2022.09.14

在宅介護にかかる費用はいくら?施設介護の費用との違いも解説

最終更新日:2022.11.24
増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

身近に高齢になった親がいる場合、どうしても気になるのが介護費用です。いざ介護が必要になったとき、「施設介護は高いイメージがあるけど、結局費用の面では在宅介護とどっちがいいだろう?」と悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。この記事を読むことで、費用面では在宅介護と施設介護のどちらが有利なのか、どうすれば費用を抑えられるのかが分かります。

在宅介護にかかる費用

在宅介護にかかる費用

「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、公的制度である介護保険制度を利用して在宅介護を行っている人の平均月額費用は8.3万円でした(介護保険利用料以外のオムツ代や滞在費などを含む)。しかし、実際に在宅介護にかかる費用は、要介護者の状態増によって異なります。具体的には、在宅介護に必要な費用は全7段階の要介護度によって変わってきます。また、必要なサービスは要介護者自身の症状や生活環境によっても異なります。同じ要介護度であったとしても、利用するサービス内容の種類や量によっても違いが生まれます。そこで、まずは「実際の介護度別にどのくらいの費用がかかるのか」、「在宅介護で利用できるサービスの単価はどのようになっているか」という2つの基本的な部分についてご紹介していきます。

※公益財団法人 生命保険文化センター.「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」.令和3年版,2021. https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html,(参照2021-9-14)

在宅介護にかかる月額費用

介護保険サービスの料金の計算方法は、1単位=10円です(都市部の場合10.00~11.40円で設定されている地域あり)。かかった費用の総額のうち、所得によって1~3割で分類されている自己負担割合に応じた金額が自己負担分として利用者本人に請求されます。要介護度ごとに設定された自己負担限度額を超えないようにサービスを組みながら利用することが基本です。上限を超えても更に上乗せして利用することはできますが、超過した分は全額自己負担となってしまうので注意が必要です。

【要介護度別 利用上限月額】

要介護度 区分支給限度基準額 自己負担1割 自己負担2割 自己負担3割
要支援1 5,032単位 5,032円 10,064円 15,096円
要支援2 10,531単位 10,531円 21,062円 31,593円
要介護1 16,765単位 16,765円 33,530円 50,295円
要介護2 19,705単位 19,705円 39,410円 59,115円
要介護3 27,048単位 27,048円 54,096円 81,144円
要介護4 30,938単位 30,938円 61,876円 92,814円
要介護5 36,271単位 36,271円 72,542円 108,813円

※1単位=10.00円で計算

なお、先にご紹介した通り、介護保険サービス利用料に滞在費・食費・オムツ代などの実費を加えた月額介護費用の平均は8.3万円でした。この中で、徐々に身体介護が必要となって費用がかさんでくるのは軽い方から数えて全7段階中の3段階目である要介護1以上の方になります。比較的軽度である要介護1の場合は5.3万円/月ですが、最も重度である要介護5になると、倍の10.6万円/月になっています。詳細は下表をご覧ください。

【要介護度別 月額介護費用】

要介護度 要介護1 要介護2 要介護3 要介護4 要介護5
月額費用 5.3万円 6.6万円 9.2万円 9.7万円 10.6万円

※公益財団法人 生命保険文化センター.「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」.令和3年版,2021. https://www.jili.or.jp/research/report/8361.html,(参照2021-9-14)

介護の必要性は、加齢による身体機能の低下や認知症の進行によって徐々に重度化していきます。介護度が上がるごとに必要経費が上がっていく原因は、徐々に進行する心身機能の低下によって介護サービスの量が増えることだけではありません。一部の介護サービスは介護度が上がるごとに1回あたりの単価も上がっていくことも理由のひとつです。

在宅介護にかかるサービス費用

在宅で介護を受ける高齢者が利用できるサービスは多種多様ですが、大きく分けると次の5種類に分けることができます。

・ 通所系サービス
・訪問系サービス
・宿泊系サービス
・小規模多機能型サービス
・住環境整備に関するサービス

それぞれのサービス概要や大まかな料金は以下の通りです。

【通所系サービス】(負担割合1割・1単位=10円の場合)

