚がなくなってしまいます。おむつを使っている間、定期的におむつを交換するだけの処理となるため、高齢者自身は尿意を気にかけなくなってしまいます。トイレに行かずとも排尿できてしまうので、トイレに行くこと自体の気力も失ってしまうのです。自立的にトイレへ行けるようにするためにも、尿意の感覚を取り戻すことがおむつ外しの第一歩になります。

皮膚感覚

おむつに尿や便が付着すると普通であれば不快感があり、嫌な気持ちになってしまいます。しかし、おむつに慣れてしまうと皮膚感覚が失われ、排尿・排便後の不快感もあまり気にならなくなってしまいます。早く不快な状態から解放されたいというのも自立的にトイレへ行く気力につながるので、皮膚感覚を取り戻すことも大事です。

排尿感覚

おむつをしていれば、寝ているときや何か作業をしているときもトイレに行かず排尿できます。いつでも排尿ができる分、自分自身が用を足している感覚も薄れてきやすいです。このままの方が楽だと思ってしまうとトイレに行く気力は失われる一方なので、排尿している感覚を取り戻すこともおむつ外しにつながります。

どうしても、おむつが必要なとき

おむつ

お年寄りが自立的な生活をするためには、おむつを外して自主的にトイレに行けるようになることが大事です。要介護者の状況や尿量に応じて、おむつを上手く使い分けていきましょう。ここからはおむつの種類と最適な用途についてご紹介します。

尿量に合わせて使い分けるもの

布パンツと薄いパッド

おむつではありませんが、布パンツは下着と同じ感覚で履くことができ、薄い尿取りパッドと組み合わせれば尿漏れなど軽い尿の対策に最適です。普通の下着と同じように着用するので、自分で立つことができ、基本的にトイレで排泄する人に向いています。高齢者は老化により尿道括約筋が衰え、自分の意思とは関係なくちょっとした動作で尿漏れをすることがあります。お出かけなど頻繁にトイレに行けないときや寝るときなど、尿漏れが気になる時におすすめです。

大きなパッド

長距離の移動など頻繁にトイレに行けない時は、大きなパッドの使用がおすすめです。具体的には吸収した尿をゼリー状に固めたポリマーが内蔵されたパッドで、尿漏れよりも多い尿量でも安心です。さらに尿が固まることで濡れた状態のおむつよりも不快感が軽減されます。使い方は布パンツや普通の下着の上に、パッドを敷くだけです。そのため、自立的または排泄介助を受けながらトイレが十分にできる人に適しています。

紙製のはくパンツ

紙製のはくパンツは、下着感覚で着用できる紙おむつの一種です。そのため、自分で立ったり、足を上げることができたりする人は容易に着用できます。介助があればトイレに行くことが可能であっても、トイレに間に合わない時や失禁症状がある人は紙製のはくパンツがおすすめです。尿の吸収力も大きなパッドと比べて優れているので、2~3回程排尿を行っても問題ありません。また、夜用では4回以上の対応しているものもあるので、容量を確認して選びましょう。サイズが合わないと隙間から漏れたり、快適性を損ねたりするのでウエストサイズを基準に選んでください。

紙おむつ

一般的に紙おむつは、1枚に展開した状態で下半身に当て、前後左右の生地を重ねて包み込むようにはかせ、テープで固定して着用されます。尿の吸収力に優れているので、尿意を感じたけどトイレに間に合わないときも安心です。寝たままでも装着が可能なので、自力で立てない人や寝て過ごす生活がほとんどの人は紙おむつが向いています。紙製のはくパンツと同じく昼用と夜用があり、対応する尿量にも違いがあるのでよく確認して選んでください。テープでとめる紙おむつの場合はヒップサイズを基準に選びましょう。

ポータブルトイレの活用

トイレお年寄りはトイレに行くまで時間がかかり、間に合わないことに不安を感じます。その不安がおむつを外せない原因につながってしまうので、緊急時にトイレが利用できる状態にできればおむつ外しつながります。そこで有効なのがベッドサイドに置けるポータブルトイレです。ポータブルトイレは持ち運び可能なトイレのことで、万が一トイレに間に合いそうにないときも近くにあれば用を足せます。自力で排泄が可能なので、おむつに頼らない生活の実現が可能です。

ポータブルトイレの選び方

利用者にとって理想的なポータブルトイレを選ぶために、選び方のポイントを押さえておきましょう。まず、ポータブルトイレには背もたれがあるものとないものがあります。背もたれがあると姿勢が安定し、体への負担も軽くなるので落ち着いて排泄できるのでおすすめです。また、使用者の体格や慎重に合わせて、足の高さや便座の大きさを選ぶことも大事です。便座シート下のスペースもチェックしておきましょう。便器側に足を引けるスペースが十分にあるポータブルトイレなら、自然な姿勢で立ち上がり動作が可能となります。便座シートの材質はプラスチックや木製、金属コモード、スチールなど、種類も豊富です。素材によって重さや安定感、デザイン性も変わってくるので、総合的に見て使いやすいものを選ぶと良いでしょう。ベッドから乗り降りする際は、ひじ掛けが外せたり、スライドで動かせたりできるタイプだと移りやすいので便利です。車椅子を使っている場合は、そこから移りやすいかどうかもチェックしてください。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。