サービス名 概要 利用料金の目安
通所介護
(デイサービス)
施設に通い、日常生活上の介護やレクリエーションのサービスを受けることが主目的。機能訓練も受けられるが、リハビリの専門職が在籍しているとは限らない。家族の介護負担軽減目的でも利用される。 604~1,142円/回
(7~8時間利用の場合)
通所リハビリテーション
(デイケア)
 施設に通い、専門職による本格的なリハビリを受けることが主目的。日常生活上の介護やレクリエーションも実施するが、リハビリの一環として行われる。 708~1,369円/回
(7~8時間利用の場合)
地域密着型通所介護  定員が19名以下の小規模な通所介護で、小さいがゆえに近い関係性の中でアットホームに利用できることが特徴。  750~1,308円/回
(7~8時間利用の場合)
療養通所介護  経管栄養や褥瘡の処置、終末期ケアなど医療依存度が高い人を対象とした通所介護。  12,691円/月
(定額制)
認知症対応型通所介護 認知症の診断を受けている人を対象にした通所介護。グループホームに併設されているタイプの場合は単価も安い。  522~1,424円/回
(7~8時間利用の場合)

※要介護1~5に関する料金を記載しています。
※1回当たりの料金は、自己負担1割・1単位=10円の場合(要介護度や滞在時間、事業所の規模によって単価が変わります)
※この表に記載した料金以外に、事業所の体制やサービス内容に応じた加算がかかります。
※WAM NET.「介護給付費単位数等サービスコード表」.令和3年版,2021. https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0331152949837/20210331_003.pdf,(参照2021-9-14)

【訪問系サービス】(負担割合1割・1単位=10円の場合)

サービス名 概要 利用料金の目安
訪問介護 自宅に訪問し、身体介護や家事援助・受診を目的とした送迎車両への乗降介助等を行う。 身体:396円/1時間
家事:225円/45分以上
乗降介助:99円/回
※車両費は別途請求
訪問入浴 自宅に看護師を含めた3人体制で訪問し、移動式浴槽等を使用した入浴介助を行う。 1,260円/回
訪問看護 自宅に看護師やリハビリ専門職が訪問し、医師の指示に基づく看護やリハビリを実施する。 看護:821円/1時間
リハ職:792円/1時間
訪問リハビリテーション 自宅にリハビリ専門職が訪問し、医師の指示に基づく専門的なリハビリを実施する。 307円/回(20分)
※合計120分/週が限度
夜間対応型訪問介護 夜間帯に定期的に訪問して身体介護を行ったり、利用者からの要請に応じて臨時的に訪問したりする。 1,025円/月

定期巡回:386円/回
随時訪問:588円/回
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 定期的な訪問や要請に応じた臨時対応等、24時間365日必要な訪問サービスを提供する。訪問看護的なサービスも含む。 5,697~29,601円/回
※介護度により異なる
居宅療養管理指導 医師や薬剤師・栄養士などが自宅を訪問し、自宅療養に必要な指導や助言を行う。 294~565円/回
※訪問する職種や利用者の居住形態により異なる

※要介護1~5に関する料金を記載しています。
※1回当たりの料金は、滞在時間や事業所の体制、支援内容などによって単価が変わります
※この表に記載した料金以外に、事業所の体制やサービス内容に応じた加算がかかります。
※WAM NET.「介護給付費単位数等サービスコード表」.令和3年版,2021. https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0331152949837/20210331_003.pdf,(参照2021-9-14)

【宿泊系サービス】(自己負担割合1割・1単位=10円の場合)

サービス名 概要 利用料金の目安
短期入所生活介護 一定期間介護施設に入所し、身体介護やレクリエーション等の生活上の支援を受ける。  596~1,017円/日
+
食費:1,445円/日
滞在費:855~2,006円/日
短期入所療養介護  一定期間医療施設等に入所し、医療、看護、機能訓練等を実施する。  737~1,296円/日
+
食費:1,445円/日
滞在費:377~2,006円/日

※要介護1~5に関する料金を記載しています。
※1回当たりの料金は、滞在時間や事業所の体制、支援内容などによって単価が変わります。
※この表に記載した料金以外に、事業所の体制やサービス内容に応じた加算がかかります。
※食費・滞在費は介護保険対象外ですが、一定の条件を満たせば軽減される制度があります(負担限度額認定制度)。
※WAM NET.「介護給付費単位数等サービスコード表」.令和3年版,2021. https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0331152949837/20210331_003.pdf,(参照2021-9-14)

【小規模多機能型サービス】(自己負担割合1割の場合)

サービス名 概要 利用料金の目安
小規模多機能型居宅介護  「通い」「訪問」「泊り」を同一事業所にて対応することによって、馴染みの環境の下で総合的な支援を提供する。  9,391~27,117円/月
看護小規模多機能型居宅介護
(複合型サービス)
 上記に加えて、訪問看護に相当するサービスも含めた支援を実施する。  11,206~31,386円/月

※要介護1~5に関する料金を記載しています。
※1回当たりの料金は、滞在時間や事業所の体制、支援内容などによって単価が変わります。
※この表に記載した料金以外に、事業所の体制やサービス内容に応じた加算がかかります。
※食費・滞在費は介護保険対象外で、別途事業所ごとに料金がかかります。
※WAM NET.「介護給付費単位数等サービスコード表」.令和3年版,2021. https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2021/0331152949837/20210331_003.pdf,(参照2021-9-14)

【住環境整備に関するサービス】(負担割合1割の場合)

サービス名 概要 利用料金の目安
福祉用具貸与  杖・歩行器・車椅子・電動ベッド等11品目について、在宅の被保険者に貸し出し在宅介護を支援する。
品目によっては要介護度が軽いとレンタルできない物がある。
杖:100~150円/月
歩行器:300~500円/月
車椅子:500~1,000円/月
電動ベッド:800~1,300円/月
手すり:200~400円/月
特定福祉用具販売  入浴や排泄に関わる特定の福祉用具のうち、直接人の肌に触れるためレンタルがなじまない物について購入する際の費用を助成する。
指定を受けた販売店で購入した特定の用具のみが対象となる。
 同一年度で10万円の購入費用を上限に、自己負担割合に応じて支払った費用の7~9割が返還される。(償還払い)
住宅改修 手すりの取り付けや段差の解消など、在宅介護における利便性や安全性を向上させることを目的とした全6種類の工事が対象。
一人当たり20万円分までの工事が対象となる。給付を受けるには事前申請等が必要。
最大で18万円まで、工事費が返還される。初めに全額を払う償還払いが基本だが、地域によっては自己負担分のみを先に支払うだけで済む方法も選択できる場合がある(受領委任払い)。対象工事費が合計20万円に到達するまでは何度でも利用できる。

要介護1以上の方を在宅介護する際は、本人と家族で担当してもらいたいケアマネジャーの事業所と契約し、上記のサービスを組み合わせたケアプランを作成することとなります。これから在宅介護を行う場合は、まずはお住いの地区を担当する地域包括支援センターに相談するとよいでしょう。

施設介護にかかる費用

施設介護にかかる主な費用

施設介護にかかる費用は、在宅介護と比べると割高になる傾向があります。いったん入所してしまえば24時間継続した支援を受けられる施設が多く、家族が直接介護をする必要が少なくなるため、安心してお願いできるからです。介護保険制度を活用して入所できる施設は多岐にわたりますが、ここでは特に候補に挙がりやすい「特別養護老人ホーム」「グループホーム」「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」について、大まかな費用をご紹介します。下記の表にまとめましたのでご覧ください。

施設種別 概要 権利金相場 月額相場
特別養護老人ホーム
(介護老人福祉施設)
要介護3以上の方が対象。認知症や看取りにも対応し、機能訓練も実施してくれる。安価のため人気が高く、入所待ちは年単位になることもある。 0円 10~14.5万円
※負担限度額認定制度の対象になれば更に安くなる。
グループホーム
(認知症対応型共同生活介護)
要支援2以上で認知症の診断を受けている人が対象。所在している自治体に住所がある人が入所可能。アットホームな雰囲気の中で、介護を受けながら共同生活を営む。 0~数十万円 15~20万円
有料老人ホーム 介護保険施設としての認定を受けた「介護付き」と、集合住宅のような取り扱いである「住宅型」がメイン。医療行為や看取りには対応していない施設や、富裕層向けなどサービス内容は多種多様。 0~数千万円
※施設によって大幅に異なる。
15~30万円
サービス付き高齢者向け住宅 比較的軽度な高齢者が対象のバリアフリー住宅。生活相談や安否確認が付帯した一般住宅という扱い。中には「介護付き有料老人ホーム」と同様に介護保険施設として指定を受けているところもある。 0~数十万円 10~30万円

これ以外にも、要介護認定を受けている高齢者が対象となる入所施設は多岐にわたります。在宅と比べて要介護状態の方が生活するための環境が整っている点がメリットです。しかし、在宅介護と比較すると経費がかかり、特に入居一時金が設定されている施設の場合は高額な費用が必要となったり、人気の施設は相当な期間入所待ちをしなければならなかったりするのがデメリットになっています。

在宅介護と施設介護の費用の違い

在宅費用について相談する親子

在宅介護と施設介護では費用面で大きな違いがあります。施設介護では高額になる場合が多く、特に特に介護の手間が増えてくる要介護3以上になると、月額が10万以上を超えてきます。ここでは、具体的な事例を元に在宅介護と施設介護の費用の違いについてご紹介していきます。

要介護3の方の場合

要介護3の方を介護する場合の在宅介護・施設介護に必要な試算すると次のようになりました。

・在宅介護の場合:8.0万円/月
・特別養護老人ホームの場合:13.7万円/月
・ 住宅型有料老人ホームの場合:19.7万円/月

詳しい試算表は、以下をご覧ください。

【介護施設別利用料概算(要介護3・1単位=10円・自己負担1割の場合)】

  在宅介護 特別養護老人ホーム
(ユニット型個室)
住宅型有料老人ホーム
介護サービス費 26,359円 23,790円 27,048円
滞在費
(居住費)
6,018円 60,180円 70,000円
食費 12,735円 43,350円 50,000円
管理費 0円 0円 30,000円
その他 35,000円 10,000円 20,000円
合計 80,112円 137,320円 197,048円

※月30日で計算。
※在宅介護は、通所介護を週3回・訪問介護を週4回×1日2回・ショートステイを3日利用・一般的な電動ベッドと車椅子をレンタルした想定で計算。
※各介護保険サービスは、各種加算を未算定の状態で計算。
※住宅型有料老人ホームの場合、介護サービスは別途契約が必要なため、負担上限額まで利用したと仮定して計算。

このように、当サイトが行った試算で比較すると、在宅介護の方が最大で月額約11.7万円安く済むという結果となりました。介護施設の中でも最も安価な特別養護老人ホームとの比較でも約5.7万円の差となっているので、在宅介護がいかに費用を抑えられるかが分かります。

在宅介護か施設介護、どちらにすべき?

在宅と施設どちらにすべき?

在宅介護か施設介護かのどちらを選択すべきなのか?という疑問に対してお答えすると、費用面を重視するのであれば【在宅介護】を選択すべきです。なぜなら、先ほどの章でご紹介した通り、当サイトの試算では月額にして8.4万円も在宅介護の方が安く済むという結論に至ったからです。

しかし、在宅介護はメリットばかりではありません。当然デメリットも存在します。例えば、施設介護の場合は入所した施設の職員が日常生活全般の支援を総合的に行ってくれるため、家族の肉体的・精神的な介護負担は殆どありません。しかし在宅介護の場合は、介護サービスを利用している以外の時間は家族が面倒を見ることになりますし、本人の体調が悪化して受診や医療処置が必要になった時も家族が対応しなければなりません。

また、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの感染症にかかった場合は、感染拡大防止の観点から、在宅介護サービスの利用を一時的に断られる場合があるという現実があります。要介護者が体調不良という、一番大変な時に介護サービスを受けられない恐れがあるのは重大なデメリットです。

さらに言えば、施設入所は高額であるものの、総合的に支援してくれるので毎月の金額は一定です。しかし在宅介護の場合は利用したサービスは利用した分だけ料金に上乗せされていくので、要介護度ごとに設定されている上限額を超えると思わぬ高額請求に見舞われる場合もあります。

このように、費用面では圧倒的に在宅介護が有利であるものの、家族の介護負担が多いことや、想定外の事態が起きた時に体力的にも費用面でも思わぬ負担増となるデメリットが存在します。費用面を重視するのであれば在宅介護を、家族が介護困難であり安定した生活を重視するのであれば、施設介護を選ぶことがおすすめです。

介護費用は年金や貯金から払うのが基本

介護費用の支払い方法とは?

介護費用についてよくある質問に「介護費用は誰が捻出するのか」という問題があります。結論から申し上げると、基本的には要介護者本人の年金や貯金などの資産を活用して支払うことが基本です。なぜなら、仮に介護者の貯金や資産を活用して支払いを行った場合、介護者自身の生活にも支障をきたす危険性があるからです。それを防ぐためにも、介護費用は基本的に要介護者本人の資産から支払うようにしましょう。

本人の年金や貯金だけでは介護費用をまかない切れない場合は、以下の方法で解決する可能性があります。

・マイホーム借り上げ制度
・リバースモーゲージ
・リースバック
・非課税世帯になること

マイホーム借り上げ制度とは

高齢者が住む住宅を借り上げて子育て世帯等に転貸する制度です。空室が発生した場合も公的資金による一定の賃料収入が保証されます。自宅を売却することなく、住みかえや老後の資金として活用することができます。

リバースモーゲージとは

自宅に住み続けながら、自宅そのものを担保として資金融資を受ける制度です。本人が死亡した場合は担保にしていた自宅を売却して借入金を返済します。

リースバックとは

自宅を売却して現金化した状態で、売却後も住み続けることができる仕組みです。住み慣れた自宅で生活しながら、まとまった資金を調達することが可能です。

非課税世帯とは

例えば公的な減免措置の一つにショートステイや特別養護老人ホーム等を利用した際に食費と滞在費が減免される「負担限度額認定制度」というものがありますが、このような減免制度の利用条件に「非課税世帯であること」というものがあります。現役世代と同居している場合は同一世帯と見なされて条件から外されて多いのですが、「世帯分離」という手続きを行うことで単独世帯と見なされて「非課税世帯」となり、様々な福祉サービスの対象者になることができる場合があります。要介護1以上の認定を受けている方であれば申請できる「障害者控除」と組み合わせることで、さらに【非課税世帯】になれる可能性が高まります。

子育てとは異なり、いつまで続くか分からないのが高齢者介護の特徴です。長い介護生活を乗り切るためには、自分自身の日常生活を維持するためにも簡単に介護者が費用を補填するべきではありません。様々な制度を活用し、介護者が持ち出しをすることなく本人の年金や資産を有効活用して支払いを続けることが大切になります。

介護費用を抑えるためにできること

support

在宅介護での費用を抑えるためには、以下2つのポイントに注意しましょう。

・適切なケアプランを作成してもらう
・介護費用を抑えるサービスを利用する

この章では、在宅介護にかかる費用を少しでも抑えるポイントについて詳しくご紹介していきます。

適切なケアプランを作成してもらう

在宅介護の費用を抑えるポイントの1つめは、担当するケアマネジャーから適切なケアプランを作成してもらうことです。ケアプランとは、介護を必要とする人が在宅で暮らしていくための様々な生活支援サービスを組み合わせた設計図です。介護保険サービスを利用するためには必ず作成する必要があり、制度上は要介護者自身や家族が自ら作成することもできるものの、ほぼ全ての要介護者がケアマネジャーに作成を依頼しています。効率的に介護サービスを受けるため、包み隠さず困りごとを相談して、適切なケアプランを作ってもらうことが重要になります。

介護保険サービスは多岐にわたり、介護保険以外でも要介護者を支える様々な社会資源があります。単に「デイサービスを利用したい」「ヘルパーから見守りをしてもらいたい」という相談では、本当に困っていることがどういった問題なのかがケアマネジャーに伝わりません。一言にデイサービスと言っても事業所ごとに特徴が様々なので、期待したサービスを受けることができずにお金の無駄になってしまうという問題も生じます。

ケアマネジャーはどこに頼んだらいいか分からないという場合は、地域包括支援センターに相談したり、地域の知人や友人に口コミを聞いてみたりするのもよいでしょう。信頼できるケアマネジャーを見つけ、具体的に困りごとを相談することで最適なケアプランを作ってもらい、効率的・効果的なサービス利用につなげましょう。

介護費用を抑えられるサービスを利用する

在宅介護の費用を抑えるポイントの2つめは、介護費用を抑えられるサービスを利用することです。例えば、下記の4つのような制度があります。

・高額介護サービス費
・医療費控除
・おむつ券サービス
・生活保護

例に挙げた4つの負担軽減制度についてご紹介します。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは、介護保険サービスの自己負担が高額となって所定の負担上限額を超えた場合に差額が払い戻される制度です。一度申請すれば、以降は自動的に変換されるようになるので安心です。例えば世帯員全体が市民税を課税されていない高齢者夫婦の場合は、2人合計で30,000円分の介護サービスを利用した場合に5,400円が返還される仕組みです。申請窓口は各市町村の介護保険担当課になっているので、気軽に相談してみましょう。

医療費控除

医療費控除とは、確定申告の時に実施すると1年間で支払った医療費が一定額を超えた場合に所得控除を受けることができる仕組みです。名称から、医療にかかわる費用しか対象にならないと誤解されがちですが、高齢者の介護に関する以下の内容が対象となります。
・診療費、治療費(治療目的であれば保険外診療も対象になる)
・治療に必要な薬や医薬品の代金
・「セルフメディケーション対応」の旨が記載された市販の薬剤等
・公共交通機関を利用した際の通院交通費
・ 介護保険制度で提供された医療系サービスに対する自己負担額
※医療系サービスを併用している場合、医療系サービス以外の自己負担額も医療費控除の対象になる場合があります。
・入院中の食事代

おむつ券サービス

おむつ券サービスとは、各市町村が独自に行っている福祉サービスの一つで、所定の条件を満たした方が申請するとおむつ類を購入する際に利用できる金券を受給できる制度です。条件や給付額については市町村ごとに異なりますが、基本的には住民税非課税で尿や弁の失禁頻度が極めて高い方のみが対象になっている傾向にあります。申請窓口は市町村の介護保険担当課や地域包括支援センターになっています。詳しく知りたい方は問い合わせてみましょう。

生活保護について

生活保護とは、国が国民に対し「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するために生まれた制度です。生活が極めて困窮している人が対象で、保護費として現金を受給できる他、介護保険サービスの自己負担が免除される「介護扶助」、医療費の自己負担が免除される「医療扶助」、家賃の助成や住宅補修費用を補填してもらえる「住宅扶助」などがあります。生活保護は困窮者の生命や人権を守る最後の砦として有名ですが、安易に頼るものではありません。まずは近親者での支援やここまでご紹介してきた公的負担軽減制度を活用して金銭面の課題が解決できないか検討する必要があります。

在宅介護は負担や費用を考えて決める

介護施設を見学をする親子

ここまで在宅介護にかかる費用について、以下のようにご紹介してきました。

・ 在宅介護にかかる費用は、全国平均で約8.3万円/月。
・ 施設介護にかかる費用は、施設によって10~30万円/月。高額な入居一時金が別途必要なこともある。
・在宅介護と施設介護の費用は、要介護3で試算した場合在宅のほうが約8.4万円安い。
・在宅介護か施設介護、費用優先なら在宅介護を。施設介護は在宅が困難な場合に検討。
・ 介護費用は年金や貯金から払うのが基本。足りない場合は本人の資産を活用して費用を捻出できる制度も活用する。
・ 介護費用を抑えるためは、適切なケアプラン作成と費用を抑える制度を活用する

在宅を選ぶか・施設を選ぶかという問題は、その後の生活を決定する大きな分岐点です。ある程度家族で介護ができ、費用を重視するのであれば在宅介護がおすすめです。しかし、頼りになる人が近くにいなかったり、介護ができる自信がなかったりするのであれば施設介護を選択するのも間違いではありません。地域包括支援センターやケアマネジャーとよく相談しながら、介護負担の可否や費用面を考慮して決めるようにしましょう。

増田 高茂
社会保険労務士 介護支援専門員 介護福祉士 第二種衛生管理者

多くの介護事業所の管理者を歴任。小規模多機能・夜間対応型訪問介護などの立ち上げに携わり、特定施設やサ高住の施設長も務めた。社会保険労務士試験にも合格し、介護保険をはじめ社会保険全般に専門知識を有する。現在は、介護保険のコンプライアンス部門の責任者として、活躍中